77話 スタツ遺跡
スタツ遺跡は、ゴーレム系のモンスターばかりだった。
『一旦離れるぞ!』
『はい!』
俺の指示通り、アリスは敵であるクマ型のゴーレム、熊石像から背を向け【高速移動】を用いて、全力で駆け抜ける。
振り返ると、熊石像が追いかけて来ていた。
体が重いせいで俊敏さには欠けるが、スピードが乗ると結構速い。
『兄さん!』
アリスからGOサインが出る。
収納空間から岩を取り出し、突進してくる熊石像目掛けて【高速射出】した。
【高速射出】された岩と、熊石像の突進がぶつかる。
鈍い音と共に砂埃が舞い上がり、岩の破片が飛び散った。
【高速射出】のスピードと、熊石像の突進のスピードが合わさり、衝突威力はかなりの物になったのがわかる。
やがて砂埃がおさまってきて、熊石像の姿が見えてきた。
『トドメです!』
アリスが鉄剣を取り出し、熊石像の中心目掛けて【高速射出】する。
放たれた鉄剣は、ゴーレム達の動力源である《魔核》を貫いた。
動力源を破壊された熊石像は、ただの石になり崩れ落ちた。
『はぁ、これ何回目でしたっけ?』
アリスが、ウンザリと言った具合で聞いてきた。
『かれこれ17〜8回目くらいかな?』
そう、遺跡に入ってから、これと同じような事を何度も何度もしているのだ。
『そんなにも……、もう疲れましたよ〜』
アリスは地面に座り込み、弱音を吐き始めた。
まぁ、弱音を吐きたくなるのも無理はない。
何せ、俺たちは別に熊石像を狩りたいわけではないのだ。
それなのに、すぐに向こうから襲いかかってくる。
しかも、熊石像は危険度Dなので意外と強い。
恐らく、このスタツ遺跡の雑魚モンスターの中では、恐らく最強格。
その最強格ばかりと戦う羽目になっているのには、この遺跡のシステムに関係している。
この遺跡のゴーレム達は、しっかり役割分担をされていて、
小さくて弱いトカゲ型などのゴーレムは偵察役、
大きくて強いクマやサイ型のゴーレムは戦闘役に就いているのだ。
つまり、遺跡内を小型ゴーレムが巡回し、敵を発見次第、大型ゴーレムに報告。
報告を聞きつけた大型ゴーレムは、現場に急行し、速やかに敵を排除すると言う構図が出来ているのだ。
なんて嫌がらせ。
そのお陰もあり、アリスのレベルとスキルレベルの上昇がマッハである。
『俺が見張りをしてるから、アリスは寝てていいぞ』
人間の体は、食事を摂ったり、寝たりしないといけないからな。
収納空間から寝袋を取り出して、目の前においてやる。
『はい、お言葉に甘えて……お休みなさい』
よほど疲れていたのか、アリスはすぐに眠ってしまった。
そう言えば、人間の身体では睡眠とらないと動き続けれないんだったな。
今度からは、もう少し注意してみててやらないと……。
『さて……』
もう補充された新手の大型ゴーレム達を見る。
『子供の安眠くらい守ってやるか』
………
……
…
『ふぁ〜、兄さんおはようございます……って、何ですかこの地獄絵図……』
さっきまで、まだ寝足りないと言った感じに、ぼーっと焦点が合ってなかった目が、周りを見た途端、パッチリと開かれる。
ゴーレム達は、ただの岩に戻るとは言え、破壊された後もある程度の原型は維持されるのだ。
つまり、俺たちの周りには様々な動物の形をした石像が、見るも無残にバラバラにされていた物が散らばっている。
時々現れた、人型のゴーレム達の頭や手足も乱雑に転がっている。
アリスの言った通り、完全に地獄絵図であった。
『うん、俺も……もう少しやり方はあっただろうと反省してる』
ちなみに、ただアリスの安眠を守る為だけに、ここまでの事をした訳ではないのだ。
アリスが寝ていたとしても、俺が魔物を倒せば、アリスに経験値が入るのがわかったのだ。
そう、少しでもレベルを上げてやろうと言う、親心みたいなものである。
ただのパワーレベリングとか言わない。
そのお陰もあって、出会った頃は13レベルだったアリスのステータスも、素の状態で
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名前: アリーシア・g)&*,€♪
Lv:72
HP:615
SP:1470
ATK:545
MATK:1000
DF:322
MDF:930
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3倍近く上がっていた。
まぁ、ただレベルを上げるだけでは、アリスの為にはならないだろうし、基本は自分で戦ってもらうスタイルを貫き通す所存です。
『そ、そんな事より早く先に進もうぜ?』
遺跡の奥(アリスの両親が居るかもしれない場所)に進むよう促した。
………
……
…
目の前に巨大な扉があった。
『これが最深部かな?』
あまりにあっけなく着き過ぎて、本当に最深部か心配になってくる。
『多分……』
挑戦2日で最深部に辿り着く遺跡って……。
いや、時計ないし、本当に2日かどうかは分からないけど……。
『一応、遺跡……言って仕舞えば家みたいなものですし、1泊しないと奥に辿り着かない、と考えれば……』
露骨にガッカリしている俺を見てか、励ましの言葉をかけられた。
『そうだな、じゃあ、さっさと終わらすか……』
いつまでも落ち込んでいても仕方がないし、アリスに気を使わせるのも悪い。
頭を切り替え、扉を開けた。
中を覗き込むと、中はだだっ広い広間になっていた。
完全にボス部屋。
ただ、ボスの姿が見当たらない。
『兄さん…………私、この遺跡を作った人に謝りたくなりました』
アリスが、本当に申し訳ない、と言った様子で話しかけてくる。
『うん、俺も同じだ』
どうやら、アリスも【探知】と【鑑定】を使ってしまったのだろう。
一見何もない広間だが、床の下に魔物の反応があるのだ。
中に入ったら、下からドーンと登場させるつもりだったのだろう。
取り敢えず、【鑑定】をしてみる。
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種族:ゴーレムサウルス・レックス
危険度:C
Lv:126
HP:26,780
SP:3,222
ATK:7,265
MATK:76
DF:9,500
MDF:3,305
PS:振動感知Lv.4、暗視Lv.3、異常状態無効
AS:自己修復Lv.4、硬化Lv.4、突進Lv.3、
噛み付きLv.4、薙ぎ払いLv.4
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スキルは貧相だが、ステータスは結構高いな。
まぁ、情報が多いに越したことはないし、【検索】する
ーー《ゴーレムサウルス・レックス》ーーーーー
通称、G–レックス。
スタツ遺跡のラスボス。
岩の身体を持つ恐竜型のゴーレム。
硬くて重い身体を生かした物理攻撃が強力。
強靭な顎と、長い尾には要注意。
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間違いなく、ティラノサウルスだとか言わない。
『結構強そうだけど、俺が倒して『私も戦います!』
アリスが戦うのは危険だと思い、俺が一人で倒してこようか?と提案しようとしたが、
『私も戦います!』
俺の提案を先読みされていたのか、途中で妨害が入った。
しかも、二回も言われた。
『わかったわかった。ただし危険になったら問答無用で離れさせるからな!』
絶対に意見を変える気は無さそうだし、諦めた。
『さて、取り敢えず……』
Gレックスの不意打ちを防ぐ為に、広間に向かって岩を投げた。
案の定、岩が地面に着地すると同時に、地面が割れ、Gレックスが飛び出してくる。
『『…………』』
騙されて飛び出してくるGレックス。
シュール過ぎて、暫く無言の空間が続いた。
何の報告もなく更新を滞らせてしまい申し訳ございませんでした。
忙しい時期は乗り越えたので、これからは毎日更新出来るよう努力します。