11話 綺麗な別れ…失敗
『はは、それじゃあ、俺と話してみてどうだった?
ねじ伏せるべきだと思ったか?』
「いや?思ってたほど、怪しいやつで無いのはわかった」
オベスは、ニカッと歯を見せながらそう言った。
『それは良かった』
一応、脅威にならないかどうか、
オベスのステータスを確認しておくか。
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名前: オベス・ツェル
種族:人間
年齢:42
職業:重戦士
ステータス
Lv:189
HP:6960
SP:741
ATK:1700
MATK:180
DF:5681
MDF:2960
PS:物理攻撃強化Lv.7、物理防御超強化Lv.6
身体強化Lv.8、異常状態耐性Lv.9、
衝撃耐性Lv.9、思考Lv.4、
自動超回復Lv.3、斧闘術Lv.8
AS:防御力強化魔法Lv.7、防御結界Lv.6
土魔法Lv.4、挑発Lv.7、威圧Lv.6
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【鑑定】は持ってなさそうで一安心だ。
って……え、強っ!
俺のステータスの何千倍だよ!
いきなり、ステータスの数字の桁がおかしくなった。
それにしても、本当に強いな。
特に防御が超高い。
スキルなども完全に盾職だな。
さすが重戦士。
これは倒せる気がしないな。
弱かったら一気にレベル上げできるかな?と思ったのに…。
つか、人見てレベル上げって……。
魔物の体に毒されてきたのか?
まぁ、やらなきゃやられるんだし、
罪悪感なんて無い方が良いだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、しばらく世間話をした。
色々質問をしたので、大分今の世界情勢がわかった。
街に住んでいれば、耳に入ってきて当然の様な事まで聞いたので、
そんな事も知らないのか?
みたいなことを言われたが、
頭を強く打ったせいで記憶が安定しないのと、しばらく目覚めなかったし、病院暮らしだったから知らない。
などと、適当なことを言ったら納得してくれた。
単純なやつでよかった。
騙してる罪悪感? そんなものは無い!
まぁ、情報も得られたしそろそろ出るか。
『今日はいろいろありがとな。これはお礼だ』
そうやってポケットから出すふりをして、収納空間から金貨を3枚くらい出し、机の上に置いた。
「こっちこそ、今日は楽しかった……って、
お礼を貰う筋合いも無いし、こんなに受け取れるわけ無いだろ」
そう言い金貨を押し返してくる。
『色々教えてくれただろ?
情報料だよ。あと、ついでにそれで
俺の分の会計も済ましておいてくれ』
押し返してきた物を、さらに押し返す。
「いやいや、あんなの世間話みたいなものだろう?」
それを、さらに押し返してきやがった。
何だこいつ、面倒だな。
あげるって言ってるんだから貰っといてくれよ。
再びしまうのも手間なんだよ。
どうしたものか、
どうやってオベスに押し付けてやろう。
『渡すって言った手前、今更撤回するのも、俺のプライドが許さないんだよ。
どうしてもって言うなら……そうだな……、
じゃあ、これからも、たまにで良いから情報回してくれ』
これからの情報料も込みって事にする。
それにプライドが、なんて言えば断り辛いだろ。
「そこまで言うなら…わかったよ。
なんか気になったことがあったら、ウチの店を尋ねてくれ。
俺の知ってる範囲で答えよう」
渋々といった様子で受け取ってくれた。
初めから、素直に受け取っておいてくれれば説得の苦労もなかったものの……。
『そう言えば道具屋を経営してるんだっけ?』
「まぁな、大通りにあるからよ。
道具とか、何か入り用になっても来てくれ。
あんたなら安くしとくよ」
『ありがとう、それじゃ』
そう手を挙げて、出て行こうとしたら、
出口から大量の兵士達が雪崩れ込んできた。
そして、その先頭を歩く男が口を開いた。
「そこの男!動くな!」
何かあったのか?と声がした方を見ると、
男の持つ剣の剣先が、こっちを指していた。
ここにいる男っていうと…
『おいオベス、何か危ない物でも仕入れたのか?』
オベスを疑った。
「いや?心当たり無いな……、
と言うか、真っ先に俺を疑ってきたな…。
悪人顔なの気にしてるんだよ………。
昔迷子見つけた時だって、助けてやろうと思ったら、誘拐だと勘違いされ、憲兵に捕まりそうになったり……」
なんか地雷踏んだっぽいな。
ブツブツと昔の事を話し始めた。
『まあ、落ち込むなよ。プラスに考えようぜ?
優しそうな人が良いことをするより、
悪そうな人が良いことをする方が、インパクトが強いだろ?
人に良い印象を植え付けるのに、打ってつけだと思うぞ?』
落ち込むオベスの肩を叩き慰める。
「ああ、そうだな、
おい、あんたら何か用か?…ってお前…」
オベスが男に向かって言う。
俺は声が出せないから助かるな。
そう言えば、オベスさん最後、何か言いかけた?
まぁいいけど。
「お前には用はない、危ないからすぐにその男から離れろ」
リーダーの男は、オベスに、俺から離れるように促す。
やはり、剣先は俺に向いてたのか。
おそらく、追っ手だろう……
思った以上に、見つかるのが早かったな。
誰かが通報したか?
何となく、厨房の方を見ると、
1人の女の人が目に入った。
あ、あの子、注文取りに来た子かな?
その子は、俺と目が合うと、「ひぃ!」と聞こえて来そうなくらい怯えて、隣の店員の人に隠れた。
もしかして、……その子のステータスを見てみると、
予想通り、【鑑定】持ちだった。
あ、通報したの、あの子かー。
「お前が合成魔だってわかってるんだ。
無駄な抵抗はやめて、投降しろ!」
リーダーが俺に向かって怒鳴る。
その声には、一切の迷いも無い!と言った様子だった。
うわー、バレてらー。
と言うか、何故俺が合成魔だと知ってるんだ?
さて、どう返答しようか? ここで認めると、
ハッタリだった時、自白する事になるよな。
よし、しらばっくれるか。
『何の話だ?合成魔?あの伝承のやつか?
そんなの居るわけないだろ?』
何のことだかわからないな?的な対応を取る。
その反応を見て、ギルドに居た連中や、
王国の兵士たちも「何だ、やっぱり勘違いか」
みたいな雰囲気を醸し出す。
ただ、その中で、リーダーの男だけが、
確信を持った目で見てくる。
「言い逃れが出来ると思うなよ?
カミル!どうだ?」
男がそう言うと後ろから女の兵士が出てきた。
どこかで見たことがある様な…、
あ、さっき【感知】を使って俺の居場所をバラしたやつか!
そう言えば、このリーダーの人も、その時見た人じゃん。
オベスが強化されました。
やり過ぎたと思っている、後悔はしていない。