17話 女神様のなだめ方
泣き止むまで、かなり時間を要した。
「グスッ…グスッ」
『お前も色々大変だったんだな。
愚痴くらいなら俺が聞いてやるし、辛くなったら来ていいから、ほら泣き止みな?』
「…グスッ…本当…ですか?」
潤んだ目で上目遣いで聞いてくる。
『本当本当、俺が嘘吐いた事あったか?』
「……あったです…。酒場で息をするように吐いてたです」
あ、本当だ。
意外と冷静なんだなこいつ。
『違う違う、俺が「お前に」嘘ついた事あったかって事』
「えっと、…………ないです!」
『だろ? だから信用できるよな?』
「はいです!」
うん、良い返事。
アホな子供を言い包めている、と言う罪悪感で心が痛い。
それに撫で続けている腕がプルプルしてくる。
「えっと、その…」
なんかモジモジし始めた。
『トイレか?』
「違うのです! お前は意外と良い奴です。
私の名前はユーストレイアです。
レイアと呼ぶ事を許可してやるです」
偉そうに少女女神が胸を張る。
態度デカイな、まぁいいか。
『俺は日影だよろしくなレイア』
「あれ? ムトウじゃないんですか?
もしかして偽名だったのです?」
ああ、そう言えば、さっきオベスに向かって「ムトウ」って自己紹介したな。
『いや、ムトウは苗字だ。
下の名前が日影なんだよ』
「なるほど! そういう事だったですか!
えっと、日影…ひーちゃんですね!」
ちょ、ひーちゃんは止めて! と言おうとしたが、
『えへへー、名前で呼び合うのですから友達ですよね??』
眩しいくらいの笑顔である。
これを邪魔するべきじゃないな。
『え、 友達? 何の事?』
「え!?違うのですか!?ううぅ」
友達を否定した事によって、レイアは涙ぐんでしまう。
この反応が面白すぎて、つい冗談を言ってしまうのは仕方がない事だろう。
『冗談だよ、友達だって』
「むー、ひーちゃんは噓つきなのです?」
あ、やばい、ここで信用を失う訳にはいかない。
『「嘘」じゃ無い、「冗談」だよ?』
「? 何か違うのですか?」
『「冗談」とは、友達同士のコミュニケーションの一つだ。
逆に言えば、友達みたいな仲の良い間柄でないと言えないと言ってもいいだろう』
絶対に違うと思うけど、
「友達同士だけ………えへへ、なら許すのです!」
やっぱり、わかってた。
この子が疑わないのはわかってた。
何この可愛い生き物。
『まぁ、これからよろしくな、レイア』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ひーちゃん! また来るです!」
そう言ってレイアは去っていった。
そう言えば、あんなに騒いでいたのに誰も来なかったな。
レイアが結界とか張っていたのだろうか?
多分張ってあったんだよな。
張ってあった、よね?
ポンコツ女神だから心配になってきた。
そう言えば、あいつの名前、ユーストレイア…って言ってたよね?
あれ? なんか聞いた事あるような……。
過去の事を思い出す。
アヴァリアルの主神であり、
通貨の単位にもなっている、
正義と平等の女神
ユーストレイア
え、あいつが!?
嘘だあああああ!