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真っ赤な舞踏会 その2

また新しい住人が出てきました。

どうして泣いてるんですか?



「泣いてないよ」



泣いて……ないんですか?



「うん」



でも……



「泣いてない!そう言ってるでしょう!」



……貴方がそう言うならそうなんですね。すみません。



「……白ウサギ」



はい。



「私の事嫌い?」



そんな訳ないでしょう。



「本当に?」



ええ、大好きですよ。



「でも、私さっきから白ウサギに酷い事ばっか言ってるし、怒鳴ったりしてるし……」



いいんですよ。それでも私は貴方が好きですから。



「……ごめんね、白ウサギ」




何故、貴方が謝るんですか? 貴方は悪くない。



「違うよ。きっと全部私がいけないんだよ。だからお姉ちゃんがあんな……」



貴方は悪くない。悪くないんですよ。



「本当に?」



私の言ってる事が信じられませんか?



「信じられない」



……そんな。



「嘘、嘘! 信じてる! 信じてるよ! だって白ウサギは私の一番の友達だもん」



はい。



私は貴方だけの騎士ですから。



「騎士?」



はい。



「じゃあ、私に何かあったら必ず助けに来てね」



もちろんです。



「私も白ウサギを助けに行くから」










「……っ」



「目が覚めたかい?」



目覚めとともに声が飛んできた。



ぼんやりとした意識の中、白ウサギは声の聞こえた方を見る。




「芋虫……」



「やあ! 久しぶりだね、白ウサギ」



芋虫と呼ばれた男はにこやかに笑う。



しかしそれに白ウサギは実に嫌そうな顔をした。



あからさまなその態度に慣れているのか、芋虫は気にもしない。



「何で貴方が……」


「何でって、運ばれてきたのは君の方なんだけど」



その言葉にはっとして、白ウサギは自分の体を見る。



見れば、胸に包帯が何重にも巻かれていた。



白ウサギはしばらく何とも言えぬ表情でそれを見ていたが、思い出したように顔を上げ、芋虫に詰め寄る。



「アリスは!? アリスは無事なのか!?」




白ウサギのその問いかけに芋虫は曖昧に笑う。



それを見た途端、白ウサギはベッドから起き上り、芋虫の胸元をつかみ、激しく揺する。



「お、おい!? や、止めてくれ!」



「アリスは!? 彼女はどうしたんだ!?」



「だから落ち着いて…」



「さっさと答えろ! さもないとお前の体を跡形もなく、切り刻むぞ!?」



「落ち着いて…落ち着いてくれ、白ウサギ……」



芋虫が必死にそう言うとようやく白ウサギも揺するのを止め、胸元から手をはなした。



ごほごほと咳き込む芋虫をよそに白ウサギはベッドからとび出る。




「お、おい! 止めてくれ! せっかく傷を縫ったのにまた開いてしまう!」



「うるさい! アリスは!? アリスはどこだ!?」



「アリスなら女王の城だよ」



芋虫のその一言に白ウサギの動きが止まる。



目を見開き、固まる白ウサギに芋虫はため息をつく。



「君のせいだよ。アリスは君を助けるために女王の言う事に従って、連れていかれちゃったんだから」



非難するような芋虫の言葉に白ウサギは何も言わない。



急に黙り込んだ白ウサギに芋虫は酷く訝しむ。



「おい、白ウサギ? どうした?」



「た……れば」



「あ?」



「アリスを助けなければ……」




まるで譫言を言うようにウサギは何度もそう呟く。



「彼女を助けなければ……私は彼女の……」



「たった一人の騎士かい?」



どこか呆れたように芋虫はそう言うと白ウサギを見る。



「全く、君はバカみたいに一途だね」



どんなに君が彼女を思っても、彼女は君の事など思い出しはしないのに。



芋虫の呟きなどすでに白ウサギの耳には届いていなかった。










「ねえ、この子がアリスなの?」



「そうだよ。この子がアリスだよ」



「そうなんだ。この子がアリスなんだ」



「そうだよ。この子だよ。間違いない」



「でも昔はもう少し小さくなかった?」




「そうだね。昔は僕らより小さかったのにね」



「本当にアリスなの?」



「違うのかな? アリスじゃないのかな?」



「だってアリスだって君が言ったんじゃないか」



「そうだけど……」



「じゃあ、試してみる?」



「どうするの?」



「そうだな……首をはねてみるとか?」



首を……はねる?



誰の首を……



「それはいいアイデアだ」



「さっそくやってみよう」



やる? やるって何を?



「ねえ、でも首をはねっちゃったら女王様に怒られない?」



「大丈夫だよ。平気だよ」



「本当に?」



「じゃあ、半分くらいまでにしておけば?」




半分……半分!?



「……っ!?」



そんな中途半端は嫌だ!



あまりに恐ろしい会話に私は飛び起きた。



曖昧だった意識が一気にしっかりとしだす。



首をはねる?



冗談じゃない。半分だろうが何だろうが首をはねられるなんて嫌だ!



慌てて、声のした方を見れば、そけには見慣れない少年達がいた。



「起きたね」



「起きちゃったね」



残念そうにそう言う少年達。



双子だろうか?



髪型も背も瞳の色も声も同じだ。



おまけに服までおそろいのものを着ているから、見分けが全くつかない。



どっちも同じに見える。



いや、今はそんな事どうでもいい。




問題はその子達が持っているものだ。



切れ味がよさそうな大きな剣。



小柄な体格に似合わず剣はかなり太い。



それを二人とも構えていて、今まさに私に振り下ろそうとしていた。



本気で私の首をはねる気か。



一気に血の気がひく。



「起きたけど、どうする?」



「そうだね……とりあえず、首をはねる?」



「そうだね。やってみよう」



「止めて! 首をはねないで!」



とっさにそう言うと少年達は顔を見合わせる。



「止めろって」



「そう言ってるね」



「どうする?」



「じゃあ、止めようか」



「そうだね」




二人はそう言って、剣を下ろした。



良かった。とりあえず、首ははねられずにすんだ。



私の方を見て、にこにこと笑う少年達。



全く、見覚えはない。



「だ、誰?」



私の問いかけに少年達は顔を見合わせた。

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