57話 集団相手とか無理ゲー
王国軍が攻めてきました。
超ピンチです。
【暗躍】と【超光学迷彩】のコンボを決めれば、そうそう見つかる事はないだろうが、
俺の、唯一知っている出入り口から入って来て頂けたので、脱出不可能。
袋の鼠状態である。
まぁ、アース大空洞は広いので、出入り口も一つじゃないし、隠れるところも多いからよっぽど見つかることはないだろう。
なんか、そう考えたら全然大丈夫な気がしてきた。
少し進むと、小さな横穴があった。
小さい道は、集団で通るのには適してないだろうし、こっちに進もう。
そう考え横穴の中に入っていく。
人が屈まないと入れないくらい狭い。
進んでいくと、その先には巨大な空間があった。
道ではなく部屋と言った感じの空間。
すげー、広っ。
下手に広い場所だと、巨大ムカデみたいな、本当の化け物が出てきそうで怖い。
しかも、早速、【探知】に何かかかる。
うわ、しかも移動速度、まぁまぁ早い。
物陰に隠れつつ、反応の主を探す。
その主は空中にいた。
羽を広げると、4メートル近くなるであろう巨大なコウモリ。
でけぇなー。
一応【鑑定】する。
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種族:レッサー・フレードヴァンパイア
危険度:D
Lv:68
HP:2300
SP:1606
ATK:721
MATK:2320
DF:656
MDF:844
PS:吸血、振動感知Lv.5、同族意思疎通、
感知妨害Lv.2、減音Lv.6、暗視Lv.4、
聴覚強化Lv.3、魔力大操作Lv.7、
AS:闇魔法Lv.5、風魔法Lv.7、
嚙みつきLv.3、浮上Lv.5
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洞窟ムカデとは正反対の、魔法戦特化のステータスだな。
しかも、風魔法持ちとか……。
名前に、ヴァンパイアとあるだけあって、【吸血】なんてスキルがあるのか。
ー《吸血》ーーーーーーーーーーーーーーーーー
特定の魔物のみが持つスキル。
あいつのHPとSPを吸い取り、自分のものにする。
血を吸う事が目的では無く、血に含まれるHPとSPを吸い取り吸収するスキルである。
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あ、血を吸って回復するのでは無く、血を媒介に、相手のHPなどを吸い取るスキルなんだな。
まぁ、血とかない俺には関係ないけど……。
それにしても、魔法が得意となると相性が悪いな。
レッサー・フレードヴァンパイアと戦うのはリスクが高い。
…………名前長いし、これからは《劣等蝙蝠》で行こう。
シンプルイズベスト!
で、劣等蝙蝠との戦闘は回避したほうが身のためだろう。
しかし、必須と言っておきながら育ててない【浮上】のスキルレベルが高い。
これは是非とも取り込んでおきたい。
よし! 奇襲を仕掛けて、相手の出方を見よう。
相手は4メートルもある化け物。
俺がここに入って来た時使った横穴は、人間が屈まなければ移動出来ないくらいの狭さ、
つまり、横穴に逃げ込めば問題ない!
そうと決まれば早速奇襲だ。
地上から狙うのは厳しいので、【空中移動】を用いて近付く。
ある程度近づいたら、鉄剣を【射出】しようとして、止めた。
ワンパターンでは、その攻撃が通用しない敵が現れた時に対処することができなくなる。
飛んでいる敵を倒す時は…………、羽を使えなくすればいい!
という事で早速、森毒蛇改め、《猛毒蛇》に変身をする。
そして、2メートルある体を駆使して劣等蝙蝠に絡みついた。
劣等コウモリは、羽の動きを阻害され、降下をし始める。
このまま地面に叩きつけてやろうと思ったら、突然空中で、降下をやめ、空中に停滞した。
くっ、【浮上】の所為だろう。
劣等蝙蝠は、俺を引き剥がそうと、暴れる。
まぁ、暴れても、物理攻撃である限り、俺には関係ないけどね。
しかし、魔法を使われたら厄介なので、弱らせたほうがいいだろう。
という事で、この首元に牙を突き立て、【即死毒】を注入してみる。
確率で発動する《即死》は発動しなかったが、流石【猛毒】の上位互換、劣等蝙蝠はだんだん動きが悪くなっていった。
【鑑定】してみたところ、ぐんぐんHPが減っていくのが見えた。
………
……
…
【レッサー・フレードヴァンパイアを倒しました】
【経験値を獲得しました】
【Lv.80になりました】
【ケーブスパイダーのレベルが上限に達しました】
【ケーブスパイダーがヘル・スパイダーに進化しました】
【レベルアップボーナスで全回復しました】
劣等蝙蝠は、放置していたらそのまま毒で死んでいった。
ケーブスパイダーがヘル・スパイダーに進化したらしい。
地獄蜘蛛って物騒な名前だ。
【検索】してみたところ、
ー《ヘル・スパイダー》ーーーーーーーーーーー
アルディアに存在している全ての蜘蛛型の魔物の上位互換に位置する種類。
戦闘能力が非常に高く、魔法適性も高い。
素早く立体的な動きをし、相手を翻弄する。
レベルが高くなる前に、討伐部隊を編成して絶滅させなければいけない。
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いきなり強化されたな。
外殻は、赤と黒の毒々しい色合いになり、触ってみた感じ、かなり硬そうだ。
体長は人サイズで、そこまで大きくないが素早さ重視なのだろう。
そんな事より、先ずは劣等蝙蝠の【吸収】が先決だ。
また、女神とかの訪問があって【吸収】出来なくなった、とかありえるからな。
【レッサー・フレードヴァンパイアを吸収しますか?】
はい、と答えると、自分の身体が霧状になり、劣等蝙蝠を包み込んだ。
この時間暇なんだよな。
特にやる事もないし、考え事でもするか。
そう言えば、劣等蝙蝠が死ぬ前に変な行動をしてたな。
口を開いで、声を出さずに叫んでいる様に見えた。
コウモリって、人が聞こえない超音波とか出すんだっけ?
…………仲間を呼んでいたとか? いやいや、そんな馬鹿な……。
チラッと上を見上げてみると、沢山の劣等蝙蝠が、こちらに向かって飛んでくるのが見えた。
ちょ、嘘だろ?!
早く逃げないと! でも【吸収】終わってねーし!
そんなことしている間にも、どんどん近づいてくる劣等蝙蝠御一行。
心無しか、こちらを威嚇しながら、一直線に向かってきている気がする。
うん、来てるね。こっちに、
【レッサー・フレードヴァンパイアを吸収しました】
その報告を聞くや否や、横穴目掛けて全力疾走した。