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白ウサギとのワルツ その2

初めてこの作品を投稿してからすでに一年と数カ月。何でこんなに話の展開が遅いんでしょうか?


全然物語が進まない(泣)


自分の力不足を最近ひどく痛感させられます。

「はい、もうしゃべっていいわよ」



手当てを終え、私は白ウサギに声をかける。



白ウサギはしげしげと私が手当てしたところを見つめる。



しばらくそうしていたかと思うと突然、口を開く。



「アリス、貴方って……」



「何?」



「何でもできるんですね」



感心した様子で白ウサギが言う。



「まあ」



手当てする時に使った道具を片付けながら私は小さく頷いた。



「他人に任せるのが嫌なの。自分でできる事は何でも自分でしたい主義なのよ」



「さすがはアリス! 素晴らしい考えです」



「そう?」



別に誉められるような事ではない。ただ自分でできる事は自分でしたいと思っただけだ。



幼い頃に母を亡くしてから私は姉さんに迷惑をかけっぱなしだった。



私と同じくらいの年に姉さんは友達と遊ぶ事をやめ、夢をあきらめ、家の事を全て一人で行った。



姉さんはいつでも笑顔でいたけど本当はつらかったに違いない。



姉さんに少しでも迷惑をかけたくなかった。自分が子供であるいじょう、どうしてもその力を貸して貰わなきゃいけないけど、せめてできる事は姉さんに頼らずに自分でしたい。




ただそう思っただけ。



少しでも姉さんの手を煩わせないように。そう思って色んな事を勉強した。



「これでも私、学校じゃあなかなかの優等生だったんだから」




ふざけてそう言えば白ウサギは真面目に返してくる。



「ええ、そうでしょう。貴方に勝る人なんてこの世界に存在しませんから」



「それはちょっと……」



言い過ぎじゃない?



世の中には私なんかより優れてる人がいっぱいいる。



白ウサギはもっとその視野を広げるべきだ。あまりにも狭いと言うか、本当に私しか見えていない。



何で私みたいな人にそこまで執着できるのか本当に不思議。



まあ、いくら不思議に思って、疑問を口にしたとしてもその理由はけして教えてくれないだろう。



ため息をつき、私は話題を変えた。




「傷は大丈夫? いちよ手当てしたけどこんなの応急処置だから後でちゃんと医者に行きなさい」



念のためそう言うと白ウサギが笑顔で答える。



「いえいえ、これだけやっていただければ十分……」



「行かなかったら、もう二度と口きかないから」



「……行きます」



しおしおとそう告げる白ウサギに私の気分は良くなる。



まさかあの白ウサギがこんな事で言うことをきくようになるとは……いい気味だ。



「他に怪我はない? だいぶ蹴られたりしてたけど、どこか他に痛むところとかある?」



私がそう聞くと白ウサギはじっと私の顔を見つめてくる。



「何?」




何か変な事でも聞いた?



「アリスが……」



「私が?」



「優しいだなんて……やはり愛ですね、愛! 普段は冷たくてもいざとなるとこう優しく看病しちゃったりして……」



「ねえ、少し黙ってくれる? じゃなきゃ二度と口をきかないどころか、これからその存在じたい無視するから」



妄想の世界を勝手に展開しかけた白ウサギだったが、私がそう言うと慌てて、口を閉ざす。



ぶっ飛んだ思考もだいぶ慣れてきたが、正直どうしてここまでポジティブに考えられるのか私にはわからない。



まあ、わかりたくもないんだけど……



「貴方ね……人が真面目に聞いてればバカにして……」



「アリスをバカにするなんてとんでもない。私はいつだって真面目ですよ」



その何処が真面目なのよ!?



人をおちょくってるようにしか見えないんだけど。



「他に痛いところはないのね?」



「全身痛いですが、アリスが頬にキスしてくれたらすぐに治ります」



「バカ言ってないで、早く医者に行きなさい」



「アリス~」



本当に鬱陶しい。こんな奴助けなきゃ良かった。



今さらそんな事を言っても遅いとわかっていながらも、そう思わずにはいられない。



そう言えば、聞きたい事があったんだ。



「ねえ、白ウサギ」



「何ですか? 私は暴力的なアリスも優しいアリスも好きですよ?」




誰もそんな事は聞いていない。



早くも、まともに質問しようとした自分が馬鹿らしく思えてくる。



駄目、こんな事でめげないで。そうよ、いらないところは聞き流すの。鬱陶しいところは無視していけばいいんだから。



平常心、平常心。相手は怪我人。頭のネジが数本外れていたとしても、それでも怪我人なんだから手を上げちゃ駄目。



自己にそう言い聞かせ、私はできるだけ平常心を保ちながら白ウサギに話しかける。



「さっき、この世界には代わりがいるって話してたでしょう? あれ……本当なの?」



「本当ですよ。この世界では誰かが死んでもすぐに代わりが現れる。私だって今日死ねば、明日には代わりが現れて、またこの不思議の国の案内人になる。その繰り返しですよ」




特に気にした様子もなくそう語る白ウサギに何故だか私は苛立つ。



「貴方……それでいいの? 少しは可笑しいとか嫌だとか思わないわけ?」



私のこの問いかけに白ウサギがきょとんとする。



「可笑しい? そうなんですか? 私達にはこれが常識なので何とも言えないのですが、嫌だとは思いませんよ。私が死んだ後代わりが現れなきゃ、アリスが悲しんでしまう」




おそらく白ウサギの言うアリスとは私じゃなくて最初のアリスの事なのだろう。



「代わりって言ってもしょせんそんなの代わりでしかないじゃない! 白ウサギ自身ではないんでしょう!?」



「ええ、でも基本的に同じです。姿も声もそしてアリスを思う心も全て同じです。代わりにはそれまでの記憶はありませんが本物であった人物の一番強かった思いだけが代わりに引き継がれるんです。私はアリスを何よりも誰よりも思っていますからきっと代わりに引き継がれるのはこの思いでしょう」



どこか嬉しそうにそう言う白ウサギを私は全く理解できず、それどころかそれを見て、さらに混乱する。



何でそんなに嬉しそうにするの? 代わりは代わりで貴方ではないのに。



しかしその言葉を口にする事はけしてしない。



あまりにも幸せそうにそう語る白ウサギにそんな事、とてもじゃないけど言えなかった。

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