表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/90

69話 アリスさん、おつかいに行く

2日間も更新滞らせてしまい、申し訳ありませんでした


「じゃあ、どうして村に?」


話は、村に向かう理由まで戻っていた。


「食事の為だよ」


嘘をついても仕方がないので、正直に答えておく。


「食事ですか? ふふ、ご飯を食べに近くの村に向かうなんて、兄さんは食いしん坊なのですね」


「ちげーよ! 飯を食べるのはお前だ!」


HPの隣に[飢餓]の二文字を携えている少女に向かって、ツッコミ入れた。


「あ、バレてました?」


少し困った声が聞こえてくる。


「俺は【鑑定】を持ってるからな。ちなみに、どれくらいの期間食べてないんだ?」


少し気になり、聞いてみる。



「えっと、4日目ですかね?」


そんな答えが返ってきた。


「ちょ! 結構ピンチじゃねーか! つか、通りでHPの減りが早いわけだよ!」


[飢餓]は悪化すればするほど、ステータスが下がり、HPは減っていく。


さっきから、回復させても回復させても減っていくのは、[飢餓]を拗らせ過ぎているからだろう。


「急ぐから掴まってろ!」


アリスに、しっかりと掴まるように指示し、蜘蛛の糸で固定する。


さらに、【風魔法】で向かい風を打ち消し、【空中移動】を駆使して全力疾走した。



………

……



馬で丸一日かかると言われた距離が、3時間かからずして到着した。


「はぁ、はぁ」


なんか疲れた。


「凄い! 私、馬より早い乗り物初めてです!」


当の本人は、呑気にそんな事を言っていた。


「乗り物言うな!」


そうツッコミを入れる。


「もう村のすぐ近くだから、降りて」


流石に、この姿を見られるのはマズイ。


アリスを降ろして、下級兵士に変身し、フードを深く被る。


「よし、好きなだけ食ってこい」


そう言って、収納空間に入れていた貨幣を持たせる。


「え? 兄さんも一緒に行くのでは?」


キョトンとした顔で、そんな事を言ってきた。


「この姿、貴族の息子なんだよ。だから顔バレすると危険だから、1人で行ってきて」


アース大空洞の入り口で、この姿でいるのが危険なのは経験済みだ。


という事で、俺は近くの森に潜んでいる事にしたのだ。


「…………わかりました」


『私が食事をしている間に逃げるつもりですね!?』と、てっきり駄々を捏ねられると思っていたので、


意外にすんなり了承されて、正直拍子抜けだった。


「あ、うん、いってらっしゃい」


アリスは、そのままお金を握りしめ、街の中に入っていった。



………

……



アリスは、思っていたよりも遥かに早く帰ってきた。


「おかえり、もう食ってきたのか?」


そう尋ねると、


「いいえ? まだ食べてませんよ。そんなに早く食べれる訳ないですよ」


何言ってるんですかー?みたいな感じで言ってくる。


「確かに、店探したりする時間もあるもんなー。無理に決まってるな」


「そうですよー。ふふ、兄さんったら」


アリスがそう微笑みながら小突いてくる。


「…………いやいや、食ってこいって言ったじゃん! なんで食べてねぇんだよ!」


雰囲気に流されそうになったが、俺はおかしな事は言ってない!


食って来いって言ったのに、食べていないアリスがおかしいのだ。


「別に、私は食べてくるとは言ってませんよ?」


突然そんな事を言ってきた。


会話を思い出してみる。



======================


『よし、好きなだけ食ってこい』


『え? 兄さんも一緒に行くのでは?』


『この姿、貴族の息子なんだよ。だから顔バレすると危険だから、1人で行ってきて』


『…………わかりました』


======================



あ、確かに言ってない。


「じゃあ、アリスさんは、いったい何に対して『わかりました』って言ったの?」


「顔バレするとヤバイんですよね?」


「うん」


「だから、私と村の中に行く事はできないんですよね?」


「うん、…………ん? もしかして、それがわかった(・・・・)って事?」


「はい、兄さんが入れない理由がわかりました(・・・・・・)



あー、なるほど、


つまりアリスは、『1人で行って来い』に対しての《了解》の意味で『わかりました』って言ったのではなく、


『俺がどうして一緒に行けないのか』に対しての《理解》の意味で『わかりました』って言ったのだろう。


意思疎通って難しいよね。


「じゃあ、村で何を買ってきたんだ?」


もう、ツッコミを入れる気力も無くなったので、スルーしておいた。


「じゃじゃーん! これです!」


そう言ってアリスが取り出した物は、怪しげな仮面だった。


何故こんな物を買ってきたのか理解できない。


「わかりませんか? 仮面を着ければ、顔は見えません! これで兄さんも村に入れますね!」


「確かに、『顔を見られたらマズイ』と言う問題は解決される! お前天才だな!」


あの一瞬で解決策を模索し、実行に移してしまうアリスに、称賛の声を浴びせる。


「えへへ、そんなに褒められると照れてしまいますよー。さぁ、一緒に村に行きましょう!」


そう言って、手を握って引っ張ってくる。


「行こう行こう…………って、そんな訳ねぇだろ!! こんな変な仮面つけてたら、むしろ目立つじゃねぇか!!」


賢いのかアホなのかわからないアリスに、ツッコミを入れた。


「顔さえ見えなければ入れるって言ってたじゃないですか! 兄さんの嘘つき!」


「顔バレについては、入れない理由の一つとして挙げたが、見えなければ入れるなんて言ってねーよ!」


「兄さんと一緒じゃなければ、行きません!」


やはり、駄々をこね始めた。


「もう知らん! 金はあげるから、1人で頑張れ!」


アリスにも見えるように、抑えていた【暗躍】をオンにする。


これで見えなくなるだろう。


諦めて1人で食べに行くまで、物陰にでも隠れていよう。


そう思い、その場を離れようとすると、


「うぇぇええええん! 行っちゃ嫌だぁああああ!」


腰に抱き着かれ、引き止められる。


「ちょ、なんで見える!?」


見えないはずなのに、アリスに捕まった。


「うぇぇええん!」


アリスは、質問に答える事はせず、泣きじゃくる。


すると、


「おい! こっちの方から女の子の鳴き声が聞こえるぞ!」


森の中にいた人達の声が聞こえてきた。


ちょ、マズイ、このままアリスに泣き続けられると、人が集まってきてしまう!


「ちょ、泣き止んで! 人が集まってきちゃうから!」


「うぇえええええん! 兄さんも一緒に行くのぉおおおおお!」


泣きながらも、要求を忘れないあたり、この子はきっと大物になるだろう。


つか、大泣きして人を呼び寄せる作戦ではないのか!?


「もしかして、嘘泣きか!? テメェ、汚ねぇぞ!」


肩を掴んで、アリスの顔を覗き込む。


あ、ダメだ、これガチ泣きですわ。


「わかった! 一緒に行くから泣き止んでくれ!」


「ぐすっ、ぐすっ、…、本当?」


「ホントホント! だから早く泣き止んでくれ!」


もう諦めた。


「……ぐすっ、わかった」


「ほら、これで顔拭きな?」


そう言って、布を渡す。


「……う、ぐすっ……ありがとうございます」


泣いている時は、丁寧な言葉遣いではなく、子供らしい口調だったなぁ。


なんて考えながら、アリスが泣き止むまで頭を撫でておいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ