15話 女神様は煽られるのが苦手
自分で言うのもなんだが、
いきなり異世界に連れて来られて魔物になっても、その特性を生かして使えそうなものを色々吸収して、変身して、移動したり情報を集めたりと、中々の状況判断能力と適応能力だと思うんだけど…。
「確かに人の物を盗っても何とも思ってないところは、元人間としてどうなんだ? と感じますけどね」
そこ疑問に思うのか。
生きる為には仕方が無かったんだよ。
「自分が生きる為には、何をしてもいいのですか? 全く困った価値観なのですよ」
はぁ、全くこの人は何を言っているんだい? みたいな対応をしてくる。
なんだこいつ、めっちゃ腹立つわ。
大体、俺がこんな事をしなくてはいけない状況に陥ってるのも、現状を説明してくれない誰かさんが悪いんじゃないか?
「う、」
痛い所を突かれたのだろうか、女神様は顔を真っ赤にして目を逸らした。
誰の事だろうね?一番悪いのは、
チラチラと女神様の方を見ながら言う。
「うるさいですよ!! 説明すればいいんでしょう!?」
女神様は煽りに弱かった。
【煽り耐性】なんてスキルがあったらきっとLv.0だな。
「誰が煽り耐性ゼロなのですか!?
別に怒ってないのですよ!?」
地団駄を踏み、怒ってないと主張してくる。
それを『怒ってる』っていうんじゃありませんかね?
「あーあーうるさいうるさい!
なーにーもーきーこーえーなーいーのですよ!!」
なにもきこえないとか……子供か!?いや、子供だな。
「私のどこが子供なのですか!?」
バッチリ聞こえてるじゃねーか!
「もう、いい加減にしてくださいなのですよ!
お前が話せって言ったから、親切で話してやろうとしているのに、一々話の腰を折るななのですよ!」
大体、初めから説明してくれればいいのに、変に噛み付いてくるそっちが悪いんだろうと思ったが、
これ以上余計な事を言うと怒って帰ってしまうかもしれないからな……、
言わないでおくか……。
「それが賢明な判断なのです。
初めからそうしていればよかったのですよ」
と思ったけど一つ気になった。
ねぇ、さっきから心読んでるの?
さっきから、この女神様は俺が頭の中で思った事に反応してきているのだ。
「【念話】なのですよ。念じる事によって意思を相手に伝える事ができるのです」
なるほど、でも俺、さっきから相手に伝える気はない事までダダ漏れになってる気がするんだけど?
「プププッ、『念話』と『思考』をしっかり切り替える事が出来れば、そんな事ないんですよ? しっかりしてくださいなのです」
バカにしたように、こっち指を差し
もう片方の手を口元に持ってきて、
笑っているチビ女神。
もう何も言うまい。
何故なら、
『こんな感じでいいのか?』
普通にできたからだ。
「な、まぁ出来て当然ですよね!」
明らかに、『う、何で!? ダメ人間そうなのに何で出来てるのですか!?』と顔が言っている、と言うより聞こえてきた。
つか、ダメ人間とは失礼な。
『なるほど、動揺すると相手に伝わっちゃうんですねわかります』
「!?」
(もしかして…聞こえてるのですか!?)
『はい、バッチリ聞こえてますよ』とは答えなかった。
俺は優しいからな。
『大丈夫ですよ。
俺は「念話」と「思考」を使い分けれない女神様でも、ちゃんと敬意を持って接する所存です。
何せ、「動揺すると聞こえる」と言う事を、自らの身を犠牲にして教えて下さってるのですから』
ニヤニヤしながら女神の方を見て言う
まぁ、今は霧状態だから表情なぞ無いのだが、なんとなく伝わったらしい。
「ぶっ殺してやるのです!
この世からお前なんて消し去ってやるのですよ!」
うわ!キレた
本当に女神なのか!? このちびっ子は…。
見た目は子供、頭脳は大人系かな? と思っていたが、中身も見た目相応じゃん。
見た目も頭脳もバッチリお子様じゃないか。
まぁ、薄々気が付いては居たけど……。
『ごめんなさい、謝ります。
貴方様は素晴らしい女神様です。私の現状について説明していただけないでしょうか?』
全力で下手に出る。
機嫌を損ねて、説明して貰えないのはマズい。
「『ごめんなさい美しい女神様。どうかこの薄汚く頭の弱い私めに現状をご教授ください』って言ったら許してやるのですよ」
涙目で腕組みをしながらこちらを見下してくる。
言わせておけば、このちんちくりんのアホ女神が…
「ほらほら、言わないのですか?
言わないと教えてやらないのですよ?」
自分が優位だとわかった途端、
さっきの泣きそうになっていたのとは打って変わって強気な態度でくる。
仕方がない。
相手子供、俺大人、それなら俺が譲歩してやるのが筋ってものだろう。
「大人な対応」を取ってやるか。
『「[ごめんなさい美しい女神様。どうかこの薄汚く頭の弱い私めに現状をご教授ください]って言ったら許してやるのですよ」
ほら言いましたよ、早く教えてください』
うん、超「大人な対応」、我ながら完璧である。
完全に子供の喧嘩とか誰も言わない。
「そこまで言えと入ってないのですよ!!」
案の定、女神様がブチ切れる。
『じゃあ、俺は何を言えばいいんですか?
教えてくださいよ。
お手本お願いします。3、2、1、はい!!』
「ごめんなさい、美しい女神様、どうかこの薄汚く頭の弱い私めに現状をご教授ください」
『仕方がないな、教えてやろう』
勝ち誇ったような笑みを浮かべて、女神を見て答える。
そこには、小学校高学年くらいの子供相手に、全力で口喧嘩をする高校生の図があった。
まぁ、人の形じゃ無いから、実際にはそんな風には見えないのだけれど……。
「うぅ〜、もうやだぁ、おうちかえるぅ」
ついに泣き出してしまった。
ヤバいやりすぎた。
つか、「おうちかえる」とか言っちゃう人初めて見た。
仕方がない、
『ごめんなさい、美しい女神様、どうかこの薄汚く頭の弱い私めに現状をご教授ください』
下級兵装になり、土下座しながら言った。
「グスッ、仕方がないですね。教えてやるのです」
復活早いな。