13話:VS魔族アルベキド(後編)
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こんにちは。好敵手は互いを高め合う存在として認めた人のことらしいですね。なら、俺もそのような友に出会いたかったです。本当にね。
◇◇◇
(俺の避け方が直線的すぎるんだ。だから拳のタイミングを合わせやすかったんだろう。だったら次は縦横無尽に最適解で躱し続けるだけだ!)
俺の気迫を感じたのか魔族が口角を上げた。
まずは天駆で魔族周囲を駆け巡る。それと並行して弱点や行動の「起こり」などを観察する。そして、隙あらば『魔力砲』を撃つ。
『草原の覇者ともあろう者が時間稼ぎか……違うだろう?』
その魔族の声とともに首斬り包丁が一瞬にして俺を横薙ぎにしようとした。
(天駆じゃ直線的すぎる…立体機動では間に合わない…天駆を超えるんだ………翔駆!)
翔駆…それはツバメが風を受け流しつつ空を縦横無尽に駆け巡るイメージ
俺は横薙ぎの風圧を利用してスレスレで軌道修正し躱した。
『ほう。翔駆か……久しい技だ。原始魔法に翔駆とは誠に愉しい闘いだ!』
そこからは一進一退の攻防が続いた。俺は翔駆で空中を無軌道に飛び回りカノンを放つ。魔族はカノンを諸共せずに火炎弾を放ち続けながら時折愛刀で俺を両断しようとするが躱し続ける。どちらも決め手に欠けている状況だ。
(くっそ!身体強化のタイムリミットもあるのに!)と攻防の最中に考えてしまう。
そして、身体強化が切れたと同時に狙ったかのようなタイミングで俺に魔族が空いてる左拳を叩きつけ、空中で壁側に蹴飛ばした。俺は魔法壁で咄嗟に壁への激突は防いだが拳のダメージが大きく地に跪いた。
『なかなか愉しい闘いだったが、まだまだだったようだな。喰らえ。《断罪》』
(終わるのか俺は?まだヤツにまともに食らわせてないのに……確かに遠い……ヤツの攻撃を躱すにはヤツの背中側に行くぐらいじゃないと無理だ……10mくらいか……遠いな。遠いけど……無理だって諦めるほど遠いか?わっかんねーなー。)
その瞬間聞こえたのはエルの声だった。
「なにしてんのカズヤ!勝ちなさいよぉぉぉぉ!!!!」
それが俺に限界を超えさせた。
イメージしたのは沖田総司が使ったという逸話の縮地という言葉。それがどんな意味か行動かは忘れた。ただ距離を、時間を、概念を縮める程駆け抜けるイメージ。
『神域縮地』
次の瞬間、俺は魔族の背後に居たが、魔族は風圧で空高く舞い上がっていた。
俺は立ち上がりながら自分の中にある力が湧き上がる感覚に全能感を感じた。
そして魔族は空中でバランスを整え、俺と向かい合う形になりながら吼えた
『バカな!?我の拳を喰らい跪いた人間がする動きではない!何をした!にんげぇぇぇん!!!』
「別に何もしちゃいないさ…ただ、俺は!人間は!この世で1番生き汚いだけだ!」
(まだ形勢逆転したわけじゃない。でも、なんとなく侯爵の賢人精霊が言ってたことが分かってきた。)
いいですかカズヤ様。生命は思考に精霊を、体内の流れにマナを、身体という器に原子を使用しているのです。
(つまり、思念と想念と概念を見極めればいい気がする。あとはイメージと実践だけ)
そんな思考を他所に魔族アルベキドは吼えた
『巨体による暴力では無理ならば我も力を圧縮しようではないか』
そして闇の暴風がまた吹き荒れ始めた。だが、それはカズヤにとってもイメージを固める時間になった。
そして闇の暴風が止み、姿を現したのは人間サイズのアルベキドとそのサイズに合うように変化した首斬り包丁。対するは瞳に光輪を宿し、亜神域に達したカズヤ。
「身体を小さくされると躱し続けるのは辛いな」
『なにを寝言を。亜神域の人間なんぞ我は知らんぞ』
お互いに口角をつり上げて再び闘いが始まった。
カズヤは『魔法剣』を得物にし、激しい剣戟が繰り広げられる。アルベキドは隙あらば首を狙うがカズヤはそれを往なし、カズヤが胴を狙えばそれをアルベキドは包丁の腹で防ぐ。
『愉しいぞ!人間!』
「うるせぇ!このバトルジャンキー!」
とても魔族と人間の会話とは思えない会話をしながらも攻防は続いた。
『「これで終わりだ!」』
「『第74番魔法。圧縮魔素剣圧』!!!」
『《断罪》』
2つの剣の軌跡が交差し、終焉を告げた。
魔族アルベキドは身体が両断されたが満足だった。ここまでの敵と闘い、愉しみ、消えゆくのだから。
「あんたのお陰で自分の大切なものとかいろいろ分かったし、これから闘う魔族の脅威も分かった。安らかに眠れ。断罪のアルベキド」
『我から言えることはひとつだ。賢人精霊を大切にせよ。ではな』
そうしてアルベキドが闇に消えるとともに俺たちは迷宮の外に転移した。
(分かってるさ。エルはお小言がたまにしつこいけど大切にするさ。あいつのおかげでアンタに勝てたんだからな。)
カズヤは『立体機動』スキル、『翔駆』スキル、『先読み』スキル、『縮地』スキル、『見識』スキルを手に入れ、『神域に踏み込みし者』の称号を得た。
◇◇◇
ダメよ!貴方の賢人精霊に心動かされるなんて!貴方は私のモノなのよ!
な、なんとか書けた〜!