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十九ページ目『聞かされた事実』

これまでのヒーローの鏡:行き着いた先には葉中が待ち構えていた! しかし、彼は歓迎ムード! ケーキを出してくる。

これがただの歓迎パーティだなんて甘い話はない、葉中の姿は幻のUMAチュパカブラに変わってしまった……

「オ~イ、植木(きょう)!」

 ボクは漫画を片手に登校中だった。二宮金次郎よろしくで、鞄を背負い漫画を読みながら……そんなボクに、厄介な奴が声をかけてくる。

「なんだよ。倉宮……」

「『なんだよ。倉宮……』じゃないだろ。ワタシのような美少女が、朝から声をかけてきているんだ。気分は良いだろ?」

 ボクの声真似しないでくれ……一体どこに美少女がいると言うのだろう、目の前にいるのは”微妙女びみょうじょ”倉宮あかねだ。

「そうだな。本当に美少女に声をかけられたら気分は良いな」

「なんだって? ビシィッ!」

 倉宮は、そう効果音を口にしながらボクにチョップをかます。

 こう言う所が、ボクは嫌いなんだよ……周りの視線もイタイ。


「で、なんなんだよ。お前がボクに声かけてくるってことはなんかあるんだろ?」

「おっとそうだったそれがだな……昨日学校の帰りに『チュパカブラ』を見たんだ……」

「……」

「待てよ!」

 全く付き合ってられなかった。こう言う類の話はP研の連中としてろと、思う。ボクはすでに辞めているんだから。

「あのなぁ、ここ日本だぞ。チュパカブラは、南米原産のUMAだ。こんな所にいるわけ無いだろ?」

「クックックッ、ところがどっこいワタシは見ました!」

 ウゼ~~……――――


   ×   ×   ×


 なんてことが随分前にあったなぁ……

 チュパカブラとは、南米にて目撃が相次ぐ、割と近代になって姿を表した、未確認生物だ。家畜などの生き血を吸う、吸血系モンスター。

 それが今、立ちはだかっている。

「ふっ……」

 良かったな倉宮、チュパカブラはいたぞ。

 ボクはこっそり携帯を取り出し……ヒヒッ、土産にスマホに収めてやる。

「おっと、携帯で仲間を呼ぼうとしても、無駄ですよ」

 バレた……


「葉中さん……血雷ぢらい、だったんですか……」

「そんな! ありえませんわ! 自分が血雷だって事、認識しているなんて! それに、踏まれているのに自我を保っているのも変ですわ!」

 確かにおかしいよな。雪里せつりの話じゃ、寄生されていることは気づかないし、自我はなくなるとも言っていた。

 でも実際、葉中の奴は自分が、チュパカブラ血雷だという事を知っていたし、自我を保って(普通に話して)いる……どういうことだってばよ……

「……マインスイーパー(君達)は、まだ知らないんだね、わたし達の存在を……」

「何を言ってますの。血雷なんて、セリが死っ……」

「まぁ、冥土の土産に教えてやって上げましょう。……それに、ケーキの感想を的確に頂いたお礼にね」

 不気味に、ニッコリ笑った葉中……

「君達マインスイーパー(人間)は、わたし達の事を血雷と呼んでいるんだっけ? これ意外と気に入っているんだよ。わたし達。……まぁ、それは良いとして、わたし達には大きく分けて二種類居る」

 それは、雪里達の言っている上位種とか、そう言う類のモノなのだろうか?

「一度血雷になると元に戻れない寄生種と、寄生体になったり、血雷に戻ったり、自在にできる憑依種とね」

「…………馬鹿な……」

 はぁ……なるほどな……そりゃ「馬鹿な」ってなるよ。今まで聞かされてきた事と違うからな。

 ボクは経験が浅いからってのもあるけど……マンガや、特撮にはこう言う奴らは出てくることあるからな。割とすんなり受け入れられる。敵軍の幹部的なポジションなのだろう……燃えるね!


「そして、わたしは血雷(ぢらい)を人工的に産み出す研究をしていてね。この力を使えばこの町の人間全てをわたしの手駒に変えられる。そうだね……支配者にでもなるとするよ」

「なん……やて!?」

 おいおい、それはマズイだろ。

「この辺り血雷(わたし)が……葉中(わたし)であった時の名残なのかもな」

 踏まれると、寄生していた者の生前思い入れのあったものに引かれ、血雷の姿を形成すると聞いた。

 同じように、血雷の思考も、少なからず寄生者の思考に引っ張られているのだろう。

 葉中の奴、とんでもない事考えてたな!

「そんな事、させるわけないじゃないですか」

「お嬢ちゃんは、良い舌をしているからなぁ。できれば、わたしの部下にしたい、どうだ? わたしの下に来ないか?」

「何を馬鹿な事言ってるんですか! 私が、血雷の仲間になるなんてありえません!」

 雪里は大月穿だいげっせんを構える。

「…………」

 その姿を一瞥(いちべつ)した葉中は、言葉では言い表せないような、どの動物とも似ても似つかない不気味な鳴き声で吠えた。

 入口のドアが開き、オーク血雷が入ってくるのだった。

「なんちゅう数や!」

「ホントは、お嬢ちゃんにそんな事はしたくないんだが、仕方ないね。部下になってくれないって言うなら、そこの三人と一緒にオーク血雷になってもらうよ」

 なんで、豚の怪物にならにゃいかんのです! もっとカッコイイのならまだいいけどよ……いやいや、そんなこと考えている場合じゃない。

マインスイーパー(君達)にバレてしまっては仕方ないね……と、言うことで、これから町に出向くとしよう。時期尚早ではあるがね」

 葉中は爪の伸びきった手を叩く。すると、更にオーク血雷がまた増えた。その影に隠れるように、葉中はこの部屋から姿を消した。


「葉中さん、待ちなさい!」

 追おうとする雪里にオーク血雷が五~六体が一斉に襲いかかる。

「雪! …………」

 名前を言い切る前に雪里に群がった血雷は一度に霧になった。

「ヒュ~やる~、流石フラットモンスターやでぇ」

「言ってる場合ですか。近田ちかだ、行きますわよ」

「ほな、行きますか」

 雪里とは別方向にセリと近田が散っていく。

 セリのバスターであるチャクラムは、五つ展開されていた。

 アグネアの矢を使っているのだろう、彼女の周りには小爆発が起きまくっている。


 抜け道(ダンジョン)内では、一度も鎧装がいそうを纏わなかった近田、今は鎧装を纏っている。

 彼は結構シャープな鎧装だ。燕尾のようなものが付いた軽装の鎧っぽい、腕には鈍く輝く、ゴツいガントレットを装備していた。

 鎧装はシャープなのだが、あのガントレットがある為か非常に無骨に見える……バスターは起動させていないのか?

「その数、十や二十じゃきかないんじゃないか……」

 心配をよそに、近田はオーク血雷に肉薄していく。

 左のガントレットの肘の部分が淡い青色に光りだした……


『パイルゥ……』


 近田が叫ぶと、光っていた部分から杭のようなものが飛び出し、左腕を振りぬくと同時にその杭は引っ込んだ。

「近田! それを使うならもっと早くに言ってくださる!?」


『イン! パクトォォッ!』


 轟音とともに近田の目の前にいた、血雷が全て掻き消えた。ついでに、壁も吹き飛んでいた。

「なんて、攻撃だ……」

 そうか、あのガントレットが近田のバスターなんだ……


 今の一撃により、半分以上のオーク血雷は処理されていた。

 怪我人である雪里は割とうまく立ち回りあらかた処理し終わったらしい。


しかし、まだ控えがいたようで、同じ数だけオーク血雷が現れた。

「全く……一気に片付けますわよ。近田、二人を連れて離れてなさい」


『排除せよ。排除せよ。排除せよ。の地に禁忌をもたらしたまえ。紅蓮のそら、瘴気のほし。一切合切()ぜにし、絶望を出産め』


 五つのチャクラムはいつの間にか消えていて今は白と黒の二つだけになっていた。それは輝きを放ち、セリの周りを交差するように回転している。

「ほら行くで植君、こないなとこおったら死んでまうで!」

「え? ……はい」

 なにが起こるのか見ていたかったが、近田に手を引かれ施設から飛び出す。

 その瞬間、建物は一瞬にして瓦礫の山となった。


 耳が聞こえない……ずっと、耳鳴りがしている。

 多分、セリがやったであろう施設を一瞬にして瓦礫にした技のせいだろう……

 視界も白んでいてよくわからないが、微かに三人が近くに居ることはわかった……二つの影が離れていく……セリ達は葉中を追って行ったのかな


 あ、駄目……だ――――

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