表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/60

白ウサギとのワルツ その3

白ウサギとアリスは結局のところ仲がいいです。


二人のやりとりは和やかで書いてて楽しいです。


まあ、大抵白ウサギがアリスに殴られてるだけなんですがね。

「納得できませんか?」



「え?」



嬉しそうな白ウサギの顔を黙って見ていたら、突然笑顔をけして白ウサギはそう言い、私の方を不安げに見てくる。



顔に出していないつもりだったのに、でていたのだろうか?



私は慌てて否定する。



「そんな事は……」



ない、そう言うつもりだったのにその前に白ウサギが言う。



「私のために嘘を言わないで下さい。貴方のその顔は納得しているものではない。私の言ってる事が理解できない、そう思っているんでしょう?」



何故そこまで白ウサギはわかっているのだろうか?



私は昔から本心を隠すのがうまかったはずなのに、どうしてこうも白ウサギにはわかってしまうのだろう。



「何で……」



何で貴方にはわかるの?



白ウサギが笑う。



紅い瞳が優しげに細まる。



「私は白ウサギですから貴方の事なら何でもわかります」



相変わらず、意味のわからない答え。



その答えを今回ばかりは何故だか許せる気がした。



「変なの……」



「理由がこれじゃあ不満ですか? じゃあ、愛の力って事にしておきましょう」



「そっちの方が嫌」



「アリスはやっぱり照れ屋ですね。じゃあ、私には特殊な能力があって何でも貴方の事がわかるとでも思って下さい」



「それは……」




それで気持ち悪い。



でも、それ以上詰め寄るのもあれだと思い、何も言わずに静かに頷く。



「代わりは所詮代わりだと貴方はさっき言いましたね。代わりは所詮代わりで私ではないと」



白ウサギはそう言って、確かめるように私を見る。



そう、確かにそう言った。



「それはとても正しい考え方です。代わりは所詮は代わり。それはもちろん私達だってわかっています。その証拠にこの城では代わりよりも本物の方が権力があるんです。三月ウサギがどんな事をしても、誰も止めたりしないのはそのためです。彼は本物ですからある程度の事は規則を破っても許される」




だから彼はあんなめちゃくちゃなお茶会を開いても、夜な夜な城を改造していても、誰も本気で止めたりしないのか。



「それに私もルールを破って、貴方を連れてきましたが運がいいのか未だに罰せられてはいません」



やっぱり私を連れて来るのはいけない事だったのか。



住人達の会話からもしかしたらとずっと思っていたが白ウサギのその言葉で確信した。



「本物は何をしても許される訳ではないんですが、代わりよりもずっと優遇されているんです」



「そうなんだ……」



何だろう? 何を白ウサギは言いたいのだろうか?



何のためにそんな話を今さら私にするのだろうか?



「白ウサギ……」




貴方は何が言いたいの?



「でも、よく考えてみて下さい。代わりは本物である私達と全く同じ姿なんですよ?」



白ウサギは何故だか必死にそう訴える。



「外見だけでしょう?」



「いいえ、例え記憶がなくても心は同じです。だからこそ本物の一番強い思いを引き継ぐ」



「でも……」



だから何なんだ?



白ウサギを困惑ぎみに見つめると白ウサギが笑う。



「アリス……だから、だからもし私が死んだとしてもその時はけして悲しまないで下さい」



白ウサギのその一言に私は固まる。



呆然と白ウサギを見れば白ウサギが笑う。




「私がどんな怪我をしたとしても、例えどんな事になろうと貴方が傷つく必要はありません」



ああ、わかった。



白ウサギが何を言いたいのかわかってしまった。



「例え私が死んでもすぐに代わりが現れます。だから貴方が泣く必要なんかないんです」



真剣な表情で白ウサギはそう言う。



バカみたい。生きてるうちに自分が死んだときの心配をするなんて本当にバカみたい。



「貴方は優しいから私が死んだら泣いてくれるんでしょう?」



私が優しい?



違う、優しいのは私じゃなくて白ウサギの方だ。三月ウサギが言っていたように白ウサギは優しい。



「でも泣かないで下さい」




優しいからこんな事を平気で言う。私ばかりを気にして、全く自分の事を省みない。



「私は……」



「もういい!」



白ウサギの言葉を遮り、私は思いっきり白ウサギの頬をつねると引っ張る。



「あっ、あ、いす!!? ひゃ、めて、くやさい!」



頬を引っ張ってるため、さっぱり何を言ってるかわからないが、たぶんアリス、止めて下さいとか言っているのだろう。



もちろん止める気はない。



ぐいぐいと引っ張るとあたふたと白ウサギが両腕を動かす。



「痛い? でも貴方が悪いのよ?」



「ひゃいっ!?」



そんなバカみたいな話を突然するから、だから白ウサギがいけない。



「貴方が死んで、誰が泣くって? 悪いけど私は絶対に泣かないから」



むしろ嬉し泣きしそうだとわざと白ウサギに言ってやる。



「だいたい、死んでもないくせにそんな事心配するなんてバカ? せめて君を悲しませないために絶対に死なないとか言えない訳?」



ぐいぐいと白ウサギのほっぺたを伸ばす。



意外と結構のびるもんだ。



「そんなんだからいつまでたっても変態のままなのよ!」



ぱっと手をはなす。



白ウサギのほっぺは真っ赤にはれ、見るからにじんじんと痛そうだ。



それでも白ウサギは泣き言も文句も言わない。



「言っておくけど私を落とす気なら、それぐらい簡単に言えるぐらいの覚悟がなきゃ駄目だから」



白ウサギは呆けたように私を見つめる。



そんなにこっちを見ないでほしい。



ただでさえらしくもない事を言って恥ずかしいのに、そんなふうに見られたら、たまったもんじゃない。



「アリス……」



「何よ……」



「成長したんですね……」



「はあ?」



白ウサギの一言に今度は私が目を丸くする。



何が成長したよ!? 貴方と会ってまだ3日も過ぎてないのに、何でそんな事言われなきゃいけないの!?



その事に関して私は文句を白ウサギに言うが、白ウサギは全く気にせず、声を出して笑う。



「何、笑って……」



「アリス、せっかくだからこのまま一緒に寝ませんか?」




「はい!?」



何でそうなるの!?



「せっかく私の部屋に来たんです。このまま一緒に寝ましょう?」



いや、せっかくも何も訳がわからない。



何で白ウサギと一緒に寝なきゃいけないわけ?



可笑しいでしょう?



「アリス、さあ」



何がさあよ、この変態。これじゃあ貴方を心配した私がバカみたいじゃない。



逃げだそうとしたら、その前に白ウサギに腕をつかまれた。



「どこに行くんですか?」



ヤバい。何か本当に危ないんですけど。



「どこって、ねえ?」



「三月ウサギとは寝たのに私は駄目なんですか?」



「あれは三月ウサギが勝手に……」




「そうですか。じゃあ、私も勝手にします」



白ウサギは私を突然抱き寄せるとそのままベットの中に潜り込む。



「ちょっ!?」



慌てて暴れるが、白ウサギは私を抱き枕のように抱きしめたまま動かない。



「さっき、寝たばっかりなのに寝れる訳ないでしょう!?」



「大丈夫ですよ。この国は時間がとても曖昧なんです。だから時間の流れが速かったり、遅かったりして……まあ、その説明はまた今度として、とにかく寝ようと思えば意外と簡単にいつでも寝れるんです」



「それは寝ようと思えばでしょう!? 私は寝たくない!」



「駄々をこねないで下さい。仕方ないですね、私が子守唄を歌って差し上げますよ」




「いらない。絶対にいらない」



こう言ったらあれだが、なんだか白ウサギは下手そうだ。



「まあ、そう言わずに」



私の意見など全く無視して白ウサギが歌い始まる。案の定その歌は酷いものだった。



何だこれは……



聴けない程ではないが聴いていたいものでもない。



はっきり言って、不快。



「下手くそ、せめて歌うなら、もう少し上手く歌いなさいよ……」



「嫌ですか? 嫌なら止めますよ?」



白ウサギは笑いながらそう言う。



その顔が何だか無駄にいらっとくる。



ここで止めさせたら負けだ。私は覚悟を決めた。



「別にそこまで言ってない。さっさと続きを歌いなさいよ」



「はい」



また白ウサギが下手な子守唄を歌う。



下手くそだ。本当に下手くそだ。



だからだろうか?



何故だか胸が熱くなって、瞳から涙が流れ落ちた。



しばらくすると瞼が重くなってくれ。



まさかこんな状況でも眠れるとは。私は一人自嘲気味に笑うと目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ