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待ち人

作者: ベイム

この病気は、不可逆的に悪くなる。

つまり、治らない。

ただ悪くなる。


時間の経過と共に、

ひたすら自分の体が無能になっていくことを無理強いされたのだ。


そして、受け入れた。

体を動かすと余計気分が悪くなるから動かない。

そうして体を動かさず、

ただ座っていると脳も、もう考えることを愚行としてとらえ、

ただ待ち続ける。

死を。

感情を起こしても、周りはなにも変化はしない。

不快な気分になりたくないから感情を殺す。

段々植物になってくる。

朝起きて、

布団に張り付いた顔をはがし、

嗚呼、今日も死に一歩近づいたと思ってボーッとする。

座って窓の外を眺め、

ボーッと木々を見る。

風に揺られてるなぁ。。

彼らのようになりたい。

座ってるだけで偉い植物に、

なりたい。

けど、なれない。

私には光合成が出来ないから。

光合成ができないから周りに負担をかけてしまう。

負担をかけるから年々家族から疎まれる。


こんな私を、

以前は慕ってくれていた妻、娘は白痴とか、阿呆とか言ってる。

早く死ねと切望している。

いや、直接言われてるわけではないけど知っている。


私の思っていた阿呆の定義は、

思考が出来ていない人間だった。

だが、皆の衆から阿呆と定義される私は本物の阿呆なわけで、

本物の阿呆は私の想像とは少しずれていたようだ。


思考はできるのだ。

けど表現する、

伝える術がない。

なんとか表現したってなにもならない。

だから口開けて待つしかない。

そうして一人前の阿呆登録になる。



太陽が傾いてきて、

5時のチャイムが寂しく響く。

今日も終わりだ。

口開けたまま夕焼け眺める。

日没し、

私も目を閉じる。

そしてまた、朝が来る。

そしてまた一歩、死に近づく。


阿呆にできることは待つこと。

昨日も今日も、

明日も明後日も死を待つ。


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