番外編1 黒髪少女の夢日記
これは僕(作者)の自己満足で書かれています。
いろんなものが雑に詰め込まれていますが、ご了承ください。
また、ストーリーに直接的には関わりませんが、本編での伏線がわかりやすく(雑に)張られています。
その日、目が覚めたのは時計が六時を指すのと同時だった。
黒野淋音。それが私の名前だ。
第三国立魔法術士育成学園の新入生として入学してきた私だが、魔法術の知識はからっきし。
これから三年間、この学園でやっていくことは、はっきり言って不安だ。
そう、不安だ。不安なのだ。
私は何も、好きでこの学園に入った訳では無い。
こんな人が集まる所、入りたいと思う方がおかしいのだ。
『人』という恐怖に囲まれてどう過ごせと言うのだろう。
昨日だってそうだ。
自己紹介なんてどうでもいい理由で、なぜわざわざ自らの情報を公開する必要がある。
恋が大丈夫だって言うから私は恋に任せたが……
顔に冷たい水を浴びクリアになった視界に映っていたのは、目つきの悪い、無愛想な鏡の中の自分の顔。
昨日の恋、凄かった。
人とあんなに楽しそうに、何も動じず、笑顔で話していた。
「笑顔で……」
私は人差し指で口の両端を持ち上げた。
作られた笑顔は冷めた目で私を見つめていた。
鏡の中の私は、私を映した虚像に過ぎない。
なのに私はそれに親近感を覚えて、鏡にそっと手を添える。
再び無表情に戻った"それ"はピクリとも動かない。まるで作られた人形のように。
「人形の方が上手に笑うよね」
誰に吐いたかも分からない呟きは虚空に消え、残されたのは私の命だけだった。
コンコンコン。
突然の音で私は洗面台の前に引き戻される。
何事かとあたふたしていると、再びノックの音が鳴る。
自室のドアからなっていたものだった。
私は時計をちらっと見る。
針は6時30分を示していた。
慌ててドアのロックを外し、軽く開ける。
「おっはよークロ!ご飯食べにいこー!」
勢いよく開かれた扉からこれまた勢いよく現れたのは、顔いっぱいに笑顔を浮かべた恋だった。
「お、おはようシロ……」
小さな声でそう返す私を見るやいなや。
「ちょっと!まだ着替えてもないじゃん!」
「あっ」
自分の体を見てみると、それはまだ寝巻きのままだ。
そしてまだ髪も結っていなかった。
急いで髪を結ぼうとする私を、恋が制止する。
「私が結んであげるから!クロはじっとしてて」
私は小さく頷き、恋に髪を預ける。
恋は慣れた手つきでくしを通す。
この髪型は誓いの印。そう言ったのはどっちだっただろう。
二人で読んだ本に乗っていた髪型。
おそろいにしたのは、ずっと一緒に生きていくと決めたからだ。
「よし!できた!」
私の髪はあっという間にポニーテールに変わっていた。
後ろで嬉しそうに笑う彼女は、あの時のことを覚えているだろうか。
「それじゃパパッと着替えてきて!ここで待ってるから」
そう言う恋を背に私は部屋の奥へ駆け込む。
恋は、シロは、いつまで待ってくれるだろうか。