76話 命名:ブラックアリス
「奴隷制度なんて何であるのかな」
そう話すアリスは、目が完全に座っていた。
「あ……そっか、奴隷商人達を皆殺しにちゃえば良いんだよ……」
命名:ブラックアリス
特徴:丁寧語じゃなくなる。目が座る。
思考が危険な方に暴走している。
この状態のアリスと一緒にいるのは怖い。
『アリス! 正気を取り戻せー!』
全力で【念話】を送る。
『……? どうしました?』
そう答えるのは、いつものアリスだった。
何とか、ダークサイドに完全に落ちる事は阻止出来たようだ。
『いや、何でも無い。さて、移動に向いてる魔物に変身するから、一旦離れるぞ』
アリスの了承を得てから装備解除をし、収納空間にある服を着てもらう。
取り敢えず、そこに転がっている盗賊達を【吸収】
【盗賊A、B、Cを吸収しました】
【剣術Lv.3を手に入れました】
【束縛魔法Lv.3を手に入れました】
………
……
…
他は、持っているスキルに吸収された上に、特に変化がなかったので省略。
そう言えば、アリスは【劣化模倣】の恩恵を、どこまで受けてるのだろうか?
見るだけでスキルを手に入れるらしいが……。
【鑑定】
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名前: アリーシア・g)&*,€♪
種族:人間
Lv:26
HP:216〔+0〕
SP:429〔+1〕
ATK:139〔+0〕
MATK:280〔+0〕
DF:96〔+0〕
MDF:257〔+0〕
PS:
《特殊系》
劣化模倣、鑑定Lv.2、真眼Lv.1、
感知Lv.3、収納Lv.2
《意思系》
念話Lv.2
《攻撃系》
対魔力攻撃、剣術Lv.1
《移動系》
立体移動Lv.3、速度強化Lv.2
《耐性系》
隠密Lv.3、物理攻撃耐性Lv.1、
異常状態耐性Lv.1
《強化系》
命中Lv.2、身体強化Lv.2、
物理攻撃強化Lv.1、物理防御強化Lv.1、
聴覚強化Lv.1、視覚強化Lv.1
《操作系》
魔力操作Lv.2
AS:
《魔法系》
回復魔法Lv.1、風魔法Lv.2、束縛魔法Lv.1
《結界系》
防御結界Lv.1
《物理攻撃系》
射出Lv.2
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うん、スキルの数は追いつかれる勢い。
出会った頃は5つだけだったスキルが、今や20を優に超える。
【劣化模倣】、チート過ぎじゃないか?
まぁ、強くなってくれるなら問題無いが。
それよりも、アリスの両親の事もあるし、スタツ遺跡に急ごう。
どれに変身しても、速度が変わらないのは実証済みなので、
『今度は大きな鹿なのですね!』
アリスが目を輝かせてそう言った。
はい、今回は槍兵鹿を選んでみました。
こっちの方が形が馬に近いし、乗りやすいと思ったのだ。
蜘蛛糸とその辺にあった枝などで、鞍を作り固定する。
我ながらなかなかの出来である。
アリスが乗ったのを確認し、スタツ遺跡に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
遺跡についたのはいいが、入り口には、見張りの兵士たちが目を光らせている。
『どうします?』
木の陰から2人揃って覗き込む。
ちなみに、只今装備状態。
『どうもこうも、行くしか無いだろ?』
『でも、見張りが……』
うん、アリスの言いたい事はわかる。
こんな見通しの良いところで、こっそり侵入するのは無理がある。
かと言って、正面から入ろうとしても、子供1人で入れてもらえるとは思えない。
俺が保護者役として行くのは論外だ。
何せ、俺の見た目は仮面をつけた変質者。
入れて貰えないどころか、逮捕されるオチが見える。
アリスは意外と賢いところがあるし、そこまで考えて『どうしますか?』と聞いて来たのだろう。
しかし、
『考えが甘いな。俺には【超光学迷彩】と言うスキルがある。これを使えば、見つかる事はほぼ無い。その上、【暗躍】もあるのだ。見つかるはずが無い!』
アリスは、俺のスキルを全て理解しているわけではないのだ。
まぁ、一気に教えたからな。仕方が無い。
『なるほど! 兄さん天才ですね!』
アリスから、惜しみない賞賛の声が浴びせられる。
『まぁ、そう褒めるな。理解したなら早速決行だ。砂利とか踏んだ時に音が出るかもしれないから、【空中移動】を使うんだぞ?』
『そこまで予想して行動…………見習わなければいけません!』
キラキラとした羨望の眼差しが痛い。
言えない。森狼狩りの時の、アホなミスの経験談とか言えない。
『そ、そんな事より、早く洞窟内に向かうぞ』
アリスの視線に耐えきれなくなり、話を無理矢理変えた。
………
……
…
中には問題無く入れた。
岩で舗装された道。
完全に人工物だ。
『凄い…………遺跡内は真っ暗なイメージがありましたが、こんなにも明るいんですね?! 通路の壁についている松明に、何か秘密があるのでしょうか!?』
アリスが洞窟内をグルグルと見回し、感動の声を上げる。
うん、【暗視】のお陰で見えるのであって、松明の火だけではここまで明るくはならない。
無いのだが…………、本当の事言い辛ぇええ。
でも、スキルのレベルを上げるなら、発動を意識したほうが良いし。
『明るいな。でも、【暗視】ってスキルの効果も少しはあるかもな』
うん、それとなくスキルの事を伝えておいた。