35話 失敗は成功のもと
3匹の動向を確認する。
2匹はマッドワームを解体中、1匹は空を警戒しています。
よし、行ける!
早速【超光学迷彩】を発動し、森狼達に近付く。
このまま、足音を立てないように……
3匹のいる場所から、約2mの所まで来た。
ここまで来たら後は簡単、下級兵士(銃装備)に変身し奇襲をかける。
何も3匹倒す必要は無い、1匹……3匹中たったの1匹手に入れば良い。
チョロいもんだ。
森狼、恐るるに足らず。
【吸収】したらどのスキルから試そうかな?
【自動回復】の回復速度も気になるし、【魔力操作】も気になるな……魔法が得意になるのかな? そう言えば、【土魔法】試してねーわ。
【身体強化】がどこまで強化されるのか、【クイック】を使えばどれだけ早く移動できるのか試してみたいし。
そして、何より【同族意思疎通】とはどんな感じなのだろうか……、手に入れたら他の森狼に話し掛けてみるのも面白いかもしれない。
犬に話しかけるとか超メルヘン。相手狼だけど。
おっと、手に入った後の事を話すと失敗フラグが立つかもしれないからな、そろそろやめておこう。
さて、狙いは後ろ足…………、こっちからは狙いにくいな、移動するか。
一番近くにいた、マッドワーム解体なうの森狼の背後に回り込む。
どれでもよかったけど、何かしている奴の方が油断してそうだから、そいつを選んだ。
さて、行くぞ! と下級兵士に変身しようとした時、真横に見張り役の森狼が来て居る事に気が付いた。
ッ!?
超ビックリした。
いつの間にここに来たんだ……。
狙った1匹に意識が行きすぎていた所為で、他の森狼への注意が散漫になっていた。
近くに森狼がいるのは心臓に悪いな……、場所を変えよう。
そう思い一歩踏み出した時に、
ジャリッ、
思いっきり足音がした。
その音に反応したのか、見張りの森狼の耳がピクリと動いた。
ちょ、なんで足音でたし!? 【減音】しっかり仕事して!!
見張りの様子に異変を感じた他の森狼達も、解体の手を止め集まってくる。
奇跡的に、俺を囲うように3匹並ぶ。
うん、超綺麗な正三角形。
しかもこの三角形、ちょうど俺1匹が入るくらいの大きさ、つまり下手に動くとぶつかるんだよね。
進化して身体が大きくなったのが仇になった。
く、《ウォールウォーカー》だったら簡単に抜け出せたのに……。
大きくなったメリットを一つも感じられない。
街も入りにくくなったし、絶賛それが原因で今ピンチだし。
森狼達が、この陣形を崩すまで待機だ。
そう言えば、【超光学迷彩】は後どれくらい使えるんだろ?
ステータスを見てみる。
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Lv:32
HP:3299 / 3299
SP: 49 / 3299
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あ、ヤバい! 後6秒
5、4、3、2、1
スッと、身体の色が、壁走者の自の色である灰色に戻っていく。
正面にいる森狼と、バッチリ目があった。
は、ハロー?
「グルルルルッ!!」
俺氏超ピンチ。
急いで迷彩烏に変身して逃亡した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
はぁ、今回は行けると思ったのにな。
最後の最後であんなヘマをするとは思ってもみなかった。
正直あれ以上の作戦は思い付かない。
まぁ、作戦ってほど大層なものでも無いけど……。
まぁ、足音が原因で見つかったんだけどねー。
足音消すのは【減音】に任せっきりだからな……、大体、歩いたら足音が出るのは自然の摂理やん? どうしようもなくね? 足音が出無いとか空でも移動してるのかよww
あれ? 俺できるやん……。
【空中移動】なんてスキル持ってたじゃん!
今回の作戦
変更点:近付く時は【空中移動】
きっと俺はこの時の為に、せっせと森毒蛇を【吸収】し、【立体移動】のレベル上げをしていたのだな!
よし、明日、SPが全快し次第作戦を決行しよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
おはようございます。
日もだいぶ登ってきて、空が明るくなっていく。
今日こそは森狼を手に入れよう。
その前に、ステータスを確認。
うん、しっかりSPも全回復している様子。
早速、迷彩烏で森を飛び回り、沼に森狼が集まっていないか見る。
あ、居た。
つか、森狼達は、こんな時間から見張っているのか…………、疲れ様です。
まぁ、こんな時間とか言ってるけど、今の時間わからないんだよね。
太陽の位置を基準に考えてはいるんだけど……、温室育ちの現代っ子にそんなサバイバルスキルなんて無い!!
まぁ、正直必要に感じないし保留で。
面倒事は後回しにして行くスタイル。
さて、いつも通り餌を手に入れますか!
………
…… 『特に変化もないので割愛』
…
もう、この作業飽きてきた。
森狼達が出てくるまで色々やって待機する。
正直良い加減にしろって言いたくなるよね。何回同じ事やってんねん!
……5回目くらい?
振り返ってみよう。
1回目は間に合わなかった。
2回目は、空で消えた所為で超警戒された。
3回目は、2回目の失敗の所為で空がNGになっていたのに気付き、撤退。
4回目は、最後の最後で足音を立ててバレる。
しょうもない失敗ばかりじゃん!!
自分で見てて、悲しくなってくるな。
俺は《馬鹿》なのか?
いやいや、そんな訳がない! 紙一重で辛うじて《天才》の位置にいるはず。
…………一応言っておくけど、本気で自分の事を《天才》だと思っている訳ではないんだよ?
一人ぼっちで真面目に物事を考えていると、虚しくなって来るんだよね。
これからも、時々発生するので『ああ、こいつ寂しいんだな』と温かい目で見守ってあげて下さい。
……意識を増やすスキルとか無いかな?
流石に、長時間、一切誰ともコミュニケーション取らないのもキツイものがある。
でも、街に行ってトークする訳にはいかない。
正体バレしてるし、もしかしたらギルドに討伐依頼とか入ってるかもしれない。
かと言って魔物と話そうにも、今まであった魔物の中で会話が成立しそうなのは、森狼しかいない。
その森狼とも、あまり良い関係とは言えない。
という事で、『自分が2人いれば良いんじゃね?』と言う結論に至った。
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Q:『自分の意識を増やす』なんてスキルありますか?
A:【多重人格】と言うPSがあります。
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普通にあった。
【多重人格】……どんなスキルなんだ?
多分、人格が増えるスキルっぽいな。
ー《多重人格》ーーーーーーーーーーーーーーー
一つの体に複数の人格を作り出すスキル。
メリットとデメリットがあるので、説明をよく読んでからご使用下さい。
メリット:役割分担をする事によって、魔法などの同時発動を可能にする。
デメリット:完全に別人格なので意見の食い違いで喧嘩をする。
自分の言う事に絶対服従では無い。
たとえスキルで作られた人格でも、しっかりと感情を持っています。
相手の意見も尊重し、うまく関係を築いて行きましょう。
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すごいスキルだな……
つか【検索】で出てくる情報って、なんで最後how-to本みたいになるのか……。
それにしても、メリットは中々のものだった。
デメリットは、普通にもう1人の人として扱って行けば何とかなるだろう。
【多重人格】……欲しいな。
どんな魔物が持ってるんだ?
【検索】してみるか
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《【多重人格】を持つ魔物》
ケルベロス。危険度【A+】
ヒュドラ。危険度【A】
ヤマタノオロチ。危険度【A+】
マンティコア。危険度【B】
など
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他にも何匹かいたけど、正直笑えない強さ。
ハハ、無理ゲー。