9話 ギルドに行こう
城を出て、城下町に来ています。
もちろん、人に見つからないように物陰を伝って来ましたよ。
人に見つからないように移動するって、凄い疲れる。
身体的より精神的に。
どうにかして、街を歩いていても違和感のない姿が欲しいものだ。
街にいて違和感が無い………人間かな?
前世が人だったせいもあり、人殺しには少し抵抗がある。
まぁ、いつか考えよう。
兎に角、まずは情報集めだな。
【検索】でわかるのはこの世界の知識だけで、今の世界の情勢とかはサッパリわからないのだ。
情報を集めやすい場所を考えるが、こちとら異世界に行くなんて初めてだし、わかる訳が無いよね。
はぁ、前世だったら、インターネットに新聞、ニュースとかでわかるんだけどなー。
異世界にある訳無いよね……。
うーん、ゲームとかだったら……酒場とか、ギルドかな?
取り敢えず、酒場かギルドに向かおう
あるかわからないけど!
まぁ、冒険者とかあるし大丈夫だろ。
困った時の【検索】さん!
ー《ギルド》ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
冒険者の管理をする役所。
仕事を依頼したり、依頼を受けたり、魔物の素材を買い取ったりする。
街に1つはある。
登録するなら、登録料100ユースをご持参でお越し下さい。
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何でも屋みたいなかんじだな。
つか、途中からギルドの広告みたいになってるじゃねーか! しかも、登録するのに金取るのかよ。
……ユースって何だ? この世界の通貨の単位だろうか?
教えて!【検索】さ〜ん
ー《ユース》ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アヴァリアルの共通通貨の単位。
この世界の主神であり、正義と平等を司る神、ユーストレイアの名前から来ている。
『公平に取引できるように』という願を込めて、この名が付いた。
10進法を用いてある。
1ユースが鉄貨1枚。
10ユースが銅貨1枚。
100ユースが銀貨1枚。
1000ユースが金貨1枚。
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『は〜い!』って答えてくれる事を期待していたのだが、残念ながら無理だったようだ。
まぁいいや、話を戻して、体感1円がなくて10円が1ユースかな?
でも鉄貨が100枚で銀貨って安くね? とも思ったが【検索】さん曰く、貨幣に使われる金や銀は純度が凄く低く、価値が低いらしい。
まぁ、この世界の人の価値観とか、興味ないから華麗にスルー。
それに俺は魔物だし、そんなにお世話になる事も無いだろう。
とにかく、今はギルドに登録する必要は無いな。
道案内は【検索】さんに任せて、ギルドに向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ギルドは、食事処と併設していた。
さて、中に入って情報集めと行こうか。
どんな姿で入ろう?
霧状態だと隙間風とか怖い。
宝石系はそのままお持ち帰りされかねないから論外。
トカゲは……見つかったら叩き潰されそうだな。
やはり『下級兵装』で行くしか無いか。
言い忘れていたが、この前【吸収】した装備達は、吸収物の欄に『下級兵装』として、まとめて書かれていた。
建物の物陰で、人目が無いのを確認してから変身する。
あー、動き辛い……。
そのまま、ノタノタとギルドの建物内に入っていった。
あまり目立たない所で、団体が近くに居て、会話を聞ける席とかないかな?
ギルドの建物内を見回す。
まだ昼間だというのに、もう酒を飲み交わしている冒険者の集団がいた。
あの集団の周辺がいいな……
運良く、窓際の2人席が空いているが確認できた。
あそこなら声も聞こえるし、目立たないだろう。
早速、その席を陣取って聞き耳をたてる。
「あの、お客様?」
周りの音がうるさくて聞き取り辛いな。
聞こえなくは無いけど。
「お客様!!」
うわ、びっくりした。
いつの間にか、テーブルの隣に店員が来ていた。
店員の方を向く。
怪しい者じゃありませんよ?
「ご注文はお決まりでしょうか?」
注文を取りに来たのか、
まぁ、飲食店なのだから当然だろう。
テーブルの上にあるメニュー表みたいな物を見てみる。
特に、食欲も無いし……ドリンクでも頼むか。
別に飲み物も欲しいわけじゃ無いから、一番安いやつで………
あった。
水:10ユース。
え、水で金取るの!?
やはり、水が無料で飲めるのは日本だけなのだろうか
まぁ、良いや。
それじゃあ、水1杯で。
ちょっと複雑な気持ちになりながらも注文するが、
…………あ、声が出ない。
そうか、声を出す生物なんて【吸収】してないもんな。
出る訳無いか。
仕方がないので、メニュー表の水を指差し、もう片方の手で一本指を立て『一つ』と頼む。
「お水ですね、畏まりました」
そう言って、店員は厨房の中に去っていった。
気を取り直して、盗み聞きを再開する。
冒険者達は、「最近の狩りはどうだ?」だったり、「割のいい仕事はどれだ?」など色々話していた。
あまり、俺の欲しい話ではないな。
そう決め付け、聞くのをやめようとしたら、
「それで、勇者様達が召喚されたと言うのは本当か?」
気になる話が聞こえて来た。
勇者? 召喚?
身を乗り出す勢いで、聞こうとした時、
「お待たせしましたー、お水です」
さっき、注文した水が運ばれてきた。
なんでタイミング。
一応、軽く会釈をしてお礼の意を伝えておく。
「勇者様が召喚されたとなると魔王級の魔物や、龍王種が暴れるって事か?」
「もしかしたら伝説の大魔王でも現れるんじゃ無いか?」
冒険者達はふざけた様子で話していた。
冗談話みたいな感じだな。
それにしても、知らない言葉ばかりだ。
後で【検索】しておくか。
勇者関係の話はそこで終わってしまっていた。
もう少し聞きたかったが……、まぁ【検索】すれば何とかなるだろ。
そう思い、席を立とうとすると、
「よう?楽しんでるか?」
突然、スキンヘッドのおっさんが話しかけてきた。
何だこいつ冒険者か?
「あんた名前は?……って、自分が先に名乗るのが礼儀か。
俺はオベス。この都で道具屋を経営してる。
あんたは……見た感じ王国の兵士か? なんでこんな時間からこんな所に?」
突然自己紹介をされ、すぐに質問攻めである。
その質問に回答してやっても別に構わないのだが、声も出ないし、身振り手振りでは限界がある 。
要するに、答える手段が無い。
「おいおい、黙りか? 俺はちゃんと話したってのに」
ズンっと近寄ってくる。
おお、凄い圧力……、っていやいや、答えたいのは山々なのだが、あいにく喋れないんだよ!!
まぁ、声が出ないんだから、この説明も通じないんだけどね。
どうするか。
そこで思い出した。
紙とペン、それにインクもある…………でも書くと時間がかかるよな。
そうだ! いいこと思いついた。