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九ページ目『その名は魔王』

これまでのヒーローの鏡:鏡の主人公としての生活ストーリーが始まり、月代雪里との同居生活が始まった!

 あれから一週間と二日が経った、今日は月曜日。

 きっと、雪里せつりの願いが神様にでも届いたのかな? 平和そのものだった。

 学校には変な時期に日本史の教師、木下きのしたと言う人が赴任していた、ボクと雪里が同居しているということも何故か広がっていた。

 にしても……

「一週間過ぎても何もないってマジかよ」

 このままだと雪里の骨折治っちまうんじゃないか?

 ボクは校門の前で校舎を眺めながらため息交じりに呟くのだ。

「はぁ、早く戦いてぇよ」

 ファンタジー(バトル)物が大好物なので、戦いたいって言うのもあるけど、一番は自分の力を試したいというところだ。雪里の言うように本当に才能があるのかどうなのか……

 あの日から、毎晩公園で特訓を積んでいる。

 息をするように超高速移動出来る様になれば、かなり強いと思うんだ。

 意識すれば容易に超高速移動はできるようになった。

 移動先の確認をして、移動のイメージをして実行するまでに三十秒近くかかっていたが、今は数秒で出来る様になった。

 しかしそれは、フラットな状態での話だ。実際の戦闘となったらこうもいかないだろう。

 現に雪里に相手をしてもらって戦闘訓練もしているのだが、とっさに超高速移動なんてできやしなかった。

 

 このイメージを再現するという力は想力そうりょくと、言う。

 完全にイメージ出来ていても、個人の想力の”強弱””性質”により、再現できる、できないが決まるらしい。

 このあたりの話を聞くとバスターによる恩恵もそんなに万能ではないみたいだな。

 雪里(いわ)く、想力=血雷ぢらい処理能力と言っていいようだ。

「戦いなんてなくていいのよ。平和が一番」

 後ろから声をかけてきたのは雪里だった。

「そんなことはないぞ! 今もこうしている中、どこかで誰かが泣いているかもしれないだろ」

「何言ってるの、もし、そんなことがあったら、私に連絡があるわよ」

 電話で連絡ってあまりにもアナクロじゃないか? 地震速報みたいにすればいいのに……

「ボクは戦いたくて、ウズウズしてるってのに……」

「なんだ。また妄想の話か?」

「……んだよ。ハルカスかよ」

 ボクの背中をぶっ叩いて現れたのは、友人春日粕(かすがはく)通称「ハルカス」ボクが名付けてやった。『カスカス』にしなかったのはそれはチョット言い過ぎ感があるのと、語感の問題だ。

 そして、頭を殴られる。

「だれがカスだ!」

 この流れが定番だ。

「まぁた『魔王がなんだぁ』とか言ってるんだろ? 幼馴染は大変だねぇ。昔からこうなの?」

「おはよう、春日君。そうなの、困ったもんよ」

 ……おい。

「カガミよぉ。月代つきしろさん困らせんなよ」

 こいつはボクの事を、カガミと呼ぶ。

「困らせてねぇって……」

「全く、魔王なんて居やしねぇんだから、いい加減現実見ろって」

 当然のことながらハルカスは血雷の事なんて知らない。

「あ、待てよ……居るな、魔王……」

「は?」

「今度の中間テストが魔王みたいなもんだろ!」

 そう言い残し先に行ってしまった。

 なんだよ。ちょっと上手い事言いやがって。

 ハルカスとは中学からつるんでいる。

 ボクよりガタイが良くて、勉強もできるなかなかのナイスガイだ。

 憎たらしいことに、出会ってこのかた彼女が途切れたことはない。あぁ、本当に憎たらしい。


 その日の放課後――

 雪里と一緒に帰ることをハルカスに茶化されつつ、帰路に着く。

「ホントに、このまま何も起こらず骨折治るんじゃないだろうな?」

「私としては、それが一番望ましいところよ」

 肩を落とし歩いていると、雪里の携帯に着信が。そして、落雷の音が聞こえてきたのだった。雲一つなく晴れているというにも関わらず。

 この落雷音だが「踏音(とういん)」と呼ばれているらしい。実際に起こっているわけではなく、踏まれた時の音のようだ。これも、血雷と呼ばれる要因の一つ。

「今の近くないか?」

「はい、分かりました。こっちでも踏音が聞こえたので、かなり近いと思います」

 やはり血雷の連絡だったようだな。

「行くよ、きょう君!」

 ボクは待ってました! と、言う感じで、ガッツポーズをして先を行く雪里を追っていく。

 先導していた雪里は自転車に轢かれそうになっていた。危なっかしいなぁ。

 その後、バスターを起動させてあっという間に走り去った……。

「ボクがいるの忘れてるだろ」

 完全に置いてかれてしまった。

 本気でボクに手伝わせる気あるのか?

 踏音の感じからすると近いとは思うんだけどなぁ……

 取り敢えず電話してみるか。ボク等はすでに連絡先を交換済みだ。

『……………………お掛けになっプーーー』

「くそ出やしない」


   ×   ×   ×


 よぉうやく見つけられた。学校指定とは違う真っ黒のセーラー服を身に纏っている。間違いない。

 あの姿は鎧想(がいそう)と呼ばれ。バスターを起動した時に、その者がイメージした格好になるそうだ。鎧想は想力の塊で、ある程度の攻撃から身を守ってくれるのだ。

 ボクはと言うと、学生服で戦わねばならない。変身したいのになぁ……

 物陰に隠れ、路地の先を伺っている……そりゃそうだ。お手伝い(戦闘要員)のボクがいないんだから。

「よ、雪里。久しぶり」

「!! なんだ、鏡君か。もう一体どこ行ってたのよ!」

 えぇっ? キレられるの!? キレたいのはボクだよ。

「まぁ、来てくれたから良いけど」

 ハイと、バスターを手渡される。

 まぁ、文句を言うのは後回しで、今はこの戦いを楽しむかな!

 喜び勇んで路地に飛び出すと、そこには一体の血雷が壁を向いて立っていた。

 巨大な爪の血雷や、スライム血雷の様な大きな変化は見られない、後ろ姿では普通の人の様。

 そんな血雷はボクの存在に気付き、睨みつけてくる。

 その目は血走り、赤黒い血管が稲妻の如く浮き上がっていた。

 ボクと目が合うと、そいつは路地の奥に逃げて行った。

「待てっ! 雪里追うぞ!!」

 無駄に想力は使いたくないので超高速移動は使わない。

 あぁでも悠長な事言ってられないかもなぁ。

 血雷め、住宅の屋根に逃げて行きやがった。

 軽く息を吸い、屋根まで跳ぶイメージをする。難しい事ではない、毎晩練習している。

 地を蹴った。一度、塀を踏み台にして勢いをつけ、さらに跳躍する。

 着地のイメージはできているので無事に屋根の上へ、ついでに血雷を先回りする形だ。

「さて、追っかけっこはここまでだぜ」

 雪里も追いついた様で、ちょうど挟み撃ちの状態だ。

 膠着こうちゃく状態が続くかと思いきや、血雷は雪里に襲いかかった。

「あっこの野郎!」

 雪里はまだ怪我を……

「えっ?」

 屋根の上なんか歩いたことないボクが、わたわたしているうちに血雷は、雪里へ攻撃をしていたのだが、その攻撃は全て空を切った。

 不安定な足場にも関わらず、ステップでも踏むが如く血雷を翻弄していた。

「すごい」

 ……まぁ、戦闘経験は圧倒的に雪里の方が上だもんな……ボクがそこまで心配することないのかも。

 よくよく考えれば、校庭での時は素手でトドメ刺してたっけな……

 あれ? ボクいるのか?

「もう、鏡君ボケっとしてないで!」

「あっ、悪ぃ」

 血雷の奴めやっぱりボクは無視か! 完全に雪里しか見てない。

 後ろから斬りかかるのは気が引けるが……


「なんだよ雪里、全然イケてるじゃん」

 先ほどの戦闘も終わり、ボクらは公園で一息ついていた。

「あれはたまたまよ。そこまで強い種の血雷じゃなかったから」

 血雷に様々な種類が居て、人の形から離れれば離れていくほど強いらしい。なのでこの前のスライム血雷は強かったということになる。

 今回はほとんど変化がなかったので弱い種だったようだ。

「はぁ、にしてもボクの活躍なかったじゃーん」

「トドメを刺せたんだから文句言わないの」

「へいへい」

 とは言ったものの、残念だよなぁ。

 もっとこう、始めはズバッ! と、行きたいよなぁ。


 しかし、こうも早く次のチャンスが巡ってくるとは思ってもみなかった。

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