三十二ページ目『合同訓練』
これまでのヒーローの鏡:日本で活動する企業が一同に介しみんなのてより血雷への対策が発表された。
「と言う事なので二人とも頑張ってください」
「え!? シスターは参戦しないんですか?」
「当たり前じゃないですか私はここの運営で大変なのよ。戦闘は二人に任せますよ」
ニッコリと答えるシスター。
「あたし達に任せてください」
それにガッツポーズで答えるルルル。
先日の第漆社会議で決まった事をルルルを交えておさらいしている。
憑依種血雷並びに、管理体と名付けられた憑依種を束ねていると思われる存在。に、対抗する為に各社合同訓練を行う事になった。
各地区毎に行われる。会議の時に支給された見た事のないタブレット型端末、これに唯一インストールされているアプリに通知が来るらしい。
それを起動させると対象者を訓練所に転送してくれる。
原理はよくわからないけどどうせ想力の賜物であろう。
内容は転送された先にいる別の会社のマインスイーパーを倒すと言うもの。
その訓練所は本部で使っていた所と同じような所だ。すなわち倒すという事はライフカウンターをゼロにするという事。
通知が来るのは完全にランダムになっている。血雷が現れるのがいつかなんてわからないからそれに近い状況にするための配慮だ。
なので学校に行っている時も、風呂に入っている時もそのタブレット端末は近くにないといけない。
アプリを使いエントリーを済ませこれで合同訓練の準備は整った。後は通知が来るのを待つのみ。
「にしても、うちみたいな規模の小さいとこは不利だよなぁ」
「あたしとキョーちゃんだからダイジョブ!」
「そのアプリで誰が参加しているか確認できますよ」
マジか……すかさずアプリを起動させた。
関東地域の四社の名前が表示されてる。
まだボク達とB×Rしかエントリーが済んでいない。
「セリさんと近田か……」
今の所二人の名前しかない、さしずめセリさんが「正々堂々同じ数で」とか言ったのだろう……ヒヒ、なめられたもんだ。
ピロリンと通知音があった。
「生命の城の登録があったみたい。ん? ……む、む……ん? しこ……キョーちゃんこれなんて読むの?」
読めないんかい。
「どれどれ……!」
「キョーちゃん?」
「……撫詩子」
表示されていたのはボクの幼なじみウタちゃんの名前だった。
「変な名前ーよく読めたね」
当たり前さ、幼なじみだもの……
「なんとまぁ撫さんがいるんですか!? これはちょっと大変かもね」
まだ彼女の名前しか表示されていない、これから増えるのだろうか……
しかし、あの新聞に載っていた写真では、明らかに同年代の見た目ではなかった……本当にボクの知っているウタちゃんなのだろうか?
……どうせこの合同訓練出会えるからその時にでも確かめればいいかな。
それから数日はいつもの様にシスター、ルルルと切磋琢磨し、昼間は学校や受験勉強に勤しんでいた。
学校の帰り道。
いつものようにボク、雪里、ルルルの三人で帰っていた。倉宮はと言うと最近は大学受験の方が忙しいらしい。
ルルルは一人先を歩いている。
「雪里のとこはどんな感じだ?」
「私達も二人よ。私ともう一人新人の子」
「新人かよ。大丈夫なのか?」
「鏡君よりはセンスあるから大丈夫よ」
「ボクよりセンスある奴なんているのか!?」
「鏡君は想力が高いだけだものセンスは正直平凡以下よ。少なくとも私が知っている中では……」
さらっとひどいこと言いやがるな。
「ふ、ふ~ん……そうなんだぁ」
自慢の後輩なんだろうな雪里はにこやか。
見つけ次第速攻でやっちまおう……
「あ、そうだ。雪里、お前ウタちゃんがマインスイーパーだって知ってただろ」
「……いや私もこの通知で初めて知ったの。始めに言ったけど、撫さんと私が入れ替わった段階であの人がどうなったかはわからない……それがまさか死んでいたになってたなんて……隠してたってことじゃないよ」
「……それでもお前がウタちゃんのことを知るきっかけはあっただろ? ほら血浄新聞だっけ? あれの記事になってただろ?」
「私、それ……四コマしか読んでない」
…………使えねー奴だなぁ!
『ピロリロリン♪』
着信だ。しかもボク、雪里、ルルル三人同時に……タブレット端末を取り出す。
『合同訓練の時間になりました』
画面にはそう表示されていた。
「あっ!」
まず姿を消したのはルルルだった。なるほど、そう言う感じで転送されるのね。
「じゃあボクらも行きますか……」
「向こうであったらよろしくね」
「……お手柔らかに頼むぜ」
通知をタップした瞬間雪里はプシュンと消えてしまった。
そしてボクも通知をタップし訓練所へ向かう。
× × ×
転送された先は市街で、人の気配はない。持っていたタブレット端末は消えていた。
耳を澄ますが特別戦っている気配は感じられない。
「あ、イカン……エルグ忘れた」
あれはバスターじゃないから持ち歩いてないといけない。あんなもん持ち歩いてられっか!
とりあえず鎧想を纏いバスターを起動させる。
ビルの上まで跳び辺りを見回してみる。
特別誰の姿も確認できない。
「ルルルでも探すか」
ボクはルルルへ電話をかけてみた。繋がらない、連絡用の携帯、スマホを使ってみたがどちらも繋がらなかった……大丈夫かなぁあいつ……
しばらくビルの上で辺りを観察していると近くを歩く人の姿があった。
フードを被った小柄な子。きっと女の子だろう……しかしここにいるってことはマインスイーパーって事だ。要するに敵! 女だろうがなんだろうが容赦しないぜ。
ボクはなるべく音を立てないようにその女の子の背後に近寄っていく、背丈も低いな。
その小さな背中をバクーで狙い撃つ!
「くらえ……」
バクーを発射、数秒もしないうちに目標を貫くだろう。
女の子に当たる直前に彼女は突然振り向き、一瞬で起動させた巨大なノコギリでバクーを掻き消した。
「そこにいるのは誰!?」
あんなでかいノコギリを振るった人物とは思えないか細い声だった。
見つかってしまっては仕方あるまい……
ボクは物陰から姿を現し近づいていく。
……見たことのない子だ……きっとみんなのて、雪里の相方なんだろう。
手にしたバスターは少女の身長よりも大きかった。ボクよりもでかい……
「不意打ちなんて卑怯です!」
「卑怯ってことはないだろ?」
「マインスイーパーなら正々堂々戦ってください!」
「はいはい……」
「アウッ」
少女は背中を押されたように前につんのめる。誰かが押したというわけじゃなくボクのファンネルバクーによる攻撃だ。
彼女のライフカウンターが少しだけ短くなる……こんなもんかよ。流石、雪里のお気に入り。
「う、後ろから攻撃したな! 本当にずるい人だ。もう許さないぞ僕がお前を倒す!」
ほうほう、僕っ子か。いい属性をお持ちで!
「みんなのて関東方面師団、金居景綱参る!」
少女はノコギリを振り上げ駆け出していた。
「…………ちょっと待て!」
ボクは鍔迫り合いをしながら静止させる。
「待ちませんよ」
「いいから待て。落ち着け、ボクの質問に答えろ」
「答えません!」
ッチ……めんどくさい奴だ。
「もういいこのまま聞け。お前景綱って言ったよな?」
「母が『片倉景綱のような男になれ』と、付けてくれた名です。何か変ですか?」
「まさかお前男か?!」
思い切り水塊をぶつけ引き剥がす。
「なんです! 女の子みたいな風体なのがおかしいとでも言うのですか!!」
フードを取り景綱はその顔を露わにした。
その顔を完全に女の子のそれだ。しかも相当かわいい部類に入るぞ。
少し瞳をウルッとさせボクを睨みつけている。ほっぺたなんかも膨らませちゃってなんともあざとい。
「あ、その顔はまだ疑ってますね!」
そう言うと景綱は履いていたズボンを思い切り下げた。
………………確かにソレは付いていた。紛うことなき男性としてのシンボルがしっかりと……
「あぁもういい! わかった仕舞えよボクが悪かった」
「分かればいいんです」
なんでんなもん見せられなきゃならないんだ……




