50話 洞窟の入り口にて
結局、SPの大半を【回復魔法】持ってかれてしまったので、SP回復の為に森でもう一泊する羽目に……。
ちゃんとSPが回復した後出発し、到着しました。
アース大空洞!
洞窟だから、全く人影のない秘境的なものを想像していたのだが、
入り口の近くには屋台が並び、かなりの賑やかなご様子。
そう言えば、アース大空洞の表層は、初心者の狩り場に丁度良いって【検索】に書いてあったな。
だから、こんなに賑わっているのか。
屋台は、冒険者達のニーズに合わせてあるのか、『回復薬』や『食料』、『武器』や『防具』などを売ってる店が多い。
それにしても、これどうやって入るんだ……。
無理じゃね?
これだけの人の中、見つからずに行く方が難しい。
進化してくれたおかげで、変身後の姿がどんどん大きくなっていくしな……。
【超光学迷彩】はSP温存の為に、使わない方向で行きたい。
そうだ!
『木を隠すなら森の中』では無いが、人混みの中で一番目立た無いのは人だろう!
早速、下級兵士に変身し、突入する。
………
……
…
驚く程にバレなかった。
アース大空洞の入り口付近までやって来ました。
チョロいもんだ。
そのまま、ごく自然に洞窟内に向かおう……とした所で、入り口を見張っている兵士に止められた。
「ここから先は《冒険者カード》を呈示しないと入る事はできない」
《冒険者カード》? 恐らくギルドに登録すると貰えるのだろうか?
もちろん持ってないけど。
どうしたものか? と考えていると、王国軍の兵士が洞窟から出てくるのが見えた。
今の俺の格好は、王国軍の基本兵装である。
つまり、俺も王国軍って名乗れば入れるんじゃね?
「俺は、王国軍の者だ。それでも入れないのか?」
言ってみた。
「そんなの見ればわかるだろ? 王国軍の兵士なら、特別許可証を提示してくれ」
そりゃそうだ。
さっきだって、俺の格好を見た結果、断られているのだ。
今更、王国軍だって名乗っても入れるわけが無いじゃ無いか。
『特別許可証』なんて持ち合わせて無いし、ひとまず退散するか。
………
……
…
屋台から離れ、森の木にもたれ掛かり、どうやって入ろうか考える。
やっぱり、【超光学迷彩】を使うしか無いかなー。
他に方法も無いし、極力時間をかけないよう、迷彩烏になって速攻でやろう。
早速迷彩烏になろうとした所で、
「お、ヒューイ氏ではありませんか!」
そんな声が近くから聞こえてきた。
人がいる所での変身は避けたいな。
森の中に入ろう。
そう思い、歩き始めると、
「ちょ、無視はないぜ?」
いきなり肩を掴まれた。
「誰だ?」
振り返ると、そこには2人の男がいた。
………
……
…
彼らの話を聞く限り、俺の【吸収】した貴族の坊ちゃんは、ヒューイと言う名前らしい。
そして、こいつらは、例の狩りの友人だったらしい。(20話参照)
【鑑定】をしてみると、レベルは低いのに【命中】のスキルレベルだけ高かった。
しかも、同じ貴族で、親の脛を齧って生きていると言う。
「それにしても、ヒューイ氏も災難でしたな?」
太っている方の貴族の男がそんな事を言ってくる。
「そうだな、俺達の方はパパが大金積んでもみ消してくれたもんな」
ガリガリの方の貴族の男も、汚い笑みを浮かべてそんな事を言ってきた。
名前を呼ぶのが長いので、太った方を貴族A、ガリの方を貴族Bと呼ぼう。
「それにしても、本当に兵役なんてダルいことやっていたんだな」
「労働なんて絶対やりたく無いのに、兵役なんて重労働、ボクだったら死んだほうがマシだって思っちゃうな」
貴族Aも貴族Bも、労働する気は無いようだ。
「大体、労働なんて貧乏人がやることだろ?」
貴族Bが、屋台で働く人を見て嘲笑った。
「そうそう、ボク達貴族は、美味しいものを食べ、好きな事をして、優雅に暮らしていけば良いんだよ」
貴族Aが手に持っていた、串焼きの肉を頬張ってそんな事を言った。
うっぜぇえええええええええ!
働いてない、魔物の俺が言うのも変な話だが、こいつら、ヒューイって奴よりも遥かにウザい。
うん、高レベルの【命中】が手に入ったな。
「まぁ、兵役が終わったら、また一緒に狩りでもしましょうよ」
「次は、君の罪も揉み消してもらえないか、パパに頼んでみる」
そう言い残して、2人は去っていこうとする。
『なぁ、お前ら良い狩場が有るんだけど……行かないか?』
そう言って、2人を引き止めた。
「ほうほう、それはどんな?」
早速食らいついてくる2人。
「行ってからのお楽しみだ。まぁ付いて来いよ?」
2人を森の奥に連れて行った。
………
……
…
ヤバい、人を倒すのに抵抗が無くなっている自分がいる。
まぁ、俺魔物だし、問題無いな。
そう言えば、【命中】が進化して【追尾】になった。
これがなかなか凄い。
発射された攻撃が、標的を追いかけるのだ。
まだレベル2だから、少しの間しか追尾できないのだが、スキルレベルが上がれば、かなり使えるスキルになるだろう。
ホクホクの気持ちで、屋台があるところに戻った。