表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/90

5話 大空へ!

あの後、必死に逃げ、たまたま目に入った適当な部屋に、鍵穴を通り忍び込んだ。


はぁ……はぁ……。


上がった息を整える。


別に走ってないし、呼吸もしないし、そもそも心臓が無いのだから、息が切れるなんて事はあり得ないのだが、まぁ気持ちの問題だろう。


それにしても【感知】とか……、あんなの反則だろ。


対象は視界の中にあるものだから、今は安全だと思うが……。


あの部屋に隠れ続ける選択をして居たとして、あの密室の中で【感知】なんて使われてたら…………、


そう思うと、ゾッとした。


危なかった。


落ち着いてきたので、周りを見てみる。


机の上には、紙束やペンにインク、デッサン人形?みたいな物があり、


机の近くには、服を試しに着せる為の上半身だけのマネキンがある。


他には、かなり大きめのクローゼットなどもあった。


何ここ…


服関係の作業部屋かな?


まぁ良いや。


何か、脱出に使えないものはないか?


部屋の中をふわふわと飛びながら物色してみる。


取り敢えず、紙束やペン、布束を一つずつ【吸収】し、残りは【収納】のスキルで異次元空間にしまう。


これからは、収納空間って呼ぼう。


収納空間がどれだけ広いのか見当もつかないが、まぁ、レベル10だし相当入れれるだろう。

そう信じ、すべて突っ込む。


あ、はさみ見つけた。


道具系は、収納空間行きだな。

使う時が限られてるし。


おお、机の上から道具がなくなった。


いつの間にか、『いつか役に立つんじゃね?』なんて適当な理由で人の物を勝手に盗る事に抵抗がなくなっている自分がいた。


まぁ、魔物の俺には人様のルールなんて関係無いだろ。


さて、あと見てないところは……クローゼットかな?


部屋の隅に置いてある大きなクローゼットに近付き、中身を見る。


うわ、派手なドレスや派手なタキシード、高そうなネックレスなどがあった。


うわ、趣味悪そう。


こう言うのは、なんか好きになれないし、今後、役に立つとも思えないので華麗にスルー。


一応、そこも確認しておくか。


ふわりと上昇し、クローゼットの上を覗き込む。

すると、そこには黒塗りの箱があった。


何だこれ?


黒塗りの箱と言うと、某『開けると煙が出て老人になる箱』を思い出すのは、俺だけじゃ無いはず。


本当にその箱だったら嫌だな。


まぁ、合成魔は老化しないから関係無いけどな。


鍵付いてるし、鍵穴から侵入。


案の定、暗くて何も見えない。


周りをペタペタ触ってみる。

手なんてないだろ? なんで突っ込む人は居ない。この部屋には俺1人しかいないし。


【金貨、銀貨、銅貨、鉄貨を吸収しますか?】


その一文が、頭の中に出てくる。


なんでこんな所にお金が?


クローゼットの上と言う、人に見つかりにくいところに鍵をかけて隠してあるお金…。


……あ、ヘソクリみたいなものか!!


まぁ、ありがたくもらっておこう。


早速【吸収】しようとして、気が付いた。


いや、ちょっと待てよ?

【吸収】すると自分の体の一部になってしまう。


そうなると、貨幣として使えなくね?


よし、1枚ずつ吸収して、後は収納空間へ。

勿論、全部貰いましたとも!


え? それは貰ったって言わない?

いやだなー、俺は、ただ(無許可で)貰っただけですよ。


まぁ、これだけあれば俺の『異世界ブルジョワ生活』も待った無しだ。


うんと贅沢してやろう。


と思ったところで思い出した。

俺、何も食べないし、装備も要らない。

そもそも、人の形をしていないので売ってもらえないんじゃ無いか?



って、ブルジョア生活に思いを馳せている暇は無い。

最重要案件である『この城からの脱出』を完全に忘れていた。


どうしよう?


逃げるなら窓からかな?


そう思い、窓に近づこうとした時、ブワッと強い風が入ってきた。


その風により、自分の体(黒い霧)の一部が霧散した。


え、


急いでステータスを確認してみる。


––––––––––––––––––––––––––––––

HP:6 / 19

––––––––––––––––––––––––––––––


2/3近くも持ってかれた!?


種族の説明欄を思い出してみる。


ー《合成魔》ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

身体が霧散してしまうと、自我を保てなくなり実質的には死ぬ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


危なっ!!


下手してたら死んでいた。


もっと周りに目を向けないと、


どうにかして、実体を持ったまま逃げ出す案を考えよう…


物になって飛び降りる?


いや、できるだけ遠くに行きたい。


それに、

『地面に着地した時、砕けて飛び散り死にました』

とか、無いとは限らない。


今はどこにいる?

城の中でも、結構高い場所にいるだろう。


今、何を持っている?


………………紙…あ、紙飛行機!?


紙飛行機なら、上手くいけば、なかなかの距離を飛ぶことも可能だし、材料である紙も、ついさっき【吸収】したばかりだ。


『折り紙』という技術を有する、日本人として生まれた事に感謝する。


自分の体を紙に変える。


そして、『ヘソ飛行機』の形に折る。


何故、『ヘソ飛行機』かって?


俺の折れる紙飛行機の中で、一番安定して飛ぶ気がするからだ。


え? 『ヘソ飛行機』がわからない?

ネットで調べましょう。


よし、できた。


すごく久しぶりに作ったな…紙飛行機。


昔は、友達とよく、『どちらが遠くまで飛ぶか』競争したものだ。


まさか、自分自身が紙飛行機になるとは思わなかったけど…


よし! このまま大空へ!


……………って、紙飛行機なんだから、誰かが投げないとダメじゃねーか!


自分にツッコミを入れる。


1人でノリツッコミとか、虚しいな。


まぁ、それは置いといて、


どうにかして、紙飛行機を方法を考えなくては……。


一旦、霧になって上に上がり、紙飛行機に変身し外に行けばいいじゃないか。


思い付いたらすぐ行動だ!


我ながら素晴らしい解決方法に、自画自賛をせざるを得ない。


早速、霧になって上に上がり、


紙飛行機に変身……しようとしたが、できなかった。


いや、正確言えば『変身』はできたのだ。


しかし、変身後の姿は『紙飛行機を折る前の状態』……要するに、ただの紙だったのだ。


ヒラリヒラリと床に落ちる。


もしかして、変身した姿は、【吸収】した時の状態で固定なのではないか?

そう考えれば、説明がつく。


しかし、そうなると先に紙飛行機を作り、それを【吸収】しないといけないじゃん。


でも、俺は実体がないから折れない。


早速躓いた。


どうにか代案を……と机に目をやると、デッサン人形が目に入った。


これ使えば折り紙できるんじゃないか?!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ