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元第二王子とヒドインの子は復讐を誓う。  作者: ありま氷炎
第二章 ざまぁの子は一つ目の男と旅をする。
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 挿絵(By みてみん)


 魔の国に来てから、6年が経っていた。

 メルヒが殺されてから5年だ。

 彼女が率いる魔族の一部が王国を襲撃したことで、両国は再び緊張状態に入るかと思われた。しかしながら、魔の国の王――魔王がメルヒに加担した者たちを処罰対象にして、人側を納得させた。

 一つ目の男ヴァンと共にセインは、魔王の追っ手から逃げながら勢力を少しずつ増やしていた。


「……あいつが裏切りやがったか」


 ヴァンとセインは森の中を駆けていた。

 仲間であった者が魔王に寝返り、彼らの居場所がばれたのだ。追ってから逃げるため、森へ逃げこむ。

 11歳になったセインの身長は伸びて、メルヒと同じくらいになっていたが、ヴァンよりもまだ頭二つ分低いくらいだ。

 金髪の髪と琥珀色の瞳、色彩自体は魔族でも同様のものがいた。けれども、魔族はそれぞれ人とは違う特徴があり、セインがその姿をそのまま晒しているとすぐに人とわかってしまう。

 だから彼は黒い外套を羽織って、黒い頭巾を被っていた。人に対抗する者が人である。その事実を隠すためだ。

 魔族たちは、ヴァンの傍にいるセインのことを黒頭巾と呼んだ。


「ヴァンがあいつをなんで信じたか、わからないよ」

「……まあ、お前にはまだ早いだろうな」


 今回ヴィンは所謂色仕掛けに負けてしまった。その肉欲に溺れ、女を信用してしまい、捕縛の危険にある。魔王からヴァンとセインーー黒頭巾は捕縛するように命令が出ているようだ。もちろん抵抗すれば殺してもいいとも言われている。

 復讐を達成するため、魔王に掴まるわけにはいかない。

 セインはヴァンを横目でにらみながらも、速度を緩めることはなかった。


「仕方ねぇ。別れよう。落ち合う場所はあの場所だ。わかったな」

「了解」


 魔王の追手から追いかけられることは日常茶飯事で、万が一お互いが離れた場合でも落ち合う場所は決めてあった。ヴァンは手を上げると、右手に進行方向を変えた。セインは背後を気にしながらもそのまま走り続けた。





「もう、大丈夫か……」


 追手の気配をやっと感じなくなって、セインは木の根っこに座る。


「ヴァンは大丈夫かな」


 ヴァンとの付き合いはすでに5年にもなり、最初に拾ってくれたメルヒよりも長い付き合いになる。

 けれどもメルヒとの思い出はまだ色濃く残っており、王国の奴らに殺された事実を思い出すと怒りで心を震わすのは毎度の事だ。5年も立っているが、その恨みは薄れることはない。  

 王国の、現国王トールと王妃ジョセフィーヌによって、父と母は町へ落とされた。他人からも嘲笑され、その死に対して悲しむ者もいなかった。 死にかけていた自身を拾ってくれたメルヒ。厳しく、言葉も甘くはなかったが彼女から愛情を感じることができた。

 それが………。

 メルヒはセインがトールの代わりに人の国を支配することを望んでいた。そのために自身を拾った。その事実をヴァンから聞かされた時、傷ついた。けれども彼女が与えてくれた愛情は本物であったし、何よりも命の恩人だった。


「トールとジョセフィーヌを殺して、王になり人を支配するんだ。僕を殴った奴や母さんと父さんを馬鹿にした奴に仕返ししてやる」  


 セインの憎しみは増長する一方で、それは彼の生きる力にもなっていた。

 



「畜生……。あいつら、俺狙いかよ」


 セインとは異なり、ヴァンは傷だらけで、追いつめられていた。


「なんだよ。捕縛じゃなかったのかよ」


 致命傷はまだ追っていないが、矢が容赦なく飛んできて、とても捕縛目的とは思えなかった。


「俺は殺して、セインは捕縛か?」


 皮肉気に笑って、彼は木に持たれかかる。


「セインを使って何がするつもりか、魔王の奴」


 ヴァンは現魔王のにやけた笑みを思い出して、唾を吐く。

 武闘派の前魔王と異なり、現魔王は謀略を巡らせて戦いに勝つタイプだった。人の国同様数年前にこちらも代替わりをしている。だからこそ、平和協定などが成立したともいえる。前魔王であれば人の王の申し出などを受けるはずがないからだ。


「……俺と同じことか。だから、俺が邪魔かよ」


 ヴァンは現魔王が魔王になる前までは、友人であった。魔王の側近など堅苦しいとその立場を断り彼の元から離れた。


「ふん。殺されてやるもんか。お前の面を拝むまではよ!」


 気配が近づいてきて、ヴィンは一気に攻撃に転じた。まさか、攻められると思っていなかった追手には隙があった。


「俺をなめんじゃねーよ!」


 追手の喉を掻っ切って、血しぶきが上がる。返り血を浴びて、他の追手をみると、急に逃げに転じ始めた。


「馬鹿野郎が!」


 怒りに任せて始末してしまおうとも思ったが、ヴァンは舌打ちすると待ち合わせ場所へ急いだ。



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