27話 ロマンは大切に
森狼と出会ってから3日くらい過ぎた。
ある時は、迷彩烏となって空から探し、またある時は森毒蛇になって【空中移動】を使って探している。
勿論、弱い魔物を!!
一応【空中移動】をメインで使っているので【空中移動】はレベル3まで上がった。
【立体移動】の時も感じたが、やはり【空中移動】などのスキルを使って移動すると地面を移動する時より大分疲れる。
その疲労を軽減する為には、スキルレベルを上げるのが最善だろう。
【光学迷彩】は【超光学迷彩】に進化した。
これでより見つかり辛くなったな。
ただ、せっかく1秒間にSP消費1になったのに、進化したらSP消費10に戻った。
しかも、流石進化後レベル上がるの超遅い。
【隠密】もレベル7になった。
しかし、この3日間、全然森毒蛇に遭遇できてない。
そのせいで、森毒蛇の吸収に頼っていたスキルの上がる速度がかなり悪くなった。
いやー、自分でスキルレベルを上げようとすると凄く大変なことがわかったよ。
まぁ、スキルレベ上げの方針は「そのスキルを持つ魔物を【吸収】しまくる」で確定ですけどね。
罪悪感なんてものはない!!
みんな俺の為にスキルレベル上げておいてくれ! 後で【吸収】しに行ってやるから!
まさに外道である。
………
……
…
何というか、初めは「合成魔弱すぎだろ」とか思ったけど、正直全然そんなことない。
何より、持っているスキルが強過ぎる。
まずは、【物理攻撃無効】
霧状態だけならまだしも、実体化してもなぜか発動するバグ性能。
そして、【万物吸収】
吸収した物に変身できるし、この世に生ける物が持つスキルなら何でも自分のものにできる。
そして何よりレベル上げもソツなくこなす万能スキル。
【異常状態無効】の恩恵も多い。
まず、食事が要らない。
やる事が色々あって忘れていたけど、異世界に来てから何も食べていない。
合成魔は、食事を必要としないから別に気にすることじゃないのだが、今思い返すと、まともな食事にありつけている図が思い浮かばない。
吸収した物を食事と考えても、道具、武具、トカゲ×2、烏、蛇×沢山。
こんな生活耐えられる気がしない。
合成魔以外の魔物になっていたら餓死していたかもな。
後は、睡眠が要らない。
何となく、気分のリフレッシュとして、仮眠という名の日向ぼっこ等をたまにしているが、
この魔物だらけで、いつ襲われるかもわからないのに、まともに睡眠が取れるとも思えない。
熟睡とか不可能。
そんな環境、温室育ちの現代っ子に耐えられるわけがない。
それに、24時間ほぼフルで動けるのもかなりのメリットだろう。
前世で欲しかった。
そしたら、テスト前日の徹夜とか楽だっただろうな。
他にも………
それに………
………
…… 長かったので割愛。
…
結論、合成魔でよかった。
レイアありがとう。
数え間違えで異世界に飛ばしやがったのは許してないけどな。
話を戻して、魔物狩りなのだが、
別に、この3日間、何もせず怠惰な生活を送っていた訳ではない!
ちゃんと、良さ気な魔物の目星は付けてあるのだよ。
その魔物の名は、
ブルルルルルルルルルルルル←ドラムロール
《マッドワーム》
見た目は、『牙を生やして、茶色にした凶悪な芋虫』みたいな感じ。
動きはそこまで早くなく、体も大きく1.7メートル近くあるので攻撃が当てやすい。
また、体表も薄い皮しかないので、ダメージも入りやすいだろう。
一応、土魔法を使うが、
検索さん曰く、「頭が悪いので立ち止まらなければ当たらない」とのこと。
まぁ、ただのでかい芋虫だしな。
仕方が無いだろう。
ただ、こいつを選んだ理由は他にある。
こいつの持つ【穴堀】のスキルが欲しいのだ。
【穴堀】は進化すると【地中移動】というスキルになる。
これは【空中移動】【水中移動】に並ぶ、3大移動系スキルと呼ばれ、この3つのスキルを育て上げれば【空間移動】と言うスキルになり、色々あって、最終的には時間すら飛び越える、【時空移動】というスキルになるらしい!!!
時間移動=タイムマシン!
人間の夢であり浪漫である!!
ソースは俺。
まあ、そこまで育てる根気があるかどうかは置いといて、
兎に角、【地中移動】が欲しいのである。
マッドワームは、名前の通り泥の多い沼地や、湿原などにしか生息しないのだが、この森には、沼が何箇所かあるので居着いているのだ。
そして、今現在この森の沼に来ている俺です。
周りを見渡してみるが、マッドワームの姿は無い。
マッドワームは『普段は泥の中に隠れていて、上を獲物が通過すると捕食する』という生態なのだ。
じゃあ、どうやって捕まえるのか?
再度言おう、あいつらは頭が悪いのである。
一回食べ損ねると、その獲物を追いかける為にノソノソと沼の外に出てくるのだ。
沼の近くに降り立ち、マッドワームの好物と言われている森毒蛇に姿を変える。
芋虫が蛇を好物にするってのもおかしな話だと思う。
不思議な世界だ。
沼をスイスイと泳いでマッドワームにアピールする。
ほらほら、芋虫出てこい! お前らの好物の森毒蛇だぞー
まぁ、食い物にされるのはお前らの方だがな!
1分もしない内に、下から芋虫が口を開けて飛び出てくる。
まぁ、物理攻撃効かないから避ける必要も無いが、一応空中を移動して逃げる。
チラッと後ろを振り返って見ると、勿論馬鹿な芋虫が付いてきていた。
沼からそこそこ離れた所まで誘導したら、下級兵に姿を変える。
そして、久し振りに出番の収納空間から剣を1本取り出して構える。
なぜ銃を使わないのかというと、驚かしてしまうとマッドワームが沼に逃げ帰る可能性があるからだ。
一応沼から離したとは言え、沼に辿り着くまでに倒しきれなければ倒すのは不可能になる、その可能性を少しでも減らしたいのだ。
他にも、体が柔らかいので、点で攻撃するよりも線で攻撃した方が有効だ、と言うのもある。
取り敢えず、迫り来る芋虫を【鑑定】
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種族:マッドワーム
Lv:26
HP:612
SP:164
PS:穴掘Lv.3、魔力操作Lv.2、猛毒耐性Lv.3
AS:土魔法Lv.2
危険度:E
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ステータス超低い。
これなら余裕だな。
剣を持って躍りかかる。
正面は牙を向けてきているので、マッドワームの右側に回りこみ横一線に剣を振る。
ブシャッっと紫色の体液が飛んで来た。
「うわ!きめえ!」
「シューシュー」と、こちらを威嚇してくるマッドワーム。
今持っている剣を、相手の顔めがけて投げつける。
【命中】のスキルを持っているお陰だろうか、マッドワームの目に突き刺さる。
「シューーーーーー!!!」
マッドワームが悲鳴を上げ、地面をのたうち回る。
その間に、【吸収】していた方の鉄剣を出して、マッドワームにに駆け寄る。
勿論、暴れまわっている顔側ではなく、側面に回り込んでいる。
あの気持ち悪い顔に、近寄りたくない。
正直、さっき投げた剣も『捨ててしまうか、洗って再利用するか』で迷っている。
そんなこと考えている間にも、ザクザクと斬り捨てる。
そして、HPもほぼ0になり、動きも弱くなってきた頃を見計らって、マッドワームの上に飛び乗り、その頭を剣で貫いた。
「シュ……シュ……」
マッドワームはそのまま力尽きた。
【マッドワームを倒しました】
【経験値を124獲得しました】
【Lv.32になりました】
【レベルアップボーナスで全回復しました】