1話:説明不足は欠陥だ!
こんにちは。最近のゲームはリアリティが高いのでVR技術を用いたゲームの風景は実物と変わらないと聞きます。1度でいいから体験したいです。えぇ、もちろんゲームの世界で。
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今の世の中って楽ですよね。「強者」に従い過ごすだけ。少しでも反抗したら罰則。そしたら誰だって「普通」に生きる。ルーチンワーク万歳!
俺は「弱者」らしく生きていた。長い物には巻かれろを守ってた。容姿も平凡だし、才能も「アレ」以外は平凡だ。年齢も25歳だ。高卒就業だから中堅手前だし。本当に「あの日までは」平和だった。
…………なんであの日、あの時に上司に反発したのかなぁ〜。憂鬱な気分のまま俺こと渡辺一也は廃ビルの屋上に着いた。
(ははっ、高っけぇな。ここから落ちれば………一瞬だろ。)
俺はその日、「ルーチンワークの世界」から逃げた。
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風がそよぐ草原。せせらぎを奏でる小川。まるで楽園のような景色を楽しみたかった。でも、楽しめない。なんでかって?今、俺は、巨大蟻から全力疾走で逃げてるからだよぉ!
(おかしいよねぇ!俺さっき身投げしたはずだよぉぉぉ!!!)
俺は身投げした。そこは記憶にある。その後、ローブに身を包んだ顔も見えない奴に「これから試験を開始する。資格を示せ。」とか言われた直後ですよ………周りが楽園での巨大蟻との追いかけっこは!
俺は全力疾走しつつ考えをまとめ始めた。
(まずおかしいのはこの蟻だ。身体の加重度が増えた感じはない。なのにこの全長約3メートルの蟻は生きてるし、追っかけてくる。物理法則は若干無視されてるはずだ。もしくは蟻がすげー硬いか。どっちにしろ地球原理ではない。)そこで蟻が突撃してきたが躱した。ズドーン!
(次の疑問点は、俺の身体能力だな。かれこれ10分は全力疾走してるが疲れてる感はない。問題があるとすれば、足が速くなりすぎてカーブしにくいことか。)そこで蟻がまたこっちに向かってきた。ついでにキシャァァァとか鳴いてる。
(次の疑問点は、周りの風景だ。いくら小川と草花がある草原っていったって、他の生き物がいないのはおかしい。孤立した樹木も、蜂や蝶もいやしない………正しく試験会場だ。)そこからまた追いかけっこ再開。気持ち悪ぃ。
(最後の疑問はあのローブ野郎の資格だ。ファンタジー的には勇者とかの資格だろうけど………説明がなさすぎる。どんなマゾゲーだよ。)まだまだ蟻との命懸けの追いかけっこが続いた。
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「さぁ、貴方はこの試験に順応できる賢者?それとも愚者?」