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82話 諦めなければ!



「そろそろ時間だ。君達が選んだ選択を聞こうか〜」


アコンプリスがタイムリミットを言い渡した。


『アリス、どうする?』


考え込んで、口を固く閉ざしていたアリスに答えを尋ねる。


『私はラントヴィルト家の次期当主……私事で領民を危険に晒すわけには……いきません』


時々途切れる言葉からは、無理しているのが丸わかりだ。


『決意を固めた後にこんな事を言うのもなんだが、アリスは頑張った。少しくらいワガママ言っても良いと思う』


俺には、領民の大切さなんてわからない。だから、領民を犠牲にしても良いのでは? と提案するが、


『気遣いありがとうございます。でも、これは領主としての……ラントヴィルトの意地です』


どうやら俺の言葉はアリスの決意を固めてしまったようだ。


『一撃で沈めます。少しだけあの悪魔の動きを止める事って出来ますか?』


『【束縛魔法】を使えば、少しくらい止める事できると思う……いや、止めてやろうじゃねぇか!』


11歳の少女が、義妹いもうとが覚悟を決めたのだ。


それに応えなくて、何が義兄あにだ!


『ありがとうございます!』


そう話すアリスの目は、完全に獲物を捉えていた。


「で? どうする気かな〜?」


アリスが両親を取ると信じ切っているアコンプリスは、フィギュアスケートの様にクルクルと回っている。


だが、今はそれが命取りだ!!


『いきます!!』


『おう!』


【高速移動】に【高速射出】、【突進】と言う、あの地竜すら(多少)怯ませる組み合わせで、アリスの身体は獲物目掛けて飛んでいく。


もちろん【対魔力攻撃】も忘れない。


アコンプリスが気付いた時はもう遅かった。


移動しようにも、魔法の鎖に遮られて動けない。


アコンプリスの身体は、アリスの直撃を受け弾け飛んだ。



………

……



「バカじゃねぇの!? お前は両親を見殺しにするのか!?」


そう絶叫するのは、紫色に怪しく光る球体だった。


さすがにHP1では、人型になる事はできないらしい。


まぁ、そんな事はどうでも良い。


『極めて確率は低いけど、両親を助ける方法はある……』


成功する自信が無いから、言うか迷っていた。


『本当ですか!?』


その言葉を聞き、アリスの顔がパァっと明るくなる。


この反応が怖かった。まるで、絶望の中で救いの手を差し伸べられたような、安堵したような反応が怖かった。


正しくは、失敗した時、この顔が再び絶望に染まる。そんな反応が見るのが怖かった。


一回明るい未来を見せられた分、その後に来る絶望はより深い物になるだろう。


『成功する自信はないから、あまり期待はしないで欲しい』


失敗した時のショックを減らそうと、成功率が低い事を強調するが、


『大丈夫です。、何もしなければ成功なんて絶対しませんから!』


アリスは諦めた様子は見せず、そう言い切った。


その言葉を聞き、失敗した時の事ばかり考え、ずっとウジウジしていた自分がバカらしく思えてくる。


いくら成功確率が低くても、0じゃない。


0じゃなければ希望はある。


………

……



方法をアリスに説明し終える。


『この作戦は時間との勝負だ。俺が【吸収】し終えたと同時に、全力で【異次元牢獄】を発動しまくるぞ!』


『了解です!! お父さんお母さん、今助けてあげます!』


アリスの準備が完了したようなので、光の玉を掴み、手袋から【吸収】する。


体積が小さいので、【吸収】はすぐ終わった。


討伐判定されたのか、アリスのレベルが劇的に上がるが、そんな事はどうでも良い!!


『行くぞ!!』


『はい!!』


2人で意気込んだ時、


『それでは間に合いませんよ。だから少しばかり手助けしてあげますね』


『2人にはやってもらいたい事があるのです! そんなやつ、さっさとと倒すのですよ!』


そんな言葉が頭に流れた。


それと同時にアリスの身体が一瞬輝く。


『今の声は?』


どうやらアリスにも聞こえていたようだ。


俺には聞き慣れた声、最終手段と思っていた存在達からの支援。


これ程頼れるものはないだろう。


《一個人に干渉し過ぎてはいけない》って言葉を無視し過ぎではないか? と後でツッコミを入れておこう。


って今はそれどころではない。


アリスの身体が光ったって事は、アリスに何かしたのだろう。


アリスを【鑑定】する。


そこには、【能力爆発スキルバースト】の文字があった。



ーー《能力爆発(スキルバースト)》ーーーーーーーーーーーーーー

トーリウルスの加護の呼ばれるASの一つ。

所有するスキルの威力を爆発的に上げる。

しかし、膨大なSPを使う上に、使用したスキルは破壊され使用出来なくなる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



はは、何でチートスキル。


まぁ、これで何とかなるだろう!


『兄さん! いつの間にか危険そうなスキルを習得してます!』


アリスも【能力爆発】に気が付いたのか、そんな報告をしてきた。


『大丈夫! むしろそのスキルがこの状況を打破する鍵だ!』


『??』


何を言ってるのかわからないと言った具合に、首を傾げている。


『そのスキルは保有してるスキルの威力を上げるスキルだ! 異次元から両親引きずり出してやれ!!』


状況を理解したのか、アリスの顔がパッと明るくなる。


『なるほど!! でも使い方が……』


『そんなもん気合でなんとかするんだ!!』


俺も使い方わからんし。


『そう……ですね! わかりました!! はぁああああああっ!! スキルバースト!!』



………

……



無事救助し終えたアリスの両親に、回復魔法をかけておいた。


「はぁ、はぁ、すごい量の体力と気力を持って行かれた気がします」


全てを出し切ったアリスは、地面に大の字に倒れ、燃え尽きていた。


「お疲れ様。アリスの頑張りのおかげで、2人とも無事だよ。多分そろそろ目を覚ますと思う」


俺の発言を聞いていたかのようなタイミングで、2人がゆっくりと目を覚ました。


「お父さん!! お母さん!!」


その声を聞きつけたアリスは、2人の元に駆け寄った。


「……もしかして、アリス? アリスなのか!?」


「どうして貴女がここに居るの?!」


寝起きで、ぼーっとしていた2人だが、自分の娘の存在に気がついた途端、バッチリ覚めたようだ。


「助けに来たんですよ! ……よかった……、2人とも無事で良かったよぉおおおおおおおお!」


「あぁ! 私達の愛しい娘、アリス、会いたかったわ!」


「とりあえず、三人とも無事で良かった!!」


三人が互いを抱きしめ合い、感動の再会を果たすラントヴィルト一家。


うん、仕方がないとはいえ蚊帳の外感が凄いなー。


まぁ、この状況に水を刺すなんて無粋な事はしない。



………

……



「そう言えば、私達は悪魔に囚われていたはず、その悪魔はどこに行ったのだ?」


感動の再会終了と共にアリス父が疑問を漏らした。


「あの悪魔なら倒しました」


アリスが胸を張ってそう報告する。


「アリス、それは本当なの?」


「悪魔族だぞ? ちょっと信じられないな」


信じたいけど信じられないと言った感情が伝わってくる。


まぁ、その気持ちはわかる。


俺と出会った時のアリスのレベルは11、それに対して悪魔のレベルは270。


万が一にも勝てるとは思えない。


ましてや、この短期間のアリスの急成長を知らない両親が信じられるわけがない。


あ、ちなみに、今のアリスのレベルは142。


冒険者ランクで表すなら【C】で、かなりの実力者。


一国の精鋭騎士団に入れる程の実力である。


「ちゃんと倒しましたよ! 私1人の力では無理でしたが……」


アリスが意味深なことを言い出した。


妹様は賢い。余計な事は言わないはず!


「誰か仲間でも居たの?」


「はい! 兄さんが助けてくれました!」


自信満々にそう話す。


「「兄さん?」」


アリスの両親が首をかしげる。


「これが兄さんです!」


アリスは髪留めの片方(俺)を外し、両親の前に差し出した。


うん、まだギリセーフ。俺が魔物って言わなければ……。


「えっと、どうも」


このまま黙ってると、アリスが可哀想な子になってしまうので、一応挨拶はしておく。


「……私、疲れてるのかしら……」


アリス母か目頭を押さえ、そんなことを言い出した。


まぁ、当然の反応だよな。


アリス父の方も、同じ反応だろうと思ったら、片膝をつき頭を下げていた。


「この度は貴方様のお力添えのお陰で、我々は無事再会を果たす事ができました。このご恩は忘れません。本当にありがとうございました」


片膝をついたのは、驚きすぎて気を失った訳ではなく、敬意を払っていたようだ。


「いやいや、娘さんが頑張りのおかげです。そっちを褒めてあげて下さい」


敬意を払われるような存在では無いし、矛先をアリスの方へ向けておいた。


「ところで、ただの少女が悪魔に勝ってしまうほどの力……、名のある神器とお見受けします。差し支えがなければ、名前の方を伺っても宜しいですか?」


アリス父の反応の理由がわかった。


なるほど、俺の事を神から与えられた道具と勘違いしているらしい。


これは、利用するしかないと思ったが、


「兄さんは神器じゃありません。魔物ですよ?」


はいアウトー!!


俺が話す前に、妹様が暴露してくれた。


「……ま、魔物? 神獣とかでは無く?」


アリスの両親の顔が固まる。


「はい、兄さんは伝説の魔物、合成魔(キメラ)です」


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