4話 合成魔さんの逃走劇
コメントありがとうございます。
文章能力が皆無なので、至らない点も多いとございますが、ご指導ご鞭撻の方、よろしくお願いします。
うわ、扉閉めて行きやがった!
これからどうしようか?
さっきアドルフとか言う男が言っていた通り、この部屋の出入り口は正面の扉のみだ。
その扉を閉められた今、
見つかるの覚悟で扉を開けて脱出を図るか、この部屋に隠れ続けるか、の2択しかない。
しかし、この場に留まると言う選択肢を取ったとして、見つかった時に脱出口が一つしかないこの部屋から逃げるのは不可能だろう。
文字通り『袋の鼠』だ。
もし、見つからずに済んでも、鍵を掛けられたら脱出できる保証は無い。
発見はされるが、脱出できる方を選ぶか。
見つかれば即ゲームオーバー、見つからなくても逃げれる保証は無いこの場に留まる方を選ぶか。
あれ? これ脱出1択じゃね?
留まるとか、ハイリスクローリターンだろww
全く、そんな手段とる奴が居たら見てみたいね。
何を迷ってたんだ。
俺たちの心の中には、初めから『脱出』の2文字しか無かったんだ。
………
……
…
ドアの前までやってきました。
部屋の中を捜索中の兵士達に目を向ける。
よし、こっちの方は向いていないな。今がチャンス!!
素早く扉に近寄り、ドアノブに手をかける…………方法がなかった。
しまった!! 実体が無いんだから、物に触れないじゃん!!
何か無いか?
そう思いステータスを見る。
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吸収物:
書物〔世界の記憶〕、鑑定石Lv.10、
斬魔の聖剣、水神の聖杯、
癒しの指輪、アイテムボックスLv.10
金、銀、銅、宝石
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本、石、剣、器、指輪、袋、そして貴金属達。
全部ダメだ!
どれを使ったとしても、このドアノブが回る様子が思い浮かばない。
完全に詰んだ。
結局、俺の取れる選択肢は……
やっぱり、留まるのが一番だよねー!
見つかるリスクを負ってまで、無理に脱出する必要無いだろw
え? さっき『留まるなんてw』って馬鹿にしてた? 何のことやらさっぱりわからないな。
隠れる所を探す為に部屋の奥に戻ろうとした所で、ふとドアの鍵穴に目が行った。
俺、実体ないし通れるんじゃね?
再度、兵士達がドアに背を向けてるのを確認すると、急いで鍵穴に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結論を言おう。
普通に通れた。
どうやら、この身体は壁をすり抜ける事は出来ないが、隙間さえあればどこでも通れるらしい。
ちなみに、開錠スキルの妨害魔法がかけてあったが、
その妨害魔法は、スキルの妨害という効果しかなくあっさり通れた。
まぁ、鍵穴を通れる生物なんてほぼいないからな。
想定外だったのだろう。
………
……
…
合成魔さんの逃走劇は、至って楽なものだった。
廊下を、ふわふわと浮いて移動する。
足音が聞こえたら、近くの物陰に隠れる。
そして去って行くまで待機。
去って行ったら、移動再開。
これを繰り返すだけ。
チョロいな。
危機感を覚えていた自分を馬鹿らしく感じるレベルだ。
このまま退散しよう。
そう思っていたら、また足音が聞こえてきた。
よし、あそこの花瓶の置いてある棚の後ろに隠れるか。
早速、棚の後ろに隠れ、兵士達が通り過ぎるまでやり過ごそうとしたのだが、丁度俺の隠れている場所の真横で足音が止まった。
「もしかしたら、透明化のスキルなどを使って、隠れているかもしれません!!」
女性の1人の兵が、リーダーみたいな男に話す。
「確かにその可能性もあるな……、よし、感知系のスキルを持つ奴は今すぐ発動せよ!」
リーダーみたいな男が、そう指示を出した。
え、感知系のスキルって何!?
ー《感知スキル》ーーーーーーーーーーーーーーーー
索敵に用いられるスキルの総称。
代表的なスキルは【感知】
【感知】の効果範囲は視界に入っているもので、スキルレベルによって精度が変わる。
また、他には【熱感知】や【振動感知】などが存在する。
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あれ? これヤバくね?
「この棚の裏に何かいます! 微弱ですが、何か【感知】に引っかかりました!」
さっきの女性兵士が声を上げた。
あ、馬鹿野郎! 何言っちゃってくれてるんだ!
その言葉を聞いた兵士達が、俺の隠れている棚に近づいて来る。
これは、見つかるのは確実だろう。
ただ、見つかってから行動していては遅い!!
相手が、こちらをあまり意識していない今のうちに全力で逃げる!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なんだったんだ?今のは…」
兵士の1人が疑問口にする。
「黒い…霧?」
兵士達には、突然、黒い霧みたいなものが飛び出し、去っていたようにしか見えなかった。
「やっぱ、お前にもそう見えたか?」
全員、何が起こったのかわからず、すぐに動けないでいた。
「俺たち疲れてるのかな?」
1人は、疲れによる幻覚を疑った。
「いえ、違いますよ」
女性兵士が口を開いた。
さっき【感知】を使用した兵士だ。
「どういう事だ?」
「さっき【鑑定】しましたが、一応鑑定結果が出ました。
残念ながら、私の【鑑定】のレベルは6なので詳細は分かりませんでしたが…」
「わかった事を教えてくれ」
「はい、まず一つ目、相手のレベルは1です。ステータスはHPとSP以外0でした。」
「0?そんなの聞いた事がないぞ?」
生けるものは、ステータスというものを持つ。
しかし、兵士達はステータスの数字が0の生物なんて、見た事も聞いた事もなかった。
「他にわかった事は?」
その事を言及していても仕方が無いと判断したリーダーの男は、説明を続けるように促した。
「信じられない話ですが、種族は合成魔です」
兵士達が騒ついた。
「合成魔って、あの言い伝えとかに出てくる?」
「合成獣の見間違いとかじゃなくて?」
そこにいる全員が、その鑑定結果を疑った。
突然、『居るはずの無い伝説の魔物が実在した』なんて聞かされたって、信じられる訳がない。
ちなみに、合成獣の方のキメラは、研究者が開発しているので、さして珍しいものでもない。
「カミル、それは間違い無いのか?」
リーダーの男が、尋ねた。
「はい、間違いありません」
カミルと言う名の女性兵士はそう断言した。
「わかった、お前を信じよう。『ステータスが特殊だった』って言うのと、『種族が合成魔だった』と、上に伝えておこう」
「はぁ、夢だって切り捨てたら楽なんだろうな」
そう愚痴りながら、兵士達は捜索を再開した。