第1話 オワリの国
第1話です!
細かい事は抜きにしてお楽しみ下さい!
「起きられましたか?おはようございます」
確実に死んだと思った私の耳に聞こえて来たのは落ち着いた印象を受ける若い女性の声だった。
私が目覚めた場所は病院のベッドでは無くログハウスの様な所にある年季の入ったベッド。声の方に目を向けるとそこには黒いスーツを着た女性が1人立っていた。
明らかに私のいた町とかけ離れた光景に混乱する私に構わずその女性は話し続ける。
「簡潔に言うと貴女は死んで、転生致しました。混乱されるかと思いますが落ち着かれましたらこちらの用紙に必要事項の記入をお願いします。では私はこれで失礼いたします」
女性は静かに部屋を出て行った、5分か1時間か、はたまた10秒か。私は唖然とただ壁に掛けられた白いアネモネの絵を見ていた。
やっと少し落ち着いた私は特にする事も無いのでベッド脇の背の低い机に置いてあった鉛筆を手に取り女性が置いて行った用紙を記入する事にした。
記入する事は自体は簡単だった。名前、年齢、職業、結婚はしていたか‥そして死因。
やはり自分が死んだんだと言う事を改めて理解した私は込み上げてくる吐き気に耐えられず盛大に吐いてしまった。ところが不思議な事にベッドは汚れていないし自分の吐瀉物はどこにも見当たらない。
「そろそろ書き終わられましたか?」
ドアが開き先程の女性が入ってくる。
『あの、私、吐いちゃって‥ 』
やっとの思いで絞り出した私の言葉に女性は冷静に答える。
「ああ、気になさらないで下さい。用紙の方お預かり致します」
紙を渡すと女性は一通り確認し
「水野 葵様‥ですね、書類の方確認致しました大丈夫そうですね、ご協力ありがとうございました。もうすぐ貴女の係の者が参りますのでもう少しそのままでお待ち下さい」
と言い再度部屋を出て行く。数分後、30代くらいの少し痩せた男が部屋に入って来た。
「葵さんですね?私は岡村と申します。今から貴女のスキルチェックを担当させて頂きます。 あ、いきなりで何のことかわかりませんよね? 軽く説明させて頂きますと、スキルとはその人間の本質を元にこの世界に来たとき与えられる特殊能力です。転生された方は必ず1つ能力を所持されているのでその能力の方を確認させて頂きます」
そして30秒ほど沈黙が流れたかと思うと無表情だった男性の顔が青ざめた
「能力「不死」!?!?!?ランクSS!?しょしょ少々お待ち下さい今上の者を連れて来ますから!!!」
あまりのスピードで走って部屋を出て行く男性を尻目に私は『なんかクレーマーに対する対応に似てるな〜』と考えていた
30分ほど待たされ先程までとは明らかに違う1人の男が入って来た。
「先程は岡村の野郎が失礼しましたね、俺は大山 龍二と言います。少し時間が押しているのでここからは移動しながら俺が説明を‥あ、立てますか?」
男の問いに私は『はい、一応』と答えると立ち上がり男の後に続いた。
歩きながら大山さんが話してくれた事だが今私がいる世界は私が元いた世界とは違う、いわゆるファンタジー世界である事、そして今私がいる場所は私がいた世界から来た転生者が大半の国、名前はオワリの国。
既に一度人生が終わった者達の国だから、らしい。他にもスキルにはSSからEまでのランクがありSSランクはこの国に私含め4人しかいない事、などを話してくれた。
『今はどこに向かってるんですか?』と言う私の問いに大山さんは冷静に答えてくれた。
「本来はスキルの内容次第でそれぞれの地区への配属を行い地区を統括する領主の元へ係の者が案内します。けど貴女、もといSSランクスキル所持者は特例として王の所へ連れて行きます。」
『王‥ですか?』
「ええ、彼の名前を聞けば貴女もびっくりすると思いますよ?なにせ有名人ですので。」
その後あまり会話も弾まず少し気まずい空気が流れてた、静かな長い廊下に大山さんと自分の足音だけが響き渡る。
「さっ、ここが王の部屋だ。」
立派な扉の前で大山さんの足が止まる。ゆっくりと重々しい音を立てて開く扉、私はゴクリと唾を飲み開く扉をただ見守った。
扉の先にいたのは玉座に座る体格の良い20代後半くらいの男、そしてその隣に立つ若い青年だった。玉座の男が品定めをする様に私を見てからゆっくりと口を開く。
「よく来たな!俺がこの国の王、第六天魔王こと織田信長だ!」
信長の活躍はまだしばらく先ですが、乞うご期待!