66話 奴隷商人の最期
オーガ達は、俺の要求をすんなり受け入れてくれた。
それならば、こちらも約束を守るのが筋だろう。
早速、オーガ達を全回復させた。
【回復大魔法がLv.3になりました】
【回復魔法大強化がLv.3になりました】
一気に2も上がった。
その様子を見た奴隷商人達が、勝ち目が無いと思い、逃げ出す。
まぁ、そんな事させませんけどね!
銃+【高速射出】の組み合わせで、逃げられないように足を撃ち抜く。
護衛、商人達が悲鳴を上げて倒れた。
這って逃げようとする者もいるので、【強化糸生成】で、できるだけ丈夫な糸を作り、何重にも重ね、商人達の足に巻き付け引きづり、一箇所に集める。
「奴隷ならくれてやる! だから俺達を助けてくれ!」
奴隷商人達はそんな事を言い始めた。
「そうだ! なんだったら、護衛達も持って行って構わない!」
それを聞いた護衛達が、
「は!? テメェふざけんな!」
「裏切るのか!?」
商人に向かって怒鳴る。
「うるせぇ! 俺達はお前達の雇い主様だぞ!? こんな時くらい命を張れ!」
醜い争いが始まった。
「あーもう! お前の要求はなんだ!?」
怒りの矛先がこちらに来た。
ちょ、俺巻き込むなし。
突然要求って言われてもなー。
そこで、ふと思いついた。
そう言えば、後ろの村人達は、金が無いから奴隷にされそうになってるんだろ?
『金、宝石、貴金属、そして武器、すべて渡してくれたら、何もしないと約束しよう』
もちろん、すべて村人に渡すつもり。
なんで武器を回収するのか?
彼奴らを村まで送っていくとか面倒なので、自力で帰って貰おうと思ってる。
だから最低限の装備くらい渡しておかないと、と考えた次第です。
珍しく、気遣いが出来る合成魔さんです。
「わ、わかった!! 本当に何もしないんだな!?」
念入りに聞いてくる。
さすが商人、疑り深いな。
まぁ、本当に何もする気は無いので頷く。
それを見るや否や、彼らは持っている貴金属などを外し、一箇所に山積みにする。
足が糸で固定されているので、動き辛そう。
「これで、良いんだよな!?」
確認を取るように、こちらを向いてそう尋ねてくる。
『ああ、ありがとう』
そう返しておいた。
こんな約束をして良いのか? と思うかもしれない。
だが、それに関しては問題無い。
俺が言ったのは、『貴金属を渡してくれたら、俺は何もしない』だ。
殺って良し!
オーガ達に、目で合図をする。
その合図を見て、オーガ達が動き出した。
そう、俺は何もしない。
しかし、オーガ達が何もしないと入ってない!
「おい! 話が違うじゃ無いか!!」
オーガ達が自分たちに殺意を向けているのに気がついた商人達は、抗議の声を上げる。
『俺は、何もしないと約束したけど、オーガは約束してないよね?』
「契約違反だ!! 」
「助けてくれるって言っただろ!!」
「この嘘吐きが!」
「せめて、この足に巻きついてる糸を外せ!」
口々にそんな事を言ってくる。
『嘘吐き? 俺は何もしないと言った。だから、助けもしないし、糸も外さない。約束は守らないといけないからな』
うん、嘘は言ってない。それに約束も守っている。
その言葉を聞き、商人達の顔が絶望に染まっていった。
………
……
…
商人達と護衛達の断末魔が止んだ。
恐らく、オーガ達がトドメを刺したのだろう。
なんで予想みたいになってるのかって?
人間が棍棒で叩き潰される所とか、グロすぎて直視できたものじゃ無い。
ちなみに、オーガにトドメを刺させた理由は、嗜好的な意味では無く、オーガ達に経験値をあげようという心使いである。
あと、100レベ超えの戦士なんていなかった。多分、奴隷商人達のハッタリだったのだろう。
『終わったか?』
さっき交渉に応じてくれた、リーダーっぽいオーガにに【念話】を送る。
『ああ、それにしても、あんたは変な奴だな』
オーガが失礼なことを言ってきた。
『変? 何処が?』
気になったので、聞き返してみる。
『気を悪くしないでくれ。この弱肉強食の世界で、格下相手に交渉を持ち掛けるなんて、珍しいと思ってな』
『人の獲物を横取りとか、気がひけるんだ』
俺が当然だと思っていた感情は、
『そんな考えを持っている奴、滅多にいないぞ』
この世界では珍しいそうだ。
『あと、魔物でありながら、人間を助けるのも珍しいな。あんた、聖獣の類か?』
聖獣ってあれだよね?
聖なる獣って書くやつだよね?
超正反対。
残念ながら、合成魔という名前の、伝説の化け物です。
『聖獣なんて良いものじゃ無い。ただの魔物だよ。後ろの奴隷達だって助けた訳じゃない。偉そうにしていた商人達への嫌がらせ、ただそれだけだよ』
オーガ達の勘違いは、ちゃんと訂正しておく。
『そうか、あんたみたいなやつが大魔王になったら面白そうだな』
急にそんなことを言ってきた。
『大魔王?』
『ああ、言い伝えにある、魔物達を統べる魔物の王の事だ』
魔物たちを統べる……。
『俺には無理だな。完全に俺のキャパに合ってない』
自分が王なんて出来るとは思えなかった。
『そうかい、名前聞いても良いか? 俺はエルガ』
リーダーのオーガが突然自己紹介してきた。
まぁ、嘘をつく理由も無いので、
『俺は日影だ』
正直に答えた。
『ヒカゲ、憶えておくよ』
オーガ達は、そう言って去って行った。