怪物
その怪物は、何よりも恐ろしい存在だ。
口を開ければ逃れられない呪祖が襲い掛かり、
手足を少しでも動かせばあらゆるモノが薙ぎ倒され、
闇の様な瞳と目が合えばたちまち石になったかの如く動けなくなる。
食料を探していた私は恐ろしい怪物に気づかれ、為す術もなく逃げ帰ってきた。
これは昔の話ではないし、かと言ってフィクションの話と言う訳でもない。
話は変わるが、貴方はメッセージ性に欠けていて何の面白味もなく、比喩も手垢まみれのモノばかりだ……と、問題点を挙げればキリがないこの文章を、不愉快に思いつつも惰性で読んでいたりはしないだろうか。
悪意の込もった感想を送りつけ、無駄になった時間を作者に同じ気持ちになってもらう事で無かった事にしようと考えてはいないだろうか。
そういう方を、私は「怪物」と呼んでいる。そして、この文章も怪物のために書いた様なモノなのだ。
怪物よ、どうか聞いてくれないか。
わざわざ悪意を見せつけなくても、私は常に怯えている。
わざわざ害を為さなくても、私は常に傷ついている。
怪物よ、殴らずとも蹴らずとも、貴方は既に私を恐怖で支配し尽くしている。
だからどうか、何も言わずに立ち去ってくれ。
そしてこれを不安げに読み進めていた貴女へ。
心配しなくても構わない。それよりも、私は貴女が心配である。
……だが、我が儘を言う事を許してくれるならば、つまらない話をもう少しだけ聞いて欲しい。
私には何よりも……怪物よりも恐れる事がある。それは、
私が貴女を支配する怪物になる事だ。




