44話 交換条件
岩を落とすのは攻撃方法としてはかなり優秀。
しかし、変身して落とすのはHP的に無理がある。
それならば、収納空間に入れておけば良いじゃないか!
という事で、比較的大きな岩を掻き集めている最中です。
収納空間に入れておけば、飛ぶ邪魔にもならないし、重さもなくなる。
しかも、沢山持ち込める。
だれだよ戦闘に向かないって言った奴、【検索】この野郎!
岩場の岩も取り尽くしてしまった。
備えあれば憂いなし、もう少し欲しいところではある。
そう考え、空を飛び回り、岩のあるところを探す。
………
……
…
岩みたいな物が見えたので着陸すると、そこは洞穴だった。
あんまり無いけど、少しでも回収しておくか。
そう思い、岩を回収していると、頭の中に声が流れ込んできた。
『助けて……助けてくれ……』
その声はとても弱々しく、助けを求めているようだった。
「これは、【念話】持ち!? 【吸収】するしか無いな。それか、気が向いたら助けよう」
早速洞穴の中に向かう。
そこには、1匹の老いた森狼がいた。
また森狼かよ!! なんて突っ込む人はきっといない。
岩陰から中を覗き見る。
『おい、そこのお前。 そんな所に居らんでサッサとこっちに来んか』
そんな【念話】が届くが、
きっと俺じゃ無いはず!
無視していると、
『おい! そこの合成魔! 聞こえておるだろ? 少し頼みがあるから出てきては貰えないだろうか?』
名指しで呼ばれた。
最近名前呼びされるの多いな。
完全にバレているので渋々出て行く。
『やっと出てきてくれたか』
『まさか、あの【念話】も俺を呼ぶ為に?』
弱り切った声で、助けを求める【念話】聞こえたのを思い出す。
『いかにも、ワシを【探知】に見た事が無い反応があってな。きっとお前さんだろうと思って呼んだんだ』
自分が特に聞いていないところまで、説明口調で答えてくれた。
『それで、頼みとは?』
こちとら戦力増強(岩集め)で忙しいのだ。
話をさっさと終わらせる為に、本題に移す。
『お前さん、ゲイルと決闘をするらしいじゃ無いか?』
『ああ、不本意ながらな。まさか、頼みって「ゲイルを殺さないで欲しい」とか?』
同じ森狼とは言え、そんなふざけた頼みをして来るのか? と聞いてみた所、
『その通りだ』
すんなり肯定された。
『は? 自分を殺そうとしている相手を殺すなとか、無理な頼みじゃ無いか?』
女王の護衛と戦った時は、自分のアテレコの所為で助けてしまったが、今回はそんな甘い事する気は無い。
『もちろん、ただでそんな事をしてもらおうとは思わない。かわりにワシを【吸収】してくれて構わん』
老いた森狼を【鑑定】してみる。
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名前:ギルディア
種族:フォレストウルフ・エンペラー
危険度:C
ステータス
Lv:74
HP:2960
SP:2000
ATK:1021
MATK:1590
DF:432
MDF:516
PS:鑑定Lv.9、探知Lv.1、身体強化大Lv.2、
自動回復Lv.8、消音Lv.3、魔力超操作Lv.2、
同族意思疎通、念話Lv.7
AS:クイックLv.8、嚙みつきLv.8、
風大魔法Lv.3
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後ろにエンペラーが付いただけってまた安直な。
エンペラーってキングより強そうだよな?
【検索】してみても、キングの上位種となっている。
それなのに、何でゲイルよりレベルやステータスが低いんだ?
気になったので聞いてみると、
『それは[老化]のせいだな』
そんな答えが返ってきた。
『お主は【不死身】によって体験する事は無いだろうが、生ける物全てには、生きているからこそ、抗えない事がある』
『それが、老化?』
『その通りだ。[老化]は、レベルが下がり、ステータスが下がっていく一種の異常状態みたいなものだ』
ステータスには表示されない異常状態。
今まで、何の恩恵も感じなかった【不死身】が意外なところで役に立つらしい。
『スキルのレベルは下がらないのか?』
ギルディアはステータスではゲイルに劣るものの、スキルのレベルは遥かに高い。
『スキルは魂に刻まれている記憶、魂は体とは違い、衰える事は無い』
あ、スキルってそんなシステムなのか。
『残念ながらレベルはここまで下がってしまったが、スキルはかなり自信がある。
どうだ? これで手を打ってはくれないか?』
そう言って頭を下げてきた。
『何故、あいつの為にそこまで出来る?』
人の為に自分を犠牲にする、そんな事をする理由が聞きたかった。
『ワシはもう先が短い。それに変わって、あいつはまだまだこれからがある。若い芽を摘み取られる訳にはいかないからな』
家族だから、とかでは無い意外な答えが返ってきた。
『ちなみに、断ったら?』
『ワシは、体は衰えていたとしても、魔法には自信がある。
断るならこの場で蹴散らしてやろう』
完全に脅しだった。
ただ、この脅しを聞いて一つ疑問が生まれた。
『今、問答無用で魔法を使えば俺を倒せるかもしれないのに、どうしてそうしないんだ?』
ここで俺を退治しておけば、ゲイルが危機に晒される事もないだろうに、
『さっきも言った通り、お主も若い芽の一つだからな』
この爺さんに種族は関係無いらしい。
『じゃあ、俺が約束を破ってゲイルを殺してしまうかもしれない』
『それも大丈夫だ。ワシはお前さんを信じているからな』
そう言い切られた。
何言ってんだこの爺さん。
『何でそう言い切れるんだ?』
『お前さんが約束を破った時、わしには何も出来ん。それなら信じるしかあるまい?』
ちょっと言ってる意味がわからなかった。
『で、この条件を呑んでくれるか?』
『ああ、わかった』
そう言い、無抵抗な老狼にトドメを刺し、【吸収】した。
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Lv:74
HP:7499
SP:7499
ATK:0 (749)
MATK:749
DF:0 (749)
MDF:749
PS:鑑定Lv.10、検索、
万物吸収、不死身、収納Lv.10、
対魔力攻撃、水創造、同族意思疎通
空中移動Lv.3、穴堀Lv.6、
物理攻撃無効、異常状態無効、
回復魔法強化Lv.4、速度強化Lv.3、
嗅覚強化Lv.3、命中Lv.9、
(new)探知Lv.1、身体強化大Lv.2、
自動回復Lv.8、魔力超操作Lv.2、
念話Lv.7、暗躍Lv.1
AS:回復魔法Lv.4、浮上Lv.1、超光学迷彩Lv.4、
猛毒Lv.8、射出Lv.7、
土魔法Lv.2、刺突Lv.2、突進Lv.4
(new)クイックLv.9、嚙みつきLv.10
風大魔法Lv.3
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【隠密】が進化して【暗躍】に変わった。
【暗躍】内容は、【消音】【視認妨害大】【隠伏】【探知妨害】【鑑定妨害大】
かなり強力になった気がする。
ちなみに、【探知】は【感知】の上位互換で、視界外も範囲に入るらしい。
ありがたや。
そして、レベルが一定に達した所為で【フォレスト・ポイズンスネーク】が【ヴェノムスネーク】になった。
変身してみたところ、体が2メートル近くなり、太さは人の腕くらいになった。
……何で進化すると大きくなるかな!?
小さいままでよかったんだよ!!
まぁ、愚痴っても仕方がないので諦めた。
アドバイスをいただいたので、早速ヒール→回復魔法に変えてみました。