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10話 筆談の達人?



吸収していた方の、紙とペンを出す。

そしてを返事した。


もちろん、筆談で。


『返事が遅くなってすまない

俺はムトウだ。よろしく』


俺の名前は霧島ムトウ 日影ヒカゲなのだが、

フルネームで言う必要も無いだろう。


魔物の俺にとって、人間は敵だし、

あまり、個人情報を教えるべきではない。


まぁ、そう言いながら右手を差し出す。


「お、おお、よろしく」

オベスが、差し出された右手を掴み、握手を交わした。


返事が返ってくるか、すら怪しかった相手が、

握手を求めてきたのが予想外だったのか、

オベスは、一瞬反応が遅れていた。


俺はコミュ症じゃないやい。


「何で筆談なんだ?」

オベスが疑問を口にする。


まぁ、そう思うのも当然だろう。


『ああ、これか?俺は声が出ないんだ。

少し前に、魔物との戦闘で、喉をやられちまってな』


適当に言い訳を考える。

魔物に襲われて怪我した、って言っておけば何とかなるだろ。


「怪我?もしかして、3ヶ月前のアース大空洞に大遠征に行ったときか?

結構苦戦したって聞いたぜ?」


大遠征?何だそれ?

まぁ、勘違いしてくれるなら願ったり叶ったりだ。


ちなみにアース大空洞は王国の近くにあり、

地龍がいると噂されている巨大洞窟である。


広すぎるため全体図が全くわからない。

そして深部に行くと、Aランクの下位からBランクの上位の魔物がいるらしい。


おお、怖っ。


オベスの勘違いに、便乗して返事する。


『まぁな、俺は気が付いたら魔物に襲われて気を失ってたから…

こんな時間にここにいる理由は

ほら団体では連携が命だろ?…コミュニケーションを取るのが困難となると…な?』


気を失ったせいで、詳細はわからない。

と、先に言い訳をしておいて、

解雇された、とツッコミづらいようにしておく。


深入りされたら、ボロが出るかもだからな。


「なるほど…解雇されたってところか…

ちなみに家族とかは?」


深入りされなくても、早速ピンチになった。


『家族………』


やばい、そこは特に考えてなかった。


返答に困っていると、


「いや、まぁ、変な事聞いて悪かったな。忘れてくれ」


答えにくそうにしている俺を見て、

『地雷を踏んだのでは無いか?』

と勘違いをしたようで、急いで質問を撤回してくれた。


『そう言ってくれると有り難い』


「怪我による解雇なら、金とか貰えなかったのか?」


オベスは暗くなった雰囲気を変えるためか、

話題変更をした。


でも、その話題のチョイスはどうかと思うぞ…。


つか、そんなシステムがあるのか。

王国優しいな。


でも、トップは、あの気持ち悪い小太りのおっさん何だよな。


あのタイプの人間ってケチで、金にがめついイメージあるんだよな。

あくまでイメージだけど。


見た目だけで偏見を持ってゴメン。


心の中で謝っておく。



『多少は貰えたよ』


王国の軍に所属してない俺が、貰えるかどうかなんて、知ってる訳が無いので、取り敢えず貰えたことにしておく。


「へぇ、いくら位貰えたんだ?」


ニヤニヤとしながら聞いてくる。


『口外禁止なんだ。

ほら、それ目的で軍に入るやつが出てくるかもしれないだろ?』


まさに口から出まかせ。

俺も知らないし。


「なるほど、納得だ。

それより、あんた、筆談なのに普通に会話してるんじゃ無いか?って早さだよな」


やっぱしそこ疑問に思うか…。

まぁ、その話については対策を考えてある。


『まぁ、声が出なくなった後は、

これしか会話の方法がなかったからな。

嫌でも早くなるさ』


嘘である。大嘘である。


そんな早く文字が書けるわけが無い。

ましてや、さっき覚えたばかりの文字なのだから、書くのもままならないだろう。


これだけ早く文字を書けてるのは、

紙とペンを、収納空間の中の物ではなく、

【吸収】した物を選んだ事に関係している。



ぶっちゃけた話、俺は文字を書いてはいない。


紙も自分の体、ペンやインクも自分の体なのだ。

『書く振りだけして、

紙に文字の形にインクを染み出させる』

なんて荒技も実現可能


例えるならば、炙り出しみたいな物だろう。


「凄いな、その才能を活かした仕事に就いたらどうだ?」


俺の言葉をあっさり信じ、賞賛の言葉を発するオベスさんの単純っぷりには感服する。


話しかけてきた人が、この人で良かった。


『気が向いたら探してみるよ

それより、オベスは何で俺に話しかけてきたんだ?』


ずっと気になっていた事を尋ねる。


「ああ、それか」


頭から足元まで、値踏みをするようにじーっと見てくる


こっち見んな!

俺は男にガン見されて喜ぶ、などという特殊な趣味は無い!


「お前さん、見た目が凄く怪しいんだよな」


オベスは、散々ガン見してきた挙句、

失礼な事を言ってきやがった。


『そうか?』


そんなに怪しかったかな?

服も王国の兵士の装備だし…、

特に変な行動はしてないと思う。


「考えてもみろよ?

こんな平日の昼間の酒場に、王国の兵士が居る事自体がおかしい。

それに、顔が見えないほど、フードを深く被っているのも変だろ?」


「それにずっと1人、誰とも喋ること無く、

ジーッと座ってるだけ。

注文も水一杯しか頼まず、その水も手を付けない」


『確かに、そう言われると怪しいかも』

そんな気がしてきた。


「だろ?だから俺が様子を見てきてくれって頼まれだんだ」

なるほど、誰かの差し金だったか。

しかし、


『よくそんな頼み受けたな。

オベスって道具屋を経営してる、

言わば商人だろ?

腕に自信でもあるのか?』

イメージ的に、商人が強いとは思えない。


「まぁ、格好も王国の兵装だから、そこまで怪しいやつでは無いとは思っていたし、

腕に関しては、これでも一応、元冒険者だ」


なるほどな。

もし相手が何かしてきても、力でねじ伏せる事ができるだけの力があるのか。

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