ホラー耐性
漫才コントの脚本です。よろしくお願いします。
ツッコミ「最近どう? あ、自粛期間って何してた?」
ボケ「僕はね、最近、VRのホラーゲームやったんだけど、あれ、ヤバいね。臨場感ハンパないの」
ツッコミ「あー、おれ無理だわ、そういうの」
ボケ「あ、そう。お化けとか苦手?」
ツッコミ「お化けもそうだし、びっくり系とか、ホラー全般無理。夜中思い出すから」
ボケ「あ、じゃあ、ちょうどいいし、やろうか」
ツッコミ「何を?」
ボケ「VRしてるテイで、今からお前のホラー耐性を作ろう」
ツッコミ「え? VRしてるテイ?」
ボケ「そう、舞台はお屋敷。お屋敷にはお婆さんが一人いて、お前はそうだな、孫の設定で屋敷に入ろう。ちゃんと想像しろよ? 大きな屋敷に入るのもイメージしないと意味ないからな」
ツッコミ「う、うん」
ボケ「はい、じゃあドアを開けます」
ツッコミ「ギギギ」
ボケ「そこは薄暗くて埃っぽくて人の気配がしないんだ。お前はヨネ婆さんを呼びます」
ツッコミ「あ、ヨネって言うのね」
ボケ「呼んで」
ツッコミ「ヨネお婆ちゃーん?」
ボケ「声をかけても返事がない。お前の声が館に響き渡るだけだ。おかしいな、と思ってお前はドアを閉めて中に入る」
ツッコミ「バタン」
ボケ「暗い中階段を軋ませながら上がる。はい、上がって」
ツッコミ「ギシギシ」
ボケ「と、その時、2階で何かが横切るのが視界に入る!」
ツッコミ「え! な、なんだ、今の……」
ボケ「でも気のせいか、と思い直し、お前はお婆ちゃんがいるはずの部屋に行き、もう一度声をかける」
ツッコミ「よ、ヨネお婆ちゃんー、いるー?」
ボケ「果たしてそこには……。あー、よく来たねー。ヨネがベッドに横たわっている」
ツッコミ「なんだー、お婆ちゃんいるならちゃんと返事してよ」
ボケ「ごめんね、お婆ちゃん耳遠くてね。ぴえん」
ツッコミ「ぴえん⁉︎ お婆さんぴえんとか言わないでしょ」
ボケ「お前が来てくれて嬉しいよ」
ツッコミ「ぼ、僕もお婆ちゃんに会えて嬉しいよ。ずっと一人で寂しかったでしょ」
ボケ「寂しくはないよ、ずっと一緒だったからね」
ツッコミ「え……ずっと一緒? 誰かいるの?」
ボケ「亡くなったお爺さんとね」
ツッコミ「え? どういうこと?」
ボケ「亡くなったけどね、今でも私を見守ってくれてるのさ。と、その時、背後から迫る黒い影に気づき、お前は叫ぶ」
ツッコミ「わー! って、ねぇ、ちょっと。これお爺さんだよね」
ボケ「そう」
ツッコミ「なんか違くない? もっと得体の知れないの方がいいよ。悲しみが勝ってなんか怖くないもん」
ボケ「うーん、例えばジェイソンみたいな?」
ツッコミ「うん、まぁそうね」
ボケ「じゃあ、もういっそジェイソンの館にしよう。それなら怖いでしょ」
ツッコミ「えぇ……うん」
ボケ「お前は屋敷に入り、薄暗い中手探りで階段を上がる」
ツッコミ「ギシギシ」
ボケ「するとそこには大きな影が待ち構えていた!」
ツッコミ「わっ、な、なんだ、誰だよ」
ボケ「ヨネじゃよ」
ツッコミ「ヨネじゃねぇか! ジェイソン出せよ、もういいよヨネは」
ボケ「孫にそんなこと言われて、流石のヨネもぴえんをこえてぱおん」
ツッコミ「だから言わねぇんだよ! なんだよ、この婆さん」
ボケ「と、見せかけて婆さんは自分の顔の皮を剥がす」
ツッコミ「え!」
ボケ「実はヨネの顔はマスクだった! その下には恐ろしいジェイソンの仮面が!」
ツッコミ「ギャー!」
ボケ「大きな出刃包丁を振りかざしながら襲いかかるジェイソン! お前は逃げ惑い、とうとう壁際まで追い詰められる!」
ツッコミ「だ、ダメだ、もう終わりだ」
ボケ「絶対絶命のピンチ! かに思われたがジェイソンはふいに恐ろしい仮面を外した! 果たしてその仮面の下は」
ツッコミ「え、え、何?」
ボケ「ヨネじゃ!」
ツッコミ「だと思ったよ! だから違うんだよ、求めてないのよヨネは」
ボケ「孫にそんなこと言われて、流石のヨネもぱおんをこえてぴょいん」
ツッコミ「ぴょいん⁉︎ 何それ? いや、あのさ怖くないのよ。なんかズレてんの」
ボケ「今なんて言った? 怖くない? おめでとう」
ツッコミ「え?」
ボケ「それだよ。お前はたった今ホラー耐性がついて、恐怖を完全に克服したんだ」
ツッコミ「そ、そういうことか、すごい! ってなるか!」
ボケ「どう? 克服した心境、どんなの?」
ツッコミ「いや、だから克服っていうか……なんとも言えない」
ボケ「いや、だったらぴょいんだろ!」
ツッコミ「違うわ!」
ボケ「ぴょいんって言えよ、いいから!」
ツッコミ「何の必死さだよ! 言わねぇよ! たぶんぴょいんではない!」
ボケ「ぴょいんはよく分かんない時の気持ちだから」
ツッコミ「あ、そ、そうなの、じゃあ、今ぴょいんだわ」
ボケ「だろ? ぴょいん」
ツッコミ「ぴょ、ぴょいん。……いや、もうなにこれ!もういいよ」