出発
静かな朝。そう感じた。
いつも目を覚ますときは、こんなふうに静かなのかな。鳥の鳴き声も森のさざめきも柔らかな風も感じない。
私が今感じているのは、フランの心地よさそうに眠っている寝息と、自分の動作だけだ。
静かすぎるから絶対聞こえないような寝息が聞こえるんだと思う。
あの穴に落ちてから日にちが良く分からない。こちらの世界では、二日目が始まったところだけど、元の世界では、もしかすると数日たっているのかもしれない。
きっと、お母様やお父様が帰ってこないと心配してるかもしれないわ。早く家に帰らなきゃいけないなー。
「のあー。オハヨウ。。。」
あくびと背伸びの両方をしながら挨拶してくるフランを見ると今起きたようだ。
「フラン。おはよう。よく眠れたかしら?今日は、もう少しでこことしばらく離れるからね。」
フランにそう告げると、コクっと頭を一度だけ縦に振った。
考えすぎは良くないな。とりあえず、ここを出発して、どこか街を探さないと。
「フランー。準備できたー?そろそろ出発するよー」
そう呼びかけると、忙しそうに、遠くからフランがやってきた。何もいらないんじゃない?って言ったら、外に出た時に誰かこられるとまずいから、誰も入れないように結界を張ると言っていた。
「いく!」
この言葉を聞き、結界の外に出る。
地図も何もないところから始まるわたし達の旅なのかな?少しのドキドキとわくわくを持って明るく出ていきたいと思います。私の力は健在だから、フランを守ることだってできるし!
お父様、お母様待っててね。