異議ありシリーズ① ~魔方陣、チート~
皆様こんばんは。前回では「次は『テンプレのメリット』という題名で書くぞ~」と予告しておりましたフローライトです。
大変申し訳ありませんが、『テンプレのメリット』がまだまとめきれておらず。予告を裏切る形になりますが、先に『異議ありシリーズ』を書きたいと思います。
最初にご説明申し上げますと、この『異議ありシリーズ』は「小説家になろう」様に投稿された小説を読んでいて、非常にもやもやした表現、異議申し立てしたくなった言葉の使い方などを批評するシリーズになっております。当然書かれていることはフローライト個人の意見に過ぎません。そこのところ、どうぞご留意くださいませ。
①「魔方陣」に異議あり
これはかつて、私の活動報告のほうに載せさせていただいたことがあるテーマなのですが、改めまして。
ファンタジー作品で非常に多い設定の一つである「魔法」。詠唱して発動するもの、文字を書くもの、イメージが大切なもの、多くあるのですが……「いやあちょっと待って、たぶんそれは違う」と苦笑したくなるものの中に、「魔方陣」を使用するもの、があります。
はい、どの辺が違うのだと思いますか?
では検証。「魔方陣」を辞書で引いてみましょう。
「魔方陣
方陣②に同じ。」(『広辞苑』第五版「魔方陣」の項より、岩波書店、2004)
うん、「方陣②」ですね。引いてみましょう。
「方陣
①兵士を方形に配列する陣立て。方形の陣。
②縦横いずれの行の数字もそれぞれの和が等しくなるように並べたもの。魔方陣。」(上記「方陣」の項より)
……お判りでしょうか。「魔方陣」とは縦横ななめ、どこの和もアラ不思議同じ数になります~という、あれなのです。魔法を発動させるためのギミックではないのです。
私は「魔方陣」と見るたびに頭の中で数字が踊り、たぶん、作者様の意図なさるところではないだろうなあ……と思います。では何と表現すりゃいいのさ、と言われたら、私としてはこう書いていただきたいです。
「魔法陣」。
……うん。おそらく、「魔方陣」と書かれている方のほとんどは誤変換だと思うのです。私の辞書では「魔法陣」は出てこないのでwikipediaから引用させていただきます。
「魔法陣とは、架空の魔術で床に描く紋様や文字で構成された図あるいは、それによって区切られる空間のこと。術者の魔力を増幅させたり封じたり、魔力の調節弁の働きをする。また種類によっては悪魔を呼び出すなど異界との扉としても作用するが、その場を清める時や邪気を払うときなどにも使われる。
魔法陣は円や星、魔法文字などを組み合わせて書かれており、砂や動物の血で描くこともある。場合によっては要所にロウソクや骨などを補助的に配置する。魔法陣単体で効果を発揮することは少なく、術者の呪文や魔力など鍵となるものがあって初めて作動する。召喚魔術の場合には供物をそなえ、あるいはしかるべき呪文を唱えることなどによって、術を完成させることとなる。」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%94%E6%B3%95%E9%99%A3より引用 2014/08/07)
明らかに、魔法を使うときに「魔方陣」が必要と設定なされているほとんどの方はこちら「魔法陣」をイメージなされているのではないかなーと思うのですが……どうでしょう?
……まあ、読んでいてもやっとするというか、笑いたくなるというか。間違いではないかもしれないけれどでも間違いっぽい、という類の表記でしかないのですが……。
ちなみに、この二つの「マホウジン」。分けるポイントはどこ、といえば、英語で書けば一発でわかります。
魔法陣……magic circle
魔方陣……magic square
どうです、わかりやすいと思いませんか。円か、さもなければ正方形か。英語ではこのように表記を分けているようです。
②「チート」に異議あり
最近目にすることが多くなった言葉の一つに「チート」という言葉があります。なろう様、特に異世界転生・トリップ系やVRMMO系をお読みになった方なら一度は目にしたことがあるであろうこの言葉。
実は私、この言葉が大っ嫌いです。
「チート」あるいは「チーター」などという表現は、元は英語の「cheat」という動詞から来ています。これは「人が(自分の利益のために)~をだます、欺く」あるいは「詐欺師」などの意味を持っており、日本においてはもともと「ゲームの不正改造」を示す意味で使用されていたようです。文字通りの「ずるをする」という意味で、です。
ところが、これがスラングの恐ろしいところだと常々思うのですが、スラングにはほとんど厳密な言葉の定義は存在していません。たいがいは雰囲気によって使用され、拡散する。ゆえに意味は流動する。インターネット環境が整備されたこの現代日本において、ことネットで生まれ、厳密な定義がないままに拡散する言葉はかなりの数に上ると思います。
たとえば今回私が挙げた「チート」。私はこれを適切な日本語に置換することができません。雰囲気だけで使用されたさまざまな用法があるゆえに、漠然と「こんなもの」とは思っていても、別の言葉では説明ができない。元の意味である「(自分の利益のために)ずるをする」、「ゲームの不正改造」で置換して、意味が通る場合はごくごく少数だと思います。
ただ、元の意味を知っているものからすれば、安易に使われるこの言葉には――正直に言えば「虫唾が走り」ます。
たとえば異世界転生もので、赤ん坊のころから記憶がある。そのおかげでいろいろできて有名になれて、ほかの人と比べて恵まれた生活ができている。だから「知識チート」。――「ずるして得た知識」。
おかしく思いませんか? その知識は紛れもなく「あなた」が労力や時間などの対価を払って手に入れたものです。それをただ偶然来世まで持って行けたからってなぜ「ずるをしている」と言われなければならないのです? 非常に、ひっじょーに、もやっとします。
たとえば通常の異世界ファンタジーもの。生まれた子供の魔力が馬鹿みたいに大きかった。だからその子は「チート」。「ずるをした人」。
どこが? と言いたくなるのです。その言葉は「生まれた子が悪い」と言っているのと同じではないのでしょうか? 私には、どこが「チート」なのかわからないのです。――一体、どこが「ずる」なのでしょう?
とまあ、そういったわけで安易に「力が強い」「普通とは違う」から「チート」だ、と言葉を当てはめるのには大反対です。見ている側としましてはあまり愉快ではありません。
以上で『異議ありシリーズ① ~魔方陣、チート~』を終わらせていただきたいと思います。
また、冒頭で申し上げました通り、これらの意見はフローライトただ一人の主観によるものです。普遍的なものではなく、ましてや世間一般の理解でもないことをご理解くださいませ。
またこの意見に対する批評・反論・感想は随時受け付けております。ぜひぜひご意見をお寄せくださいませ。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは、また。