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第5話 怪獣カリダ

第5話です、少々痛々しい描写がございますので注意を!!

『え…なにこれ…』


「怪獣カリダ…!何故こんな所に…!」


 私達が動けず固まっていると、アルボさんがカリダと言ったその生物は雄叫びを上げた。


 「グルゥオオオオオオオオ!!」


 耳を劈くようなその雄叫びは、まるで獲物を見つけ喜んでいるかの様にも見えた。


 カリダは1歩、また1歩と、ゆっくり私達の近くへと歩を進める。


 「お嬢さん!走れっ!」


 そう叫ぶと同時にアルボさんは巨大な斧を持ちカリダへと走って行った。だが、カリダの腕の1振りでアルボさんは吹き飛ばされ、壁に強く打ち付けられる。持っていた巨大な斧が盾になり致命傷は免れたようだが、壁に突き刺さった斧はアルボさんの右手を切断したようにも見える。


 「お嬢さん…逃げろ……」


 と掠れるような声で言い、アルボさんはガクッと項垂れた。どうやら意識を失った様だ。

 このまま私が逃げたらアルボさんは確実に殺される…!考えるよりも早く体が動いていた。


 『こっちよ怪物!!こっちへ来い!』


 カリダへ石の破片を投げつける。その1発が顔に当たり、カリダはゆっくりとこちらを向いた。食事を邪魔されたその怪物は明確な怒りをこちらへ向けている。


 「グルル‥グルオオオオ!!」


 カリダは私の方へ向かって走り出した。私も必死に逃げる、洞窟の奥へ奥へと進む。後ろから聞こえる乱暴な足音は離れる所か少しずつ近づいている。 私がまだ捕まっていないのはきっとこの洞窟がカリダにとっては狭く、動きにくいからだろう。


 『ハァ…ハァ…』


 足が痛い、尖った石か何かで切ったのだろう。それに胸も痛い、こんなに走ったのは何年ぶりだろう…ただ、止まれない。少しでも足を止めたら死ぬと本能が言っている。


 『うそ……行き止まり……』


 先の方に岩の壁が見えた、どうするかと考える内に壁はどんどん近づいてくる。

 そしてついに、私はカリダに追い詰められてしまった。


 「グルル…」


 何か無いか当たりを探す、ここを掘っていたのだろう、足元にツルハシが1本落ちていた。ツルハシを手に取り思いっきりカリダに投げつける、ツルハシはカリダの顔にぶつかるが、カリダには傷一つついていなかった。


 「グルァァァァ!!」


 予想外の反撃に怒り狂ったカリダは前足で大きく私を薙ぎ払った。その前足は正確に私を捉え、私は洞窟の壁面に叩きつけられた。痛い、車に轢かれた時よりも遥かに痛い。


 『カハッ…あぐ……』


 声が出ない、しかし何かおかしい、カリダの攻撃が止まっている。私は目を開けて先程自分が立っていた場所を見る。そこには確かにカリダがいたが動く様子は無い。


 『え…あれ…なに…』


 カリダの顔を見ると、何かを食べている。その口元は血で染まっていた。カリダが食べていたのは…私の足だ。恐る恐る自分の体に目を向けると腰から下が無くなっていた。途端、物凄い激痛が私を襲った。


 『クッッッッッッッッッッッアァァァァァァ!!!!』


 あまりの痛みで声にならない声で悲鳴を上げた私の方へ、カリダはゆっくりと血に染まった顔を向ける。そこで私は自分の異変に気づく、無くなったはずの足が、少しずつ治り始めているのだ。 ゆっくりとではあるが、泡の様な物に包まれ先程まで無かった腰部分が治っている。


 「グルァァ!ガルゥゥゥ!!」


 カリダが私の目と鼻の先の距離まで到着する。動けず、恐怖で声も出ない私の前で大きく口を開け、今にも私を一口で飲み込もうとするカリダ。だがそのすぐ後ろで何かが動いた気がした。


 「おいケダモノ…俺の客人に何してんだ?」


 そこには、初めて見る鬼の形相の大山さんが立っていた。カリダは大山さんを脅威と感じたのか、すぐにそちらへ向き直り毛を逆立てて威嚇している。


 「グル…グルオ…グラァァァ!!」


 カリダが前足で薙ぎ払う、だが大山さんは避けもせずにカリダの前足を大楯で受け止める。そしてそのままカリダの方へと走り、取り出した剣は正確にカリダの右目を貫いた。


 「チッ…浅いか」


 大山は刺さった剣をそのままにカリダから少し離れ、地面に足を広げ、見覚えのある体制を取る。


 『空…手…?』


 空手の四股立ちだ。大山さんは短く息を吐き、飛びかかって来たカリダの胸元へと正拳突きを叩き込む。


 「グオオオオ!!!」


 カリダの叫び声が洞窟に響き渡る。だが、致命傷では無い様でカリダは再度大山さんへの攻撃を試みる。が、大山さんの槍が先程正拳突きを当てたカリダの胸元に突き刺さる。


 「グァァァァア! ガッ……」


 カリダの巨体が洞窟の床に崩れ落ちる。


 「葵さん!大丈夫か!!!」


 私の方へと駆け寄ってきた大山さんの顔を見て安心した私は、体の力が一気に抜け、そのまま私の意識は深い眠りと落ちて行った。

主人公ちゃんの不幸は終わらない

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