もう一人の目覚め
俺の声は、お嬢様に届いたのだろうか。
さっきまで、泣き崩れていたお嬢様は床で意識を失っている。
どの姿はまるで、毒リンゴを食べて倒れた白雪姫。
俺は、お嬢様に初めて会った日は、直感で思ったんだ。
この方は、俺と同じだと。
無垢で純粋でもう一人を知らない。
存在は完全に違うが、俺と同じ。
そんなことを考えていると、お嬢様は起き上がった。
いや、俺の本当の主が、目覚めた。
「おはようございます。グリード・ノア・リリィ様。」
頭を下げながら、挨拶する。
「ん~。おはようございます。じゃないわよ。ブリュー、なにヒントあげてるのよ。せっかくのゲームが台無しじゃない!」
伸びをしてから挨拶もなしに文句を言ってくるのは俺の主人だ。
「ですが、ゲームというものは手がかりがあって進むものです。
あれしきのヒントは必要不可欠ですよ?もっとゲームを楽しむための。」
口元を緩ませながら、思ったことを口に出す。
「確かにそうだけどぉ。乃愛ちゃんには、自分で見つけて欲しかったの!」
「それなら、尚更必要ですよ。きっと、リリィ様のお望み通りのendingにしてくれますよ。」
「なら、いいけど。てか、その顔気に入らないわ。なんでも知っているような顔。」
納得したのか、俺の表情に文句を言ってくる。
本当に飽きない主人だ。
俺は、あの日から、リリィ様に魂を預けた。
でも、あの日のことなんて覚えていない。
覚えているのは、契約をしたことだけ。
「なに不気味に笑ってるのよ。綺麗な顔が歪んでるわよ?」
「リリィ様にはかないませんよ。」
なんて言って、笑っていた。
お嬢様。
ゲームをお楽しみください。
命をかけた楽しいゲームを。