9話:過激なパーティー
カズヤはピンチあってのカズヤです。
こんにちは。頑張ることと我慢することは違います。ただ、どちらも過ぎれば毒足り得るでしょう
◇◇◇
俺は領主閣下であるカタザキ侯爵に今宵の作戦を、俺のステータスを見たエイナム執務官に軽い口裏合わせをお願いし、マントを借りて一旦、領民の様子見をしに市街に降りた。
「賑わってはいるけど………やっぱりどこか心ここに在らずって感じだな〜」
そんな風に街を歩いていると目に付くのは亜人だ。獣の耳と尾を持った半亜人が多いがたまに鳥顔や二足歩行ワニの亜人などがいてなかなか面白い。だが、大半は奴隷のようだ。亜人の人権はこの領地含むこの国では低いと窺える光景が多い。やはり他種族の同列化はどの世界でも課題らしいね。
そんな暢気なカズヤと違い、エルは城内の謀反派が撒き餌に食いつくか数人の精霊と密偵をしていた。
「カズヤの言う通りエイナム執務官に侯爵の息子さんが数人はカズヤのステータスを確認してたけど………目立つ動きをしてるのは次男の士爵さんね〜」
「エル様〜。地下室に強そうな兵士さんとあの人が向かってるで〜す」
「分かったわ。すぐ行く」
(なんでカズヤは簡単に当たりが分かるのよ〜!!)というエルの怒りは誰にも届かない。
そして夜。領主城大広間にて長い夜となるパーティーが始まった。
「今宵は皆の者!よく集まってくれた。今回の金剛蟻の進軍を止めたのはこの青年……魔術師カズヤ殿だ!」
俺の紹介は割愛するが、こうして今回の奇跡を祝して侯爵領の上流階級に連なる人やその子どもたちによる立食パーティーが始まった。もちろん料理人はシェフと俺だ。シェフに「跡を継いでくれ!」と頼まれたのはまた今度。
(カズヤ!侯爵さんの周りが謀反派騎士だけよ)
(そろそろフィナーレか)
「そこまでです父上!」
その声と同時に侯爵の近衛兵が侯爵に槍を向けた。
「ほう。我が三男セイルフィードよ。そこまでとはどういうことだ?」
「言葉のままですよ父上。精霊術が使えるなどと妄言を吐き、あまつさえ金剛蟻の群れがいると言い、民を動揺させ、そこのカズヤなる『悪魔主義者』に魂を売り渡した父上にこの領地の主たる資格はありません。拘束させていただきます」
会場がざわめき立つ
「閣下が耄碌されたという噂は本当だったのか!?」「あの青年が悪魔主義者だというのか!?」「セイルフィード様〜」
最後のはバカだろう。さてではその厚い面の皮を剥がしましょうか?
「カタザキ侯爵家三男セイルフィード様。貴方は知の賢者と名高いのにも関わらずその愚行を行いますか」
「なに!なにを言う悪魔主義者め!」
「悪魔主義者は貴方でございましょう?セイルフィード様」
そこで俺は指をパチンと鳴らし精霊たちにより会場中にセイルフィードの言葉を聞かせた。
『ふふふっ、これで準備は整った。金剛蟻がやられるとは思わなかったがこれで父を蹴落とせる!そして次期侯爵は我が手に!欲魔神様バンザーイ』
さすがのセイルフィードもこの言葉を聞き内心焦っているだろう。
「聞かれましたか皆々様!セイルフィード様は侯爵領への謀反を企て、更には悪魔主義を超える大罪である『魔神主義者』なのです!これは我が精霊たちの聞いた言葉でございますし、私の耳だけでなく、エイナム執務官の耳にも聞こえておりました!さぁ、領民たちよ!大罪人は侯爵閣下かセイルフィード様か判断を!」
「ちなみにだが、私の耳に届いたのはこの内容で間違いないぞ?」
それを最後にセイルフィードは力が抜けたかのように地面に座した。
侯爵付近の近衛兵もお縄になっているので安心したのだが………
「ふふふ、はははは、はーっはっはっは。では最後の手段だ!『◼▲◆………この土地を迷宮とせよ欲魔族!魔族迷宮!!!』」
その不意打ちとともに俺は自分の油断を恥じた。
◇◇◇
油断大敵よ。カ・ズ・ヤ♡さぁ、その試練どう乗り越える?
パーティー衣装?気にしないでください。