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8話 窃盗?そんなの知らない

建物の壁を登り、窓から覗いてみたが、


どうやらこの建物は、兵士達の更衣室みたいな所だった。


もしかしたら、鎧とか剣とか手に入るんじゃ無いか?


そう思い、早速中に入って物色を開始する。


部屋の中には、練習用の木の剣と、基本の兵装であろう鉄の剣が沢山あった。


とりあえず、比較的新しそうな鉄の剣を2本探し出し、1本は【吸収】し1本は収納空間に入れておいた。


はじめは『鉄の剣であれば何でも良い』と思ってたんだよ?


でも、実際に見てみたら、使い込まれて見た目がボロボロだし、柄の部分は茶色くなってて汚いし臭うし、散々選ばせていただきました。


あとは、鎧……というか動きやすい服が欲しいな、綺麗なやつ、新品だったら尚良し。


他にも手袋に靴、顔を隠せるものも欲しい。


お面とか無いかな?


お、何か紙袋みたいなものが置いてある。


書いてある文字を読んでみると、


『手袋、サイズ(中)』


お、これ新品じゃ無いか?

紙袋を、収納空間に入れていたハサミでズタズタに切り裂く。


わざとこんな惨事にした訳じゃないんです。


俺だって頑張ったんですよ! でも、自分より大きなハサミを使うって無理があると思うんだ……、しかも、トカゲの体で………。


取り敢えず、2組回収する。



なんで2つかって?

吸収用と保存用ですよ。



さっきの、鉄の剣も2本盗ってた?

盗ったのではない! (無許可で)借りただけだよ。

ほら、返さないとは言ってないじゃん?



吸収用はわかるけど、保存用は要るのか?

俺の座右の銘『備えあれば憂いなし』だから……。



お金で買えばいいのでは?

節約って大切だよね


そもそもこれって窃盗では?

ワタシ、マモノ。ニンゲンノ、ルール、ヨクワカラナイ。



まぁ、これで新品は紙袋の中にあることがわかった


その後、レザーメイル、革の手袋、ブーツ、そして旅用のフード付きマントを手に入れた。


もちろん2つずつ。


残念ながら、お面は無かった。


そこで気がついた。


今まで、何も考えず【吸収】してきたが、変身すると『吸収した時の状態』になるのだ。


このままだと、変身した時に畳まれたまま出てくるんじゃないか?


俺のイメージでは、さっきのデッサン人形見たく装備全てを出して人のように動けないか? と考えている。


イメージは、龍クエに出てくる『彷徨う鎧』



そうなると、装備を全て何かに装備させた状態で【吸収】しなければいけなかったのだが、


もう【吸収】してしまったので手遅れだった。


よし!


もう1組ずつ回収したのは、言うまでもないだろう。


………

……


誰かに、『俺が【吸収】し終わるまで、この装備を付けてて下さい』と頼む訳にも行かないので、


何か、装備をつける事ができる物はないか? と隣の部屋に向かう。


隣の部屋は、完全にゴミ屋敷状態だった。


うわ、片付けとけよ。


恐らく、要らないものを適当に置いていったらこうなってたのだろう。



ゴミの中を見て回っていると、そのゴミの中に見覚えのあるものがあった。


しなやかに伸びる腕、その先には五本の指……、何を隠そう、まさに人の腕そのものである。



うわぁあぁあああああ!!!!


全力で部屋の隅に逃げる。


なにあれなにあれ!?


死体?


再びよく見てみると、その腕には木目が広がっていた。


そう、マネキンである。


驚かせんなよ! 悲鳴上げちゃったじゃん!


まぁ、声なんて出ないんだけどね。


引き抜いてみるか。


そう思いトカゲになって引っ張るが、ビクともしなかった。


うん、自分よりもデカイ物を引きずり出せる訳ないじゃん。


引きずり出すのは無理そうだったから、一旦収納空間に入れてから取り出す。


その手の正体は、やはり等身大ののマネキンであった。


しかも『靴やズボンを履かせやすいように』と、腰のところにある二本の棒で足を浮かせてある。


なるほど、これなら一々マネキンを持ち上げなくても装備できるな。


丁度、前世の自分くらいの身長のマネキン。


これを使うか。


………

……


なんという事でしょう。


ゴミの中に埋もれていたマネキンが、立派な兵士に見えるではありませんか。


あまりの見違えっぷりに、あの番組のBGMが頭の中で流れる。


よし、【吸収】するか。


そう言えば、何個も一気に変身できるのか?


まぁ、考えても仕方がないので……試そう



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



トン……トン……


薄暗い部屋に足音が響く。


そこには、フードを深くかぶり顔が見えない不気味な兵士が、ゆっくりと歩いていた。


そう、俺です。



結論を言うと、変身もできたし動くことも出来た。


そして人の姿も維持できるようだ。


ただ…………、めっちゃ動き鈍い。


歩くのがやっと、走るなんて無理だ。


鉄の剣を持ってみたら、重さに耐え切れず腕がヘタンと折れ曲がった。


なかなかイメージ通りには行かないものだ。


重心が安定しないからフラフラする。


まぁ、及第点だろう。


指を動かす、などの動作確認をしていると、



ガチャ、



突然、扉が開いた。


あ、しまった油断していた。


何か言い訳をしなければ、と考えていると、


「誰かいたのか、鍵が掛けてあったから誰もいないと思ったよ」


俺の服装を見て、同じ王国の兵士だと勘違いしたのだろう、普通に話しかけてきた。


「あ、そうだ! 城内に合成魔が出たらしいぞ?

本当かどうか怪しいけどな……。

まぁ、お前も気をつけろよ?

後、装備を新品に変えるのなら報告書にしっかり書いておくんだぞ」


そう、手を上げながら出て行った。


出て行く兵士に向かってお辞儀をする。



すごく気のいいやつだったな。


まぁ、何にせよ難は逃れた。

さっさと窓から逃げよう。


あ、一応戸締りはしておくか。


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