世界観について
世界観について
「はて、なぜ中世ヨーロッパなのだろうな?」
一度は誰もが首をかしげることでしょう。私も首をかしげて、考えて、多分こうだろうと思った理由は、ズバリ。
「夢が見れるから」。です。
まあ、その一言をいろいろと分解してみれば、以下の通りになります。
①普通に武器やドレスなどの小道具が出せる時代であること
自分で書いているからこそつくづく思いますが、現代――もっというならば現代日本――の設定で剣と魔法を出してバトル、とやると、これは結構制約が大きいのです。日本でそこらにドレスを着ているような人もいなければ、剣を佩いて歩けば警察の御用になりますからね。夢もロマンもありゃしません。
舞台を中世にしてしまえばそれもなくなる。というのは、倫理観がずいぶん違うからだろう、と思います。だいたいの中世において「殺人」は絶対悪ではありません。武器についてもだいぶゆるい。
服装についてはいわずもがな、文化の違いですね。ドレスを出すにしたって特別な設定、舞台が必要ない。
つまり小道具が考えやすく、出しやすい。それが一つあるのではないかと。
②(魔法がある場合)魔法の上位性が成立しにくい
現代には火器系が充実していて、魔法の絶対的な優位性が成立しにくい。どんな高威力魔法があっても、核兵器による放射能汚染には負けます。地震の震度と同じです。そこに存在するものを根こそぎぶち壊すだけの威力が計測できるなら、現実問題として、「それ以上は存在しない」。必要がない、とも言えますが。
しかも火器だけではない、シロートにはぱっと言えないだけの武器なども大量に存在する。小説は書き手と読み手の感覚、理解がある程度共有されていることによって説明過多を避けることができます。そんな武器まで考慮に入れれば、リアルには近くなるでしょうが、非常に難易度の高い小説が出来上がることでしょう。……自画自賛ではありませんよ。現代って言ったって、私は兵器類は常識並以外の火器は全部無視していますからね。魔法=そこそこ万能説万歳です。
06/04追記です。つまりまあ、何を言いたいのかと言えば。「大規模魔法より核兵器のほうが強いです。まる」では、夢も何もあったもんじゃない、と。そういうことを思ったのです。
③ざっくりと「知っている」ということ
人って、なまじそのことについて「知っている」と、それを度外視して思考を構築するのが難しくなるよな、と私は思っています。
たとえば私はこれでも史家の端くれです。日本史のことなら、高校レベルよりは詳しいことを知っている。今の高校日本史で教えられる知識がいかに間違っているのか、そんなことも若干ですが知っています。
そうすると、非常に厄介なことに、この自分自身の知識そのものが自分が考えた設定に突っ込みを入れてくるのですよ。「ちょっと待て、切り捨てごめんなんてあり得るか」。とかね。
ファンタジーだと割り切ってしまえばいいものを……。と思わなくもないのですが、それを論じ始めると本題からずれるので、軌道を修正して。
そんな感じで、「知っている」ことは、場合によっては物事を考える柔軟性を失わせてしまう。かといって何も知らないということは想像の埒外であるということと同義です。未来をテーマにした小説が少ないのはそんなことも理由だと思うのですが、それも置いといて。
要は、ざっくばらんに雰囲気だけ知っていて、実態はあまり知らない。そんな認識が「中世ヨーロッパ」に夢を持たせ、小説の舞台にするだけの柔軟な素地を提供しているのではないのかなー、と思うのですが。
……だって「ヨーロッパ」でもずいぶん広いではないですか。「ヨーロッパ」とひとくくりにしているということは、あまり知らないのでは? と邪推してしまって。……まあ、私もあまり知らないのですが。少なくとも、ドイツとイギリスの街並みがずいぶん違うことは知っているので……。
日本が舞台だと、ざっくり「江戸時代」なんて言ったら夢、見にくくありませんか? 「知っている」ことによって想像の枠がある程度固定されていたり……私だけ? じゃ、ないですよね、きっと。たぶん。
①、②、③と、番号が増えるに比例して文量が多くなってしまいましたが、私が考える「なんで中世ヨーロッパ?」の理由はこんなところではないかなー、と思います。ほかにも言葉で説明できなかったメモとして「機械以前の程よい自由と、文明以降の程よい制約」というのがあるのですが……。まあ、これは説明できるようになったら付け加えておきます。
小生意気な心の中の友人に「考察したいなら、エッセイみたいな感じで書けば?」と言われて書いてみたエッセイ。断っておきたいのですが、これはあくまで私個人の考えであり、この考えがあっているかどうかの検証・研究は私の頭の中でしか行っていません。もちろんここに書かれた以外にもいろいろな考えがあり、理由がある事と思います。私はそれを否定するつもりはありません。
むしろ、これ以外に思いつかれたこと、私の考えが変だと思われることがあればぜひとも教えていただきたいです。宜しくお願いいたします。
と、いうわけで。「世界観について」、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
2014/06/04 ②の理由に追記しました。