29話 よかろう、それならば戦争だ
初めは、『レイアの妨害が入りすぐに吸収できなかったので、偶然近くを通りかかった森狼に獲物を掻っ攫われた』そう思っていた。
しかし、それは違った。
あの後、何度かマッドワーム狩りをしたのだが、全て倒し終わった後、もしくは戦い途中に乱入してきた森狼に奪い取られてしまった。
恐らく、臭いに釣られて集まってきたのではないか? と考えている。
犬って嗅覚が発達しているしな。
まぁ、臭いと言っても、マッドワームの体臭ではないだろう。
なぜなら、マッドワームの体臭に誘われてきたにしては出てくるのが遅いのだ。
体臭を頼りに集まっているのなら、沼から誘導している時に襲ってきてもおかしくない。
しかし、森狼たちが現れるのは、決まって戦いが始まった後なのだ。
血の臭いを追ってきた、と考えるのが妥当だろう。
サメみたいだな。
そして、それは初めの3〜4回の時の話だった。
最近乱入してくる森狼たちは、倒し切る直前に決まって現れる。
何処かに隠れていて、タイミングを見計らっていたとしか思えない。
不自然に思ったので、沼の周りを迷彩烏になって飛んで見たところ、
なんと、森狼たちは3匹1グループとなって、沼の周りを巡回していたのだ。
散々、獲物を横取りされて腹が立っているというのに、実は『俺が倒し切る直前まで近くで待機していました』とか………、
ふざけんな!!
今までは、【風魔法】が危険だと判断して対峙しないようにしていたが、もう我慢の限界である。
次、横取りしようもんなら、あの犬っころ共も、森毒蛇と同じ様にスキルレベ上げに使って全滅に追い込んでやる!
別に、森毒蛇は、全滅させてやろうなんて思ってないなかったけどな。
狩りまくってたら、少し見かけなくなっただけだ。
ふぅ、頭に血が上って騒いでしまった。
さて、今日も沼に向かいますか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
作戦も以前と同じ、蛇で誘い出して沼から引き離し、逃げれなくしてから倒す。
しかし、今回は戦い始める前に、「フォレストウルフ共! もし、今回も邪魔してくるんだったら、お前らの種を根絶やしにしてやるからな!」
森狼たちに忠告しておいた。
人間の言語を理解してるとは思えないけど。
しかし、と言うかやはり、決着が着く直前で奴らは現れた。
「グルルルル」
こちらを威嚇しながら、木の陰から出てくる3匹の森狼。
出てきやがったな。俺、ちゃんと忠告したからな?
ササっとマッドワームのトドメを刺し、森狼と対峙する。
いつもなら、すぐに逃げて行くはずなのに、今日は逃げて行かない俺に少し戸惑いつつも、森狼たちの態度は格下を相手にしている時のそれだった。
ぶっちゃけ完全に舐められている。
まぁ、その気持ちもわからんでもないけど……。
いつも、自分を見るだけで逃げて行く様な奴が、突然歯向かって来ても正直怖くないし、況してや、森狼側は複数居る。
警戒しろという方が無理だろう。
まぁ、舐めてかかって頂けるならありがたい。
近接戦闘で勝てるとは思えないので、銃に持ち変える。
戦いの火蓋は切って落とされた。
「蜂の巣にしてやる!」
素早い相手に銃で戦うのは相性悪いと思うだろう。
しかし、俺の【命中】はレベル9。
それに、俺には他の銃には無い強みがある。
引き金を引きまくる。
マスケット銃などは、本来なら一回一回弾を装填しなければいけないのだが、俺は違う。
わざわざ装填済みの銃を【吸収】したのには、ちゃんと理由があったのだ。
合成魔は、吸収した物に変身する際、【吸収】した時の状態になる。
つまり、装填済みで【吸収】した銃は、【吸収】した時の状態に「戻れ」と思うだけで、装填済みの状態になる。
銃(装填済み)
↓
発砲
↓
元の形(吸収した時の状態に)に戻す=銃(装填済み)
↓
発砲
このサイクルを使う事によって、弾や火薬を込める時間を短縮できる。
それにより、連射を可能としているのだ。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる作戦ですよ。
燃え尽きる火薬や飛んでいく弾丸は、自分の体の一部なので、HPを消費してしまう。
そこは使い勝手の悪いところであるが、2つ合わせても1発でHP1しか消費しないし気にすることはない。
よし! 1匹の後ろ足に命中した。
危険だと判断したのか、2匹の森狼は足を撃たれて動きが悪くなっている1匹を置いて逃げて行った。
今の俺では、森狼の足で逃げられては追付けるわけがない。
足の速さで追いつかないのなら、その足を潰して仕舞えば良い。
ズルズルと足を引きずりながらも、逃げようとしている森狼に歩み寄る。
抵抗できない様に、弾を打ち込むのも忘れない。
「お前には、森狼滅亡の第一歩として、犠牲になってもらおうか」
自分に背を向けて、逃げようとしている森狼の後頭部に銃口を向けた。