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第3話 黄金牛と友達

第3話です!

だんだんファンタジーっぽくなってきましたね

 お腹が減った私は夕食を取ろうと廊下と階段を早足で駆け降り、1階の食堂らしき場所へと降りる。そこは食堂、と言うよりは酒場に近かった。いくつかのテーブルでは酔っ払った冒険者風の男が談笑している。そして食堂に入った私の顔を見るなり宿屋の主人が話しかけてくる。


 「お嬢ちゃん隊長の連れの人だな、金はもう貰ってるから好きに食いな。」


 『あ、はい!ありがとうございます!』


 空いていたテーブルに座り、メニューを手に取って眺める。文字が違うのでは…と少し心配したが幸いメニューは日本語で書かれていた。

  どれどれ…若鶏の唐揚げ、ソレウ草とベーコンのパスタ、川魚の照り焼き、黄金牛のステーキ…定期的に聞いた事のない食材があるな、多分こっちでは普通なんだろうけど。

 お腹減ってるしここはステーキに挑戦してみよう!


 『すいません!唐揚げとサラダ、それと黄金牛のステーキお願いします!』


 「あいよ!しばらく待っててな!」


私がステーキと言った途端、騒がしかった食堂が一瞬だけ静かになった気がした。

 もしかして何かマナー違反な行動をしてしまったのかと心配になっていた私に、少し離れたテーブルでエールを飲んでいた2人組の男達が話しかけてきた。


 「ねえ君かわいいね、良かったらオレらと飲まない?」


 「俺達ギルドで冒険者やっててね〜」


 ナンパか、まさか人生で初めてナンパして来るが異世界で冒険者からとは想像した事も無かった。

 初めてのナンパではあったが私の事をいやらしい目で見ているのは容易に分かったし、純粋にタイプでは無かったので断る事にした。


 『お断りします。私、人を待ってるんです。』


 その待ち人は明日の朝まで来ないのだけれど… でも嘘はついてない。ただ、予想外だったのは男達がいきなり逆ギレした事だ。


 「は?俺達が優しく誘ってればつけ上がりやがって、女の癖に黄金牛とか生意気なんだよ!」


 男の1人が私の服の襟を掴みグイッと引っ張り上げた。どうしよう、怖い。 私に向けられた明確な敵意、それもガタイの良い男達からだ。


 「ほぎゅあっ!」


 私の襟を掴んでいた男が股間を押さえその場に倒れ込む。倒れ込んだ男の後ろには18歳くらいの華奢な少女が立っていた。


 「ねえおねーさん、コイツら倒してあげるからさ、晩御飯奢ってくれない?」


 少女の口から突然の取り引きを持ちかけられ一瞬困惑した私だが、たった今この少女に助けられた訳だし断る理由も無い。私はスッと親指を立てた。


 『OK、よろしくね。』


 「了解っ!ご馳走になるね、おねーさん♪」


 笑顔で私にサムズアップを返す少女の背後からもう1人の男が殴りかかる。

 

 『危ないっ!!』


 私が叫ぶより早く少女は振り返り、男の拳が届くよりも早く男の股間を蹴り上げた。」


 「ほぎょぁ!」


 結果男の拳は少女に届く事は無く、男はその場に崩れ落ちた。2人の男達を倒した?彼女は私の前に座ると笑顔で自己紹介を始めた。


 「私はミリア、よろしくね♪ 貴女は?」


 『葵って言います。よろしくね、ミリアちゃん。』


 違いに自己紹介を済ませミリアちゃんがメニューを見始める。

 

 「こんの糞アマぶっ殺してやる!」


 その後ろで先程の冒険者2人が剣を抜き今にも切りかかってきそうな雰囲気だ。私は咄嗟の事に驚き声も出せない。ミリアちゃんはメニューに夢中で気づいていない。そんな絶体絶命の時に食堂全体に宿屋の主人の怒声が響き渡った。


 「やめねえかテメェら!!! 女相手にテメェらから喧嘩ふっかけて負けたからって剣なんぞ持ち出して、情け無くねえのか!!」


 その声は先程までの無愛想だが優しい声では無く厳しい男らしい声だった。その声で男達は動きが止まる。 だって…でも…と見苦しく言い訳をする男達を主人は一喝し、男達は渋々と宿を出て行った。


 「すまんかったな嬢ちゃん、これが黄金牛のステーキだ、ゆっくり食べてってくれ」


 黄金牛は凄く美味しかった。見た目はは普通の牛肉と変わら無いのだが溢れ出す肉汁、凄く柔らかい肉、など高級ステーキ店にも負けない美味しさだった。


 「葵って、転生者だよね?」


 『そーだよ、ミリアちゃんは?』


 「私はこの世界で生まれたから、葵からすると異世界人だよ」


 へぇ、普通に元からこの世界に住んでいる人もいるんだ、当然といえば当然だけど。


 『ミリアちゃんはこの辺に住んでるの?』


 「ううん、私も冒険者だから特定の家は無いんだ。」


 さっきの男達も言っていたが冒険者ってこの世界ではどう言う扱いなんだろう?魔物の素材とか売るのかな?率直に聞いてみた所


 「冒険者っていうのはね、特定の国には所属せずに冒険者ギルドに登録してる人の事だよ。ほら、これが冒険者証明書」


 ミリアはそう言うと免許証くらいの大きさのカードを取り出した。そこには顔写真、名前、Cランク冒険者、など必要であろう情報が書かれていた。


 『冒険者って私でもなれるのかな?』


 なんと無く気になったので尋ねてみると


 「冒険者になるにはいくつか条件があってね…」


 その後5分ほどミリアちゃんが話した内容をまとめるとこうだ、

・特定の国に所属していない事

・ギルド側から出されるテストに合格する事

・過去に殺人等の犯罪に関わっていない事

 の3つが主な条件らしい他にも細かい条件はあるらしいが特に気にする必要は無さそうだ。


 『なるほどね〜、色々ありがとう。』


 お礼を言った私に対しミリアちゃんはデザートに注文したパンプキンパイを食べながら笑顔で


 「うん!こちらこそご馳走様♪」


 と答えてくれた、冒険者になりたい時はいつでも声をかけてとも言われた。


 こうして私の異世界初日の夜は新しい友達との会話に花を咲かせながら更けていった。

黄金牛は香草焼きやシチューにしても美味しいですよ。

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