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第十話「僅かな休息」

 王都ローシェルでの祭り二日間で見事商品を完売させた俺とロロットは、村へと帰還している途中だ。王都でのディナーの後のロロットはどこか上機嫌で、帰りの馬車の中ではロロットはいつも以上に饒舌だった。俺は、王都で買った唐揚げをからあげに食べさせながらロロットの話を聞く。


 「でも、商品を売り切ることが出来て良かったな」

 「ユウタさんが頑張ってくれたからですよ~」


 他愛の無い雑談をしながら俺たちは帰路につく。ロロットは今回の王都の滞在が相当気に入ったらしく、何度も何度も王宮での話を繰り返していた。


 「王宮でのディナーすごかったですね! あんな料理初めて食べました! それに花火もきれいだったな~。今まで見た中で一番きれいな花火でした!」


 また、ロロットの王宮での話が始まってしまった。正直この話は八回目くらいなので、ロロットがこの後何を言うかもわかっている。


 「来年も同じ場所で花火見たいな~」


 ロロットはずっとこんな調子だ。少しあほの子になったロロットも可愛いが、そろそろ同じ話に付き合うのも飽きてきた俺は少しロロットをからかうことにした。


 「それは、『誰』と見たいんだ?」

 「えっ!? それは……秘密ですっ!」

 「そういえば、花火のときロロット何か言ってたよな? あれ、なんて言ってたんだ?」

 「もうっ、ユウタは意地悪です! 秘密と言ったら秘密なんです!」


 少しからかい過ぎたらしい、ちょっぴり不機嫌になったロロットをなだめながら村へ向かって更に馬車を進める。どうやら雑談をしているうちに、村の手前まで着いていたようだった。青い喋る鳥を村の中に連れて行ったらパニックになりそうだなと、村にからあげを連れて行って良いものかと思案していたら、唐揚げを完食したからあげが突然声を上げた。


 「あ、めがみさまがよんでるから帰るねー」

 「お前、俺の使い魔じゃないのかよ!?」


 使い魔って突然帰るものなのか? 普通ご主人様と一蓮托生なんじゃないか? と頭の中がはてなで一杯になってる俺を尻目にからあげが更に言葉を続ける。


 「あるじはあるじだから、からあげのことはいつでも呼べるよー。ひつような時はからあげさもんって言ってね!」


 そう言い残してからあげは空へ帰っていった。まあ、いいや、そんなに困らないだろう。なんか呪文を言ってた気がするけど、恥ずかしいからそんな呪文は唱えたくないし、もうからあげと会うことはないだろう。俺は心の中でからあげに別れを告げた。


 そんなやり取りをしていたら、雑貨屋のすぐ近くまで着いてしまった。俺たちが向かうママンの雑貨屋からも灯りが小さく見える。おそらく店を閉めた後の片付け中だろう。祭りの二日目は昼過ぎには商品が完売していたので予定よりも早く村に着いてしまったので、今帰ったことを知ったらママンは驚くかもしれないな。


 「「ただいま~」」


 俺とロロットは声を揃えて店の戸を開ける。


 「随分早く戻ったね、その様子だと売れ行きは上々かな?」

 俺の予想に反して、ママンは特に驚くこともなく俺たちを向かい入れる。


 「あの、早く戻ったことに驚かないんですか?」

 「そりゃあ驚いたさ、でも今年は二人で売りに行ってるし想像の範疇だったよ」


 そうか、今までは出店は一人で回していたんだったか。比較対象がないんじゃ特別驚くことはないよなと納得し、俺は持ち出していた荷物の片付けを再開した。


 「ねえ、ロロット売上金なんか多くない?」


 硬貨のたんまり入った革袋の中身を机の上に広げながらママンがロロットに問いかける。


 「今回は売れ行きが良くって、ほとんどセールしなかったんですよっ!」

 「へえ、そりゃあすごい、一体どうやったのさ?」


 ロロットは二日間での出来事をママンに説明した。一日目の売れ行きの良さに加え、絶妙なセール開始のタイミング、その後の魔物サーカスでの出来事と俺の不思議な能力までも明かされてしまった。俺はツイート能力のことをまだママンには言っていなかったから大層驚いていて明日実際に見せることになった。その後は二日目の話に戻り、何故か売れ行きが一日目の倍まではいかないがとてもよく、最高の気分のまま街に戻りたいと予定を早めて帰ることに決めたところまでしっかり話し終えた頃には、寝る時間となっていた。



 翌朝、香ばしいパンとコーヒーの香りで目が覚めた。眠い目をこすりながら一階に下りると、ママンは朝食の用意をしていた。フライパンで肉を炒めながら、ママンは俺に話しかけてくる。


 「ユウタ、ツイートやって見せてよ」


 昨日の話を覚えていたママンに捉まって、俺はギルドのお偉いさんに珍しい魔法と言われたツイートを実演させられることとなった。

 いきなり言われても、何を発動させていいかわからない。俺がどうしようか迷っていると、料理をしていたママンは何かに気づいたように、はっとした表情を浮かべた。


 「あっ、目玉焼き用の卵が切れたたんだった。ちょっと買ってくるから留守番しててね」


 ママンはエプロンを脱ぐと、買い物用のバスケットを手に取り玄関へと向かった。


 「そうだ」


 あることを思いついた俺は、ママン向かってツイートする。


 「今日買ってきた卵は全部双子の卵だ、ツイート」

 「ん、今のがツイートかい? じゃあツイートの効果を楽しみにしてるよ。行ってくるね~」


 ママンが買い物に行っている間、俺はソファーに横たわり二度寝することにした。

 

 「ユウタ! いつまで寝てるのさ! ご飯できたから起きなさい~」


 ママンが俺のことを起こしてくれた。テーブルの上を見ると、黄身が二つの目玉焼きが三皿置いてあった。


 「本当に卵は双子だったよ。結構便利な魔法だね。でも、その魔法でどうやって戦ったんだい?」


 ママンはもっともな意見を俺にぶつける。


 「相手の足を攣らせたり、仲間をパワーアップさせたりですかね~」

 「う~ん、まあ最低限魔物に襲われても自衛は出来そうかな」


 ママンは小さい声でつぶやく。


 「よし。ユウタには今日から薬草摘みもお願いしようかな。魔物に襲われても自分の身は守れそうだし」

 「危ない目に会いそうになったらすぐ逃げてくるんで安心してください。」


 そう言って俺はママンを安心させた。


 「ママン、ごちそうさまでした」


 朝食を掻っ込む様に食べ終わるとすぐに、俺たちは薬草摘みに出かけた。



 ママンに許可された薬草積みの最初の場所は、薄々は感じていたがやはり俺が異世界に来た時に倒れていたところの周辺だった。


 「よしっ、まだ行きだけど湧き水スポット覗いていくか」


 独り言と共に俺はDQNに凍らされて飲むことが叶わず悔しい思いをした、湧き水を飲める岩間へと足を運ぶ。

 そこにはあの時ロロットが飲ませようと思っていたであろう綺麗に透き通った水がちょろちょろと優しく流れていた。


 「うまそうだ」


 俺は自然と口角が上がるのを抑えもせずに一歩、また一歩と岩間に近づく。傍から見たら完全に変態だろう。両手を皿のように合わせて丸めて水を貯め、いっぱいになったところで一気に飲み干す。うまい。ただの水のはずなのに柔らかな舌触りとしっかりと主張する飲んだという喉の感触はあの時の疲れた体で感じたなら間違い無く虜になっていただろう。

 今日の帰りにも湧き水を飲みに来ようと決心し、再び森の奥へと歩みを進めていく。

 今歩いているこの獣道はどこまで続いているのだろうか。

 ふとそんなことが気になったが、偶に人ともすれ違う事を考えると案外他の町や王都以外の都市に向かう近道だったりするかもな。余裕がありそうだったら高い場所から何か見えないか試してみよう。


 また、人とすれ違う。前からも更に人が歩いてきているのは二人組の男で武器まで持っているようだ。


 「この辺まで来ると魔物は居なそうだな」

 「おう、もういい加減集中力も持たねえよ」


 俺は武器を持っていた二人組の様子が気になり、スキルフォローを使い会話を聞かせてもらっている。俺は休憩中といった様子で道端の倒れ木に腰を掛けている。


 「やっぱり噂通り王都に近づくほど魔物は少ないし力も弱いな」

 「共和国周辺の魔物は、凶暴を通り越して狂気だったもんな」

 「確かに。でも、魔物が畑とか村を襲ってくれたおかげで、俺ら冒険者が食っていけているんだから魔物に感謝しないといけないかもな」

 「昔の魔物になら感謝しても良いが、なんか最近の魔物はどんどん活発化してて相手にしたたら身が持たねえよ」

 「確かに、確かに」


 どうやら、共和国って国の近くは魔物が暴れまわっているらしい。昔の俺なら怖いもの見たさで、スマホ片手に乗り込んで実況してただろうな。

 しかし、このスキル結構便利だな。うまく使えば情報収集はもちろん、相手の弱みを握ることだって出来そうだ。もう少し使い方を研究してみよう。

 このスキルの伸びしろを実感した俺は、とりあえず残りの薬草摘みを終わらせることにする。薬草を入れいている麻袋の中は半分ってところだ。もう少し、効率的に薬草を集めよう。そんなことを考えながら俺は森のさらに奥に歩みを進めた。

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