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72話 泊まる場所

最近、毎日更新が達成出来なくて申し訳ないです。



「お待たせしました」


さっきの女性店員が話しかけてきた。


その隣にいたアリスに目を向ける。


「あれ? さっきと服が違う」


アリスが来ている服は、適当に選んだレザーアーマーじゃ無くなっていた。


「はい、妹さんが『もう少し可愛いものが良い』と仰られたので、違うデザインの物を着ていただきました」


さっきの味気のない物とは打って変わって、胸当て、脛当てなどはそのままだが、やや露出を増やした服に、リボンなどを所々に付けてある。


うん、結構可愛い。


「似合ってるんじゃないか?」


素直に褒めておいた。


すると、


「やった! あの兄さんが褒めてくれました!」


「はい! おめでとうございます! 良かったですね!」


何故か、アリスと女性店員が手を繋いで喜んでいた。


俺、褒める時は普通に褒めるんだが……、アリスの中での俺は、一体どんなキャラなのだろうか。


「たしか、これらを3セットですね? 着て帰りますか?」


アリスが元々来ていた服を見て、気を利かせて、そう言ってくれたのだろう。


あまり綺麗な状態じゃなかったからな。


「どうする?」


アリス本人に聞いてみる。


「お願いします。あと、私が着てきた服は処分してもらえませんか?」


そう話すアリスからは、さっきの無邪気な笑顔は消え去っていた。


まぁ、奴隷扱いされていた時の服だ、良い思い出がある訳がない。


「わかりました。ではご用意しますね!」


そう言って、小走りで店の奥に入って行って行った。


女性店員を見送った後、アリスの方を見てみると、明らかに落ち込んでいるのが見て取れた。


「…………」


どうせ一緒にいるのなら、さっきみたいな笑顔で居て欲しいものだ。


「まぁ、なんだ、せっかく会えたんだし、楽しく行こうぜ」


何か励まそうと思い、声をかけるが、


「……はい、そうですね……」


アリスは、無理に笑顔を浮かべ、そう答えるだけだった。


うん、全然ダメだな。


彼女いない歴=年齢、の日影さんには荷が重かったようだ。



………

……



食事、買い物を終えたので、泊まる場所を探す。


と言っても、道具屋の人曰く、この村には宿は一つしかないらしい。


「ここかな?」


紹介された場所と一致する、良い言い方をすれば古き良き宿、悪く言えばボロ宿にたどり着いた。


「ごめんください。一泊したいのですが……」


この世界の常識とか知らないので、取り敢えず扉の前に立ち、声をかける。


「はいはい、ちょっと待っててね〜」


宿屋の中から、人の良さそうなおばさんの声が聞こえてきた。


中から、小走りの音が聞こえてくる。


そして、足音が止まると、扉がガラッと開いた。


「外で待ってないで、中に入ってきて良いんだよ?」


顔を出したのは、声の通り優しそうな、母性の塊見たいな女将さんが出てきた。


宿屋の女将さんに、言われるがままに部屋の中に入る。


「それで、2人部屋で良いんだよね?」


受付に到着するや否や、そんな事を言ってきた。


「いや、別々で」


今日あった少女といきなりご宿泊とか、犯罪臭しかしないから断っておく。


「えー!?兄さん、私と一緒の部屋は嫌なんですか!?」


アリスが腕を引っ張り、抗議してきた。


兄妹設定の事を聞かれる訳にもいかないので、【念話】を送る。


『俺達は、今日会ったばかりの、なんの血縁関係もない、はっきり言って他人だ。それが一緒の部屋で泊まるとか……』


『ドキドキしますか?』


『する訳ないだろ! 俺は憲兵に捕まるような事をしたくない! だから別々の部屋にしようって事』


アリスが、完全にずれた事をを仰ったので、全力で否定しておいた。


『即否定……女としての自信を失いそうです』


アリスが、地面に《の》を書きながらそう言ってくるが、俺が否定するのは仕方がないのだ。


『俺は、11歳の子供を女としてみるような特殊性癖はない』


『む、今のは少しカチンと来ました!』


さっきの拗ねている態度は何処へやら、抗議の視線を向けてくる。


「あの、百面相しながら盛り上がってる所悪いんだけど、妹さん何歳だい?」


ヒートアップし始めた【念話】での喧嘩は、宿屋の女将さんの乱入によって終止符を打たれた。


「11歳だったよな?」


鑑定結果に確かそう書いてあったはず。


「あー、お兄さんが一緒じゃないとダメだね。16歳以下の子供は、保護者同伴じゃないと泊まれないんだよ」


それを聞き、膝から崩れ落ちる。


初めから相部屋は確定していたようだ。


チラリとアリスの方を見ると、右手を上に突き出し、勝利のポーズを決めていた。


早速、案内された部屋に向かった。


「あんたらの部屋は此処ね。夜、朝のご飯付きだから、指定の時間に食堂の方に来てね〜」


そう言って、女将さんは出て行った。


「そう言えば、装備の【吸収】をしていなかったな。はい、ピシッと立ってね」


アリスに直立してもらう。


そして、下着以外の装備品を【吸収】し、変身した。


「あれ?兄さんが消えた?」


全速力で【吸収】し、変身したせいで、俺が服に変身した事に気付いてないようだ。


『消えてないよ。ちゃんとここにいるから』


「もしかして、これが兄さん?」


自分の服もとい、俺を触りそう尋ねてくる。


『その通り。これからは、街の外に行く時は、俺が装備になるからよろしく』


「ええええええーーーー!!」


アリスの絶叫が宿に響いた。


『ちょ、周りに迷惑だから! 念話で話して!』


幸いにも、周りの部屋から壁ドンを食らう事はなかったが、これ以上叫ばれても困るので、周りに迷惑のかからない【念話】で話すように言う。


『ごめんなさい……』


『分かればよろしい。では、本題に入ろう。俺を装備すると、俺の持つスキルを使う事が出来るようになる訳です。そこまではわかりますか?』


人に教えるという事で、(俺の中での)教師風の話し方にしてみる。


『あ、さっきの、試着室でやっていたアレですね!』


『よくわかりましたね! さすがアリスさん!』


『えへへ、兄さん?』


『ん?』


『その変な話し方、直した方がいいと思います』


そう話すアリスの声はマジトーンだった。


『あ、はい、ごめんなさい』


(俺の中での)教師風の話し方は、アリスには不評だった。



………

……



『これで大体わかったかな?』


俺の持つスキルの使い方の説明を、全て終えたので、わかったかどうか確認を取る。


『はい、多過ぎて少し自信ないですけど……』


自信なさ気にそう言うアリス。


『まぁ、それは仕方がない。俺も未だに、全てを使いこなす自信はないし、一つずつ覚えていけば良いさ』


励まし方としては正しくないかもしれないが、出来ないのは自分だけでは無い、と伝えておく。


うん、俺もPSを【スキル操作補助】に頼りっぱなしにしている現状を、何とかしないとな。


ちなみに、アリスに【スキル操作補助】では無く、実際にスキルを使用し練習をさせようとしている理由は、そこにある。


今の内に、【スキル操作補助】なんて楽を覚えてしまうと、それを失った時に、スキルの使い方がわからない、なんて事態に陥るかも知れないしな。


成り行きとは言え、一緒に居るのだ、悪影響は与えなくない。


それに、【スキル操作補助】を使わない練習は、俺もやってて損は無いだろうし、良い機会だ。


『取り敢えず、即戦力になりそうな【暗躍】【探知】【高速移動】を練習するか!』


『はい!』


励ましが効いたのか、ハキハキとした良い返事が返ってきた。


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