偏食主義者の休戦理由
猫が好き。
見かける度に頬が緩むぐらい、見ていて飽きないから。
犬は嫌い。
何故か遭遇する度に噛みつかれるから。
花が好き。
可憐で美しくて、多種多様の純粋さがあるから。
人工物は嫌い。
大抵は花達を代償に生み出されたモノだから。
努力が好き。
すぐに儚く消えて、絶望になるから。
道徳が嫌い。
血や死体を美しいと思うぐらい、自分が異常だから。
普通の人間が嫌い。
異常なモノを貶して傷つける事しか出来ないくせに、呑気だから。
社会が嫌い。
俺みたいな存在を、受け入れずに拒み続けるから。
地球が嫌い。
どれほど足掻いても、結局滅びの道を歩むから。
当たり前が嫌い。
普通の身体じゃない俺に、普通の事は出来ないから。
時間が嫌い。
俺だけおいてけぼりで進んで行くから。
けれど、君が好き。
守ってあげたくなるぐらい可愛いから。
こんな俺でもちゃんと受け入れてくれたから。
怖がらずに好きだって伝え合えるから。
君が俺に何かを求めるなら俺は張り切って用意するし、君が怒っている時はいつでもサンドバッグになる。君が悲しい時は、何日でも愚痴を聞こう。
でも君は優しいから、そんな事態になる事は滅多にない。
それが心配で、どうにか負担を軽くしてあげたくなる。
恥ずかしいけど……本当に辛くなって、好きだよって言われたくなってしまう。
だから、俺は君を救う。
嫌いな事は何が何でもやらないけど、好きな事は精一杯楽しむ。
……最愛の君へ、全力の愛を込めた救いの詩を。




