表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

反逆炉

作者: 矢光翼

一日一筆複数連題です!

お題「68,3%」「超戦士が怪物と日夜戦う町で、市民な僕は今日も平和のためにおびえてる。【ハッピーSFコメディ】」「必要ないモノ者」

 今現在人間が新たな力に目覚める確率は68,3%。高いように思われるこの数値、実は案外そうとも言えない。

 例えばこの道には数十人の人間が行き交っているがその大半が無能力。店主や学生にちらほらと能力者が窺えるのみ。半分以上が力に目覚めたとしても均一に行き渡ることはありえない。人間は溶液ではないのだから。

 偏りのある世界で数値と現実の齟齬による理不尽に憤慨した者たちは、能力を持たぬ者を疎み、能力者を黒、無能力者を白とし、「必要ないモノ者」と呼び、選別を始めた。

 それは将来起こる人間戦争の火種となるが、それは別の話。

 今着目するべきは、能力を正義と共に掲げ悪を断罪する超戦士たちの陰に隠れて、平和を害さないように怯える一人の市民だ。


「帰ります」

 目の前に現れた不審人物に一礼し踵を返して少女は走り出す。

「うっげぇぇぇぇぇぇぇ不審者だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 大声を荒らげながら。

 どよどよと声が上がり始め視線が少女へ、その奥へ向かう。

 視線の大浴場に浸かっているのは少女曰く不審者。

 長い黒髪から覗かせる紺色の目と耳まで達するかと思われるような口角、そして圧倒的な猫背と周囲に響き渡る「え、あ...いや...」の声。最後を除けば完全に不審者だった。

 事の顛末。確かに能力者である、少女に不審者と叫ばれた男は、ただ道に迷っていただけだった。ちょうどよく目の前に現れた少女に交番の道を聞こうとしたら、叫ばれた。

 違う意味で交番に巡り合うことになった。


「すみませんでした...」

 平謝りが上手いのは先ほどの不審者騒動を引き起こした少女。

 少女は極度のビビりで同時にトラブルメーカーであった。しかもそのトラブルは彼女を中心としたものではなく、あくまで彼女の被害を受けた者が中心となって事が及ぶという大変迷惑なトラブルメーカー。

 そんな彼女が例に漏れずトラブルを引き起こし、引き起こされた能力者はその被害者となった。

 理不尽に連行されたついでに道を聞き(何かがおかしい気がする)、能力者は平謝りする少女の肩に手を置いた。

 あくまで、頭を上げさせようとしたのだが。

「ひえぇぇえああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ痴漢だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!???」

 と言い、どこかへ逃げ去ってしまった。

 さぁ集まる視線の輪。思わず能力者は自首するように交番へ入り事情を説明し人払いをしてもらった。


「...」

 少女の目標は「平和に過ごすこと」。無理だ。

 それだけ嵩増し勘定してもそれが不可能なことは誰からも確定的だろう。

 しかし少女はそうするしかないのだ。極度のビビりは生まれ持ったもの。少女は平和のために怯え続けることしかできないのだ。

「ぼ、僕は...またやってしまった...」

 この「やってしまった」は「誰かを巻き込んでしまった」ではなく「今日もビビってしまった」のことである。基本的に少女がトラブルの引き金になっていることを自覚することはない。はた迷惑だ。

「「必要ないモノ者」、かぁ」

 先日テレビ電波をジャックし、能力者集団から放たれた言葉。「必要ないモノ者」が妙に心に引っかかっていた。のはその一瞬だけで少女の一日はそこで終わった。


 学校に行くとグランドで轟音が鳴り響いている。どうやら能力者が喧嘩をしているらしい。

 治安のあまり悪くない少女の学校ではたまにグランドで決闘が行われることがある。理由は様々。女を取られたとか肩がぶつかったとか。名前が被ってるだとか親が被ってるだとか。もう後半二つは決闘どうこうで片付く問題ではないのだが、実際決闘後の生徒は奇妙な縁で繋がった。まぁ名前が同じなのも親が同じなのも奇妙な縁だが。

 そんなたまに開催される決闘は学校の日程を狂わせる。

 少女は校内の治安が崩れようと自分の治安が守られてればいいし加えて学校の時間もぐちゃぐちゃになるんだからと意気揚々と決闘を応援していた。その姿に平和っぽさは微塵も感じられない。


 だが少女もしくはそれ含める全員の予想を凌駕する事件が起きた。

「そこまでだ悪!!!!」

 突然現れた姿。それは能力を携え悪を詰る超戦士の姿。

 そこまでと言いながらグランドには巨大なクレーターが出来上がり、決闘していた二人(理由は片方が席を違えたから)は遠くまで吹っ飛んでいた。

 理解の及ばぬ数人。何が起こった?とざわつく中で超戦士が説教を始める。

「君らも危ないじゃないか!こんな危ない状況で野次馬など!!!いつ君らに危害が加わるかわからないんだからな!!まぁ私が両成敗したがな!!はっはっはっはっは」

 そういい飛び立つ超戦士。

 ...?

 何人かが吹っ飛んだ二人に向かって走っている。

 少女はぽかーんとしたまま空を見上げていた。


 それがきっかけだろうか。

 68,3%の能力者が組織化し無能力者「必要ないモノ者」を排除し始めたと同時にその陰で31,7%の無能力者が能力者に犯行を始めたのは。

 そしてその頭領がかつて平和を望んで怯え続けた少女であることが、着目の延長線上。

如何でしたか?


 滑り込みになりました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ