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67話 商人たちのお気に入り?



オーガ達も去ったし、奴隷商人達の乗っていた牛車に入る。


もちろん動きやすいように、下級兵士の姿になる。


すると、そこには1人の少女が捕まっていた。


歳は12歳くらい。


見るからに、奴隷商人達の仲間では無いだろう。


手錠されてるし、


仲間じゃ無いとすると、奴隷商人達のお気に入りだったとか?


うわ、趣味が悪いな。


殺すんじゃなくて、ロリコン犯罪者と書いて、王都で晒し者にすればよかったか……。


少し後悔。


一応手錠を壊しておいたが、未だに動く気配が無い。


顔はかなり整っていて、まるで人形みたいだった。


あまりに動かないので心配になってきた。


「おい、大丈夫か?」


声をかけると、コクリと頷いた。


「何か酷いことされなかったか?」


酷い事をされたトラウマかな? と思い、無粋だが聞いてみる。


「何もされてません。私は身分の高いお方に売られるらしいですから……」


子供らしからぬ、丁寧な言葉が帰ってきた。


喋ったし、精巧な人形説は無くなった。


「まぁ、ならよかった。後で仲間の村人達も解放するから、一緒に親御さんのところに帰りな」


そう声をかけて、本来の目的を果たす為に、物色を開始する。


案の定、金品がたくさん残っていた。


よし、これも村人達に持たせよう。


すべて掻き集めて、商人達が作った山に足す。


さっきよりも、さらに大きくなった山を見て思った。


これ、持ち運ぶの無理じゃね?


牛車に戻り、袋を掻き集めた。


それも山に足す。


これで持ち帰れるだろう。


用意も終わったので、村人達を呼びに行く。


牛車を覗き込むと、


「ひっ」


誰かが悲鳴をあげた。


他の村人達も、声は出さないものの、完全に怯えてるのがわかる。


うーん、逃げ出さないだけマシと考えよう。


「牛車の近くに武器や金などが置いてある。それを持って、さっさと自分の村に帰りな」


そう指示するが、未だに動こうとしない。


何故…………あ、入り口に、恐怖の対象である俺がいたらダメじゃん。


そりゃ逃げられんわ。


「牛とかも持って行って構わないから、自力で帰れよー」


そう言って、牛車から離れた。


完全に忘れていたもう一つの牛舎の扉と、村人達の手錠も破壊して、その場から離れた。


すると、予想通り、村人達は金品を袋に詰め、武器を持ち帰って行った。


離れていく村人達を、木の上から見送る。


すると、ふと気が付いた。


あれ? あの娘、居なくね?


そう言えば、さっきからずっと、微弱だが【探知】に反応がある。


その反応は、自分の留まっている木の近くにあった。


…………もしかして!?


真下を見ると、そこにはあの娘がいた。


「マジかー、しかも、こっちガン見してるじゃん」


ほっとく訳にも行かないので、


「何やってるんだ? みんな行っちゃうぞ?」


出来るだけ優しく声をかけた。


すると、


「私、帰るところありません」


衝撃の事実が発覚した。


「どういう事?」


「お父さんとお母さんは、行方不明です」


いきなり重い。


「あの中には?」


「いませんでした」


明らかに落ち込んだ様子で答えてきた。


やばい、地雷踏んだ。


「親戚は?」


「お父さんもお母さんも親戚内では嫌われ者ですので……」


頼れる人は無いらしい。


そんな絶望的な子供の相手なんてした事無いので、どう声をかけたら良いのかわからなかった。


「どうしたら良いのやら……」


思わず口に出た。


しまった。只でさえ、良い状況とは言えない子供の前で、その不安に追い打ちをかけるような事を言ってしまった。


「あ、いや、何でも……」


訂正しようにも、何も良い言葉が思い浮かばなかった。


やばい、このままでは泣く!?


恐る恐る、少女の方を見ると、予想通り泣きそうになっていた。


「あ、手伝ってやるから! 何かしら手伝ってやるから! 泣かないで!」


頭を撫でてやる。


うん、俺子供に弱いなぁ……。


その言葉を聞き、少女の顔がパァっと明るくなった。


泣かないで済んだようだ、と一安心していると、


「じゃ、じゃあ、お兄さんが一緒にいてくれませんか?」


無茶振りが飛んできた。


「うん、無理」


即答する。


即答したせいで、快晴だった顔色が嵐が来たかのように陰っていく。


さっきよりもヤバイ!


俺は魔物だから断ったわけだが、本当の事を言っては、この子を怖がらせてしまう。


どうフォローしたものか……。


そこで、気が付いた。


あれ? 別に怖がられてもよくね?


恐怖の対象と認識してくれれば、一緒に居ようなんて、馬鹿な考えも吹き飛ぶだろう。


そうと決まれば、さっそく実行に移す。


見た目的に、一番キツイのは……、洞窟ムカデ《ケーブセンチピード》だな!


いきなり、少女の眼の前で、その少女の二倍近くあるムカデに変身する。


そして、体を起こして、無数の足をワシャワシャする。


自分でやっていて言うのもなんだが、マジキメェ……。


少女の方を見ると、明らかに顔に恐怖が見える。


お、かなり好感触?


「見ての通り、俺は魔物。だから、一緒に居るなんて、完全に非常食扱いになるんだけど、OK?」


追い討ちをかけるために、出来るだけ悪どい感じを出そうとしたのだが…………、


完全に小悪党である。


まぁ、子供を脅すには充分だろう。


後は、この娘が村人に追いつく為に走り出せば万々歳であるのだが、


「それでも、それでも! 私には頼る人がいないから……」


食い下がってくる。


「え? 話聞いてた? 俺は魔物で、君は人間なんだよ?」


もしかして、状況に理解が追いついてないのでは? そう思い、解説を入れるが……、


「でも、魔物さんは私の命の恩人ですから!」


結局そこに行き着くのかーー。


そう言えば、村人達が凄い勢いで掌返しをしていた事に気がついた。


魔物には世知辛い世の中である。


まぁ良いけど。


つか、そうして頂けた方がありがたいけど!


「別に君達を助けた訳じゃない。あの奴隷商人が気に入らなかっただけだから!」


勘違いを訂正しておく。


この言葉、何回行ったのやら……。


「俺は、君が気に入らないと感じたらすぐに殺すよ? そんな相手と一緒に居たくないでしょ?」


一応脅しを入れるのも忘れない。


「だから「それでも!! それでも私にとっては命の恩人だから!!」


だから一緒にいるべきではない、そう言おうとしたのだが、途中で遮られた。


あー、もう、この子頑固だな!


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