月と影の陽光
自分を責める声が、耳に取り憑いてくる。いくらキツく耳を塞いでも響いて、胸の内を刺して、抉って、叩いて、ボロボロになるまで傷つけてくる。
何もやる気が出なくて、希望も見出せない。足に、手に上手く力が入らなくて、冷たい床と同化した様に感じる。
……自分は何を伝えようとしていたんだ。
考えられなくなって、意識が急速に溶けていく。自分が自分で無くなってしまう。
……妙な所にいた。
暗い部屋に罵声が響き渡っている。いつもの様に耳を塞ごうとすると、誰かに手を掴まれ、抵抗出来ずに置いてしまった。
耳を塞げずに苦痛を味わっていると、代わりに誰かが自分の耳を塞いだ。
その手は、ただ温かった。
耳に伝わる温度に大人しく浸っていると、罵声は嘘の様に聞こえなくなり、何故か涙を溢していた。
どうやら夢だったらしいが、あれは彼女の手だった、と言う確信があった。証拠なんてないのに、どういう事だろう。それが夢と言うモノなのだろうか、と首をかしげたが、そうしていても答えが出る訳じゃあない。
また彼女を見つけた時に聞いてみよう、と思ってまた眠る事にした。
月と太陽みたいに入れ違ってしまうけど、いつか再び会える事を願って。




