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世界観について その2

 世界観について その2


 先日書いた『世界観について』を読み返して、まず思ったのは。


「やっぱり勢いに任せて書いた文章って、どっか抜けてる」


 ――でした。


 最初に中世ヨーロッパが採用される理由について、「夢が見れるから」と書いた割にはその理由①②③を見てみると、「夢が見れるから」に別の理由が入り込んでいる。

 つまりまあ、それがこの『その2』に書くものになるのですが――「書きやすさ」、ですね。


 ここでは前回「夢が見れるから」に埋もれた「書きやすさ」について論じてみたいと思います。


 では、その「書きやすさ」。ちょいと検証してみましょう。



①数が多いから


 ①といわずにひょっとしたらここですべてを集約できるのかもしれませんが……。

 数が多いのが何だ、何がいい? と尋ねられたら、いいことはこれ。


 「書き手と読み手の間で世界観が共有できること」です。 


 小説、特にファンタジー小説は書き手と読み手の間でほとんど「世界観」の共有が行えません。それはファンタジー――つまり、書き手の「想像」である世界を書く以上、どうしても避けられない問題です。

 前回にもちょろっとお話しましたが、小説は漫画やアニメのように視覚的に大量の情報を与える、というわけにはいきません。書き手が想像する世界を文章だけで読み手に理解・想像してもらわなければならない。けれどあまり微に入り細を穿ち説明していれば、文量が跳ね上がって読み手にとって読みづらい文章になってしまいます。そのさじ加減が小説家にとっては悩みどころなのですが……。


 このジレンマを解消する方法として、一番容易に使え、かつ使われているのは、読み手と書き手で共有できる(・・・・・)要素をもりこむことです。


 いくつかの言葉によって、言葉が内包する意味以上のことを読み手に伝える。たとえば昔ながらある言葉では「エルフ」、「獣人」、「魔物」、最近できた言葉では「VRMMORPG」、「ダンジョン」などなど。一を聞けば十を想像できる、そんな便利な言葉を使えば、説明は比較的簡単です。


 ただし、世界観の共有においては絶対条件が存在します。それは、「その世界観が読み手の知識の中に存在する」ことです。読み手の中にあらかじめそのことに関する情報がなければ共有は成り立たない。ではあらかじめ、どこで情報に触れるかというと――別の小説、あるいはアニメなどの設定に使用されている。これが非常に大きいと思われます。

 前置きが非常に長くなりましたが、ここでようやくタイトルの「数が多いから」につながります。

 つまり、その言葉を使う、その世界観を採用する小説が多ければ多いほど、読み手にとってその世界観はなじみがあるものとなる。書き手にとっては詳細な説明文を書く必要もないから、書きやすい。



 ですが、書いている本人が言うのもなんですが、これはおそらく「中世ヨーロッパ」を選ぶ人が多い理由としては少々弱い。

 というわけで、次の分析に移りたいと思います。



②数が多いから その2


 決してふざけているわけではないですよー。いたって正気、かつ本気です。

 現在、小説家になろう様で掲載されているファンタジー小説のうち、中世ヨーロッパ風の世界を舞台にしている小説はおそらく割合として一位を占めていると思います。それを選ぶ人が多いことには、必ずそれなりのわけがあるものです。


 と、いうわけで。ほかに中世ヨーロッパ風の世界観を採用している小説の数が多いと、なぜ中世ヨーロッパを世界観として採用する人が多くなるのか。私なりの理由づけは、以下の通り。


 皆様、自分が書いた初めての小説というものを覚えておいででしょうか。

 子供のころから空想好きで、自分の世界に浸っていた方もいるでしょう。大人になってから小説の魅力に取りつかれた方もいるでしょう。子供のころは国語の授業が嫌いだったのに、いつのまにか本を読み始めていた、という方もいるでしょう。


 けれどおそらく、皆様の出発点は同じ。

 とある小説を読んでいた時、アニメを見ていた時、ドラマを見ていた時。

 「もしも」を思い浮かべた、その瞬間でしょう。


「もしも、主人公がこうしていたら――」

「もしも、自分だったら――」

「もしも、この人がもっと勇気があったら――」


「こうなっていた、かもしれない(・・・・・・)


 そうやって自分自身の想像が動き出す。それが高じて、いつしか自分の世界を作るようになった。……そんなことはありませんか?


 私はそうでした。初めから丸々一つ、世界を作れる人はすごいと称賛いたします。ですがおそらく、そのような方は少数派なのではないでしょうか。

 二次創作などはまさにその典型と言えるでしょう。そして、二次創作ほどではなくとも、かつて読んだ本の世界を自らの小説の中に流用している、という方も多いのではないのでしょうか。


 つまり読み手が書き手となり、その方の小説を読んだ方が想像を広げ、さらなる書き手となる。そのような連鎖が起きる中、どこかで書かれた「中世ヨーロッパ風」という世界観が連綿と引き継がれ、その数を増やした。結果、その設定を使う小説は膨大に膨れ上がり、①で説明したように「読み手と書き手で共通する世界観」に成長した。


 経過はこんなものだったんじゃないかな、と思います。ちなみにこれ、立証は可能です。やる気ありませんけど。私は日本史なので……。現代文学専攻の方、いらっしゃいましたらご意見くださるとうれしいです。


 と、えーと。いらん宣伝をしましたが、つまり、「中世ヨーロッパ風の世界観」という創作物の、いわゆる「二次創作」が増殖しているのではないか、という意見ですね。まとめてしまえば。

 ……世界観だけ引き継いだものは二次創作とは呼べないのでしょうか? けれどポケモンとかは世界観だけで二次創作と分類されますし……ううむ、ですが、「中世ヨーロッパ風の世界観」の著作権など誰も持っていないわけですから、やはりこれは二次創作「もどき」、あるいは一.五次創作、と言ったところですか。一次がどこにあるのか知りませんが。う~ん、うまくまとまらないですねえ……。



③知識チートに必須


 異世界トリップ、転生、召喚、などなど。いわゆるテンプレと称される分野において、一つの展開として非常に多いのが「知識チート」ものです。

 現代の科学知識、あるいは経済、政治行政、商業などにおける知識を有していることが他者に優越する主人公の利点となる、という展開。その知識を活用して異世界でいろいろやる主人公は結構います。

 しかし、この場合において必須なのは「主人公の知識がその世界より進んでいる」という世界観設定です。なぜなら設定を現代で知識チートを書こうとしたら、これは現代において知られていない新たなる真理を発見する必要があるからです。書きづらい以前の問題で、それはちょっと無理すぎる。


 つまるところ世界観は近代以前が望ましい。古代を選ぶ人が少ないのは疑問なのですが、それは①②で説明される理由なのでしょうか……?


 まあ、ええと。現代の豆知識を応用する程度で息抜き程度に書く知識チートものなら、世界観は中世あたりが無難。さらにいえばテンプレにはめるともっと書きやすい。ということで、中世ヨーロッパ風世界を選択する人が多いのではないだろうか、と思うわけです。





 第2話『世界観について その2』はここまでです。それにしても、「書きやすいから」というざっくりしすぎた理由は説明が難しい……。おまけに「そんなことはない」という反論も多い気がします。もう少し自分の中で煮詰められそうです。


 ちなみに書いている最中にたぶんのテーマが決定しました。今回の「書きやすいから」を逆さから見てみた、「テンプレ」が好まれる理由を分解してみたいと思います。



 ご指摘、ご感想、いつでもお待ちしております。

 最後まで読んでくださってありがとうございました。

 



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