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呪いの森と、魔女の城  作者: 背徳の魔王
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四人の主人公と、偽りの神話。

2011年に書いた作品になります。編集の仕方と時間が無かったので、再編集中です。続きは編集終了次第。載せてく予定です。

プロローグ 


始まりは、ささいな噂だった…、

━━さざ波が、少しづつうねり、波紋が、広がるように……、


人々の多くは、

あくまでも、噂と思いたかった……、偽りとて、平和を望むのは人の心理……、願うは……、戦乱の世と、ならんことを願いて、冥福を祈らん……、


エローラが、小国のルガイヤを、攻め滅ぼしたのは、昨年の収穫際の頃だ、

━呪いの森含む、広大な領土を得て、大国と比肩する。力を得たとも言われていた……、


諸外国の王達は、エルガイア国と、名を改めた、欲深いバルタス王の暗躍を、ただただひたすら注意深く。警戒する。


次に狙うは、小国なれど、鉱石加工技術で、財をなした。ア・フェリアだろうと、噂された。


……エルガイア城の一室

━━澱みのように、空気が重く……………。居並ぶ、重鎮達ですら、押し黙らせるに十二分である。

━ことは、ほんの少し前……、

王の嘲笑を、氷付かせるに。十分であった……。密偵の報告に始まる。

「小賢しいわ!、モータルめが……」

ギリギリ歯ぎしりが聞こえた、侮っていた故。余計苦々しく、怒りすら覚えた、

エルガイアは、先の戦いで、散財し財政難となり、国土が広かったことで、予想外の苦難を強いられたと言われてる。そこで重鎮達は、口実作りに、搦め手とした…策略を、上申したのだ、


ア・フェリアの名高き美姫、アリシア王女を、王の妻か、子息の妻になれと、親書と言う名の、強請を行うことにした、

最悪同盟か、譲歩の金が手に入るだろうと、安易な策で、悪くとも戦の口実位となろうの算段である。


それが……こんな手で、くるとは……。

━━大陸南に位置する。山岳地方にある。小国ア・フェリア、鍛冶と湯治が有名である。

昔は、鉱石も自国で採れたが、今は、隣国アルパーナから、輸入していた、


━━数十年来。3代も続く友国さらに。ア・フェリアのモータル王、

アルパーナのディシス王は、幼馴染で、親友でもあるため。国交も強硬な絆で、結ばれていた、

アルパーナの、ディシス王は、諸外国の王達から、賢王と呼ばれ。尊敬を集める人物で、三人の息子と、1人の娘に恵まれていた、


━━春の花見の季節になり、早々のこと、

突如。ア・フェリアのアリシア姫と、アルパーナのシュレット皇子との、婚姻が、発表されたのだ、両国の民は喜び。祝福を述べる。何せシュレット皇子は、第三皇子ながら、

『魔導師の塔』でも優れた、色付きのケープを、与えられた、賢者と名高く。

幼馴染みでもある。二人が、仲良く共に歩く姿は、人々の記憶に新しい。


エルガイアのバルタス王の元に、返答が届いたのは、密偵に遅れ翌日のこと、唖然とする素早さで、婚約が世界中に発表された。


親書に゛既に、婚約が決まっていた、せっかくの申し出であるが……゛

………いくら大国に比肩する。国土があろうと、財政難のエルガイアである。小国と言えど二国を、相手に……。懸念が示唆された………。

━━アルパーナの賢王がしゃしゃり出でくるとなると……。苦しい戦いに、なる…は。明白である。バルタス王の悲願は、大陸の覇者になること……。二国は、……大きな障害だ、

一国の重鎮なら、様々な、策を労するが、今まで、バルタスの気性が、あまりに激し過ぎて、口を挟む者、政策に異を唱えた者達は、容赦なく殺された故。重鎮とは名ばかりの傀儡ばかりである。


オロオロするばかりで、重い静寂に、押し包まれ。……余計、バルタスを不快にさせた、

フッと、ある考えが浮かぶが、

いくらなんでも……と考えたが、財政難は、深刻である。バルタスは自分に、言い聞かせ、暗い光を………。瞳に宿して、ほの暗く……、陰湿に笑った、

「そうだ、これこそ妙案よ!、クック……ならば……」

唇を歪ませる。



━━ある。晴れた日………。


―それは、起こる……。

―民の祝福、歓喜の声。

―春の日差し、優しい風。


人々は笑い、優しい笑みが、二人を包む。


筈であった………。

民の笑みが、氷付き、喜びの声が、悲鳴に、変わった……。

それはまるで……。

寒い日に、舞い散る。初雪のように、淡く、儚げゆえに………。いつまでも、いつまでも、

人々の心に、深く、残ることとなった……。



「一の物語」



……大国エルガイアの東に、古き森がある。東の国境付近から、広大に広がった森こそ、小国ルガイアが代々守ってた森であった……、


エルガイアのバルタス王にとって、ただの伝承であろうと、たかを、くくってた、国土が、広がれば収入が、増えると考えたのだが、予想に反して、森は、あまりに深く、バルタス王の思惑が、外れた、


━━森の、姿は、

あまりに暗く、闇に、沈んでいた、バルタスの闇すら飲み込むほどで、その姿は、人の奥底に、巣食う、生を失いし、死者の国、

昼なお━━暗く。

森全体を、静寂が、包む。


森は、命ある。全てを嫌うと伝承が残される。古書の一節、

『夜な夜な、死者が、囁く』とある。

一文に、


『森の中は、死者の聖地であり、命あるものよ。妬みの呪詛を、耳にしよう……』

深く、読みとくと、

『木々は、あまりに巨大で、死者の吐息で、灰色に染まり、土は、腐り、異臭が漂う、こそりとも風が、流れぬ森の中は想像以上に辛く、ぬかるみ故に、歩みは進まず。冷気で、体温は奪われ。方向すら見失い、森をさ迷うことになる。永遠に……』


『呪いの森』、歩き進むことすら、困難を極め、巨木の根は、張りだし、奥に進む者を拒む、いつから森は……、

変わり果てたのか……、森に住まう、全ての命を失ったのか、


それは千年以上もの昔の物語…、神話である。


『神に逆らいし、大犯罪者を、森に封じる。何者も入ることさえ許さぬ。何人も会うことを許さぬ……』


たった1人の少女を、封じるため、神は、森を呪い、牢獄とした、いつしか………。

かの森を……『呪いの森』『魔女が住まう森』と呼んだ。


吟遊詩人は歌う。

森は、力無き者を喰らうと……、


一切の休息が、得られず。常に、死が付きまとう危険な森、そんな森を、一頭の巨馬が、張りだした根を砕き、ぬかるむ土を、全く気にせず。優雅とすら見える歩みは、悠然としていた、


━━不思議なことに、馬の足は、まったく土に沈まず。馬の胸元を、銀色の鎧で、守られている。

中央に、青い輝石が輝き、足を守る4つの蹄には、黒い輝石の蹄鉄がされ、不思議な光が、馬と馬上の旅人を、淡く被う。フードから、覗く目元。旅人が、まだ若く、幼さを僅かに、覗かせた……、



━━巨木の間に、黒い針のような、葉を、繁らせる木々を、虎をも、一撃で殺せそうな、蹄により。関係ないと、踏み潰した、黒き馬体に、うっすら吐露が流れた。


巨馬の頭には、兜があり、伝説のユニコーンのような、角が作られていた、巨馬は、ウオフォースで、特別な魔法で、育てられた、青年の愛馬である。

首鎧にある輝石で、

呪いの中和が、なされていた、森を歩むため、特別に加工された、飛翔石で蹄鉄を履かせて、飛翔石の効果で、巨馬を、僅かに浮かせる。馬が疲れることはない、補助のためである。

「はあ~」

何度目めかのため息を吐いた、見上げた先は巨木により、闇の中。空すら見えず。ため息が、出るばかりだ。

「何日目で、何日なのだ?……」

とりとめなく、呟いては、自分が正気か不安になる。朝なのか、昼なのか、夜なのか、それすら分からない恐怖。時間の感覚が、失われ久しいのだ、

「グッ……、ガバッ!」


突如の苦しみ、喉から焼けた、液体を飲まされるように……喘いだ。

━━小刻みに、体が震える。フードから覗く、顔から………。

血の気を失い、目に恐怖の色が、浮かんだ、……顔が歪む。

決死の形相で、集中した。その僅かな時━━ですら、魂に………、冷たい何かが触れた、感触がある。

怖い、恐い……、

ギュッと目を瞑り。

……歯で、唇を噛み破り、痛みで、恐怖を飲み込み。口内で血の味が広がる。


それは……滅びの、甘美なる激痛。

今にも、発狂しそうだ……、

……わずかな、

……ほんの僅かな、……細い糸のような、意思で、呪文を唱えた


━━━━☆。


「かはっ…、はっ…、はっ…、間に合っ…た」

今までの激痛が、嘘のように消えた、

冷たい汗が、背を伝う。


ブルル。

気遣うような、愛馬の嘶き、苦笑しながら、失いかける。意識を繋ぎ留める。

「もし……」あえて……。口にださなかった、

―遅ければ……、

考えただけで恐怖に心が軋む。口元の血を拭い、


愛馬の首を叩いた、安心したのか、愛馬は再び、歩み始めた


━━神は、人である。少女を………。


━━森の命を奪ってまで呪い、封じる必要があったか。

いかなる書にも、書かれてはない禁忌。

━━━ただ。


少女を、恐れていたのではないだろうか?。


神話の中ですら、少女に関する。部分だけが、ゴッソリ失われている。

不自然なほどに……、魔導師、賢者、歴史家、議論は尽きないと言う、


━━数百年前……。

賢者の1人が、森の魔女に会ったと、

時に……、戦乱の武将が、勇者が、武人が、『呪いの森の魔女』に会いに、力を求め、森に……、

入ったと言う。


後に……、

ただ1人戻った、賢者は書を残した、あの賢者の書の一文に、

『己が目で、確かめるがよい』

と、ある。


しかし、人にとって、目に見えぬ真実よりも、脚色した物語を好む傾向は、今も昔も変わらぬ。

━━賢者は嘆く。

『無知こそ、人の暴力であり。自分の考えこそ、偽りの真実だと』


━━賢者は、綴る。

長い時で、どれほどの真実が失われ、物語は曲げられ……。、伝えられてるのだろうか……と。


かの少女の名すら、

誰もしらない……。

誰も…。誰も…。


アリシア………。

切なき吐露、森は、その呟きさえ、嫌う、

再び、静寂に包まれた━━。

青年は……つかの間、微睡み。浅い眠りに、沈む。



━━ここ数日、怠惰な生活を送っている。

僕は、生涯、学びながら、生きていくのだろうか?、

王であり、父である。あの人は、喜んでいたと思う……、

いつの間にか、それが当たり前のように、思う自分がいた。

いつまでも、いつまでも、こんな日々が、続くと信じてた、あの日まで……。


アリシアを、意識したのは、いつからだろう、アルパーナの中庭にある温室、裏にある。小さな穴から、裏山の洞窟に行ける。二人の秘の場所。遅くまで、いつも遊んでた、まともに目を、見てられなくなたのは……でも、


━━いつの日にか、二人で━━、

―――忘れないよ。


何時も昼まで、妹のミルキーの勉強を、見てた、用意した本を戻しに、図書室に向かう、


この時間だと……。西側の廊下を行く方が早い、東側は、父王の仕事場である。

王魔の間があり、人出が多くなる時間帯だ。西側は侍女、騎手見習い、使用人が、部屋の掃除をしてるくらいで、父、兄と顔を合わせずにすむ。

「ん?」

声が聞こえた。

『おい、訊いたか?』

小声が交わされる。思わず立ち止まった。

━━マズイか?。

そう思った、何しろ……、使用人は暇になれば、噂話を交換してるからで、皇子である自分に、訊かれたくないだろう、との配慮から。噂話とて、バカに出来ない、驚くなかれ、時に、自国の高官すら知らぬ。他国の情報が、流れることすらある。

「ん?、なんの話だ」

「お前、知らんのか?」

呆れた口調で、離れる。タイミングを逃した……、舌打ちした、

たまにはいいか、面白い話が聞けるならと、気楽に耳を傾けた、

「ああ~あれか?」

「ああ~それだ!」急に、声を潜めたので、余計に気になった、

「アリシア姫のことか」

━━なんでアリシアの名が?、不思議に思いながら、眉をひそめる。

「バルタス王も……、戦の後なのによくやるぜ、自分のバカ息子か、自分の妻にしたいだと」

「だな~、いくらなんでもバカに、するにも、ほどがあるな、でさ……」茫然自失のまま立ち尽くした、

「だから、うおわ!」「おっ皇子」

二人は驚き、戸惑う、

気まずそうに、二人は見合い、目配せして、小さく頷き、

「おっ皇子、こちらでしたか」

「そんな所で、どうしたんですか?」

自分達の話、訊かれたのか、分からない、ならばと、気付かないフリを、すると決めたらしい。

「………」

顔を上げた、シュレットの顔は、青ざめ、死んだ魚のように目は、どんより暗い、

『うっ……』

訊かれてたかと、二人はたじろいだ、

どうする?、気まずさに見合う、

1人が、ハッとして、同僚の脇をつついて、耳打ちした、

「さっき将軍が、話してたろ、王様が、探してるって」

「おっ、おおー!、そうだったな、あ~コホン皇子」「王様が、急用と、承っておりました」

「…そ、そうか…」力無く呟き、ふらふら歩む後ろ姿は、アンデットのようだ、痛々しいが、


使用人に化けてた二人は、肩を揺らせる。

「プッ」

「クックク……」

見えなくなた瞬間、我慢出来ず。同時に吹き出した、


いくら主の頼みとは言え、我慢の限界だ、いささか悪のりし過ぎたかと、声は抑えたが、

「コラ!、お前達、ムウ………、あまり笑うでない、わらわの大切な、兄じゃぞ!」

二人が驚いた顔をして。後ろを見ると、「ミルキー様、いつの間に……」

二人の主であり。王女が腰に、手を当て立っていた、驚かない方が不思議だ、ミルキー王女は、サリア王妃に似た、美しいブロンドを、ショートにして、ミニチュアの軍服まで、お召しになり、二人を、咎めるように、唇をすがめながら、睨むのだが、可愛らしのだ、

「ムウ………」

唇を尖らせる。すっかり拗ねたようだ、二人は見合い、小さく頷き、肩を竦めた。

「いつお部屋から」「うっ、うむ……」ミルキーの子供らしい、頬を膨らませる姿は可愛らしいが、ここはと話題を変えた、それを理解した上で、仕方ないなと、見やり、

「まったく、お前達は……」

言って、訊く二人でもないと、半分諦め、話に乗る。

「秘密の抜け道を、使たのじゃ」

言われて気付く、壁の一部に、子供なら通れそうな、入り口が開いてる。

「なる程………」二人は、シュレットが護衛にと、付けた兵士だ、元は旅芸人と訊く、本当は三人いたが、1人は、一番上の兄の所にいる。

「それにしても」

「どうしてこちらに?」

「うっ、それはじゃな……」

バツが悪そうに、顔をしかめる。よほど兄シュレット様が、心配だたのだろう、いくら大人びた口調と、天才的な、様々な才のある。ミルキー様とて、

大好きな兄のこととなると。じっとしてられなかったのだろう……、

それに……。姉にするならこの女と、密かに望んで、姉と慕う、ア・フェリアのアリシア王女のことがある。ミルキー王女は、遅くに産まれた姫で、賢王ディシスが、溺愛したのも仕方ない……、

国内では、有名なバカ親プリで、あまりのギャプに、微笑む民も多いと言うのだから、解らないものだ……。

ディシス王には、三人の皇子がいる。

皇太子のハロルド様は、武勇に優れ、政治家としても優秀で、将軍職にある。

末の皇子は、魔導に優れ、深い知識は、『魔導師の塔』で、色付きのケープを、貰うほどである。

大陸に、『魔導師の塔』から、青のケープ(師)を与えられた者は少ない、シュレットは、実績から、賢者のみ与えられる。メダリオンすら首から下げている。

いずれ王に相応しいが、民の人気が高いのは、下の王女ミルキーである。

七歳と幼いのに、兄シュレットから、神学、軍学、古代語、歴史を読みとく天才で、今は、様々な国の言葉を、兄に教わっていた、子供の愛らしさと、サリア王妃に、似た美しさの片鱗を備え、大人びた振る舞いをするが、優しい性格で、いつも兄のシュレットに、付いて回る姿を、王都で見るのが、微笑ましいこと……、

「兄が…心配だったのじゃ」

仲のよい兄妹である。

「さようでしたか」目尻も、下がろう……。

一つ相槌して、愛すべき主を見つめた、

ミルキー王女は、知らないが、国にミルキーファンクラブがある。二人もメンバーだったりするが、また別の話。

ミルキーは、大好きな兄を騙すことに。ほんの少し、責任すら感じていたのだろう、

シュレット皇子は、女心に疎く、鈍感で、奥手だから、アリシア王女の態度見たら誰でも分かりそうなのに……。

ミルキーは見てて、歯がゆくて、歯がゆくて、二人は誰が見てもお似合いなのだ!、誰がなんと言おうと、

いずれ……。

そう思うだけで、小さな胸を、ドキドキさせていた、


……そんな、時に、

ア・フェリアのモータル王から、密書が、届く、父より訊かされ、エルガイアのバルタス王の、あまりに卑劣な策略を知り、父以上に憤った。


……モータル王は、一計を案じて、ディシス王に、根回しとして、了承を得る密書だった、

「後は、父上次第じゃ」


―かくして……。


本人知らぬ間に、

『兄様ドキドキ!、大作戦』が、始動していた。



アルパーナのような小国は、常に大国、隣国の脅威に、曝されていた。小国の王に求められるのは、外交手腕と、国内の統治力で、一番大切なことは、民の声に、耳を傾ける努力である。

アルパーナ王ディシスは、諸外国の王から、賢王と呼ばれる人物で、常々自国では、小国故の小回りよい政治をと、徹底させ、体現させたのだ、

『王魔の間』は、王の仕事場である。本来は、ただの謁見の間だったが、ディシスが王になって効率と、合理化により、その面影は、なくなっている。


『王魔の間』の入り口では、秘書官による。謁見内容を訊き、室内右側にある。文官の詰所に案内される。

ここでは、効率、合理化を計り、3つのランクに分けられる。作業がなされる。『陳情』なら、文官の裁量で、即座に、命令が下され、

『至急』は、主に野党、モンスターの討伐のため、直ぐに決裁され、左側の事務次官により書類作成、王に承認される。部隊の派遣まで、数十分も掛からない。

『裁量』は、王に、謁見を求める者、文官に手が、負えないと判断される。案件を、ディシス王、アルフ宰相、ハロルド将軍の三人に、判断を扇ぐのだが、常に、二人は室内にいるはずで、父王は、

『陳情』の多くが、早期解決が必要な、国内のことだからと、官僚の判断に任せてる。

左側の事務次官は、主に、書類の作成。命令書を部署ごとに、効率よく、送るのが仕事である。早い案件なら、その場で解決することを、目的に、『王魔の間』は造られた。

「あれ……?」

今日兄ハロルドが、詰めてるはずだが……、父王だけだ、席を外してるようだ、兄はもう1人いた、

ミルキーが、産まれる少し前。国を出た。

変わり者の兄だが、賢者のメダリオンを、僅か9歳で得た才人で、神学者であり、歴史家で、知識欲が、人一倍深く、皇子の肩書きが、邪魔になったと、言ってた、何も言わないが、父王は、堪えたようだ……、

後に産まれた妹、その反動もあり。ミルキーを、溺愛したのは仕方ない、気の強い母が、呆れる程だ。


……まあ…。

父の気持ちも、分かる。幼いながら、見る者を魅せる。王者の風格を既に纏ってる。親バカになるのも仕方ない。


一息着いたのを、見計り、

「父上、よろしいですか」

「うむ」

短く、首肯した、途端鋭い眼光に、射ぬかれた、妹の前と、別人だなとか思いつつも、気が重い、

「急用とか……」

「うむ、そうであったな」

フッと、表情ゆるめるが、まったく目が、笑てない、王魔の間にいる以上、色々と含んでいるのだろう、

「噂を、耳にしておるか」

「……は?」

何の話か、さっぱり分からない、首を傾げる。それでなくても、気になる話を、耳にしたのに………、

「アリシア姫のことだ」

ハッと顔上げれば、父王が苦笑していた。

顔が、強ばるのが止められない、ゆるり目を細め、雄弁に語る。

馬鹿者!、なぜ気付けぬと、目が語ってる。

「訊いておるな?」わざわざ確かめずとも。一目瞭然だろうが、首肯した、やれやれ首をふり、

「苦労する……」

ぼやかれた、少し傷つく、

「いま少し、表情を作れ、外交で、侮られるぞ」

「うっ…はい」

その通りなので、神妙に頷き、背筋をのばした、

「早速だが、姫のこと、書面にて、確かめた、返答が先ほど届いたが、訊くか?」

「いっ、いつの間に………」

呆れるほど早い、僕は、今日訊いたばかりなのに……、父のことだ、かなり前から、その可能性に、気付いてたのだろう、

「はい……」

不安が顔に表れた、嘆息しながら、

「まず。此度のことはエルガイアの国としての、正式な申し込みではない」

「ほっ、本当ですか!」

目に見て、精気が戻る。少しならず。王の目が、柔らかく、口元に気に、しなければ分からぬ。笑みが浮かぶ、

「が、ただ、そなたを呼ぶ、理由もある」

言い置く、父王の前置きに、緊張した、「これは、モータル王の頼みであり、ア・フェリア国として、正式な要請である。父として、この国の王として、悪くない話ゆえ、心し考え。答えよ」

「はっ、はい」

ここにいたり、ようやく頭が働く、

前置く、理由があると……。推測した、

大国に比肩する。国土がある。エルガイアは、戦後間もなく、財政難だと、耳にしていたのだ……。国として、正式に申し込んでない、とはいえ……、小国のア・フェリアには、無下に断り切れない、背景もある。


そうか……。


時に戦の口実……。

父王は、小さく首肯して、同意した、するとモータル王は……、ハッと息を飲んだ、

「心して答えよ。お前の気持ちは、どうであった?」

言い含める。父王の目を見て、衝撃が走り抜けた、

「!」

ニヤリ、意地悪く笑み。肯定され、頭を鈍器で殴られたような、気恥ずかしさを、覚えた。

誰にも、気付かれないと、思ってたか?父王の目は、雄弁に語る。ディシスは苦笑しながら、改めて、ミルキーの語る『鈍感』の意味に、

「なるほど」

苦笑した、

「僕は………」葛藤がありありと、顔に浮かべておる。ディシスは思わず懐かしいと、目を細めた。

「僕は………」

アリシアのこと…………。

思わぬ日なんて、なかったことに、今更ながら、気付いた、だが…、父王に、言わなければ、失い兼ねないと、言うのだ……。

でも…。だから…。失いたくない…。

僕の……、小さく、息すら詰まりそうな緊張が、全身を包む、静かに決意した、

あんな思い、二度としたくないから!、「ほう……」

目に見えて、顔つき、気配まで変わる。思わず感嘆した、

気付けば、皆が、手を止め、シュレットに魅いる者の多いことか、

「あ奴が見たのは、これか………」国を去りし、もう1人の皇子を、思い出す。僅かな時。垣間見せる。父の顔、

「僕の……。いや!俺の妻にと、決めてます」

男の顔になったな、父の顔から、王の顔に戻し、ほくそ笑み、友の願いが叶おうと、深く頷ずいた、これにて策が上手くいくだろう、不敵に笑う、エルガイアとて、二国を相手に出来まい。

「みな!、しかと耳にしたな?」

『はい』

「えっ……」

みなが、手を止め、首肯したのを、やや呆然と、立ち尽くさた。

「決まりである」

『はっ!』

王の合図で、秘書官の1人が、走る。

間もなく、シュレットの良く知る。二人が現れた。

しかも旅装に、身を固め、使者が着ける。紋章入りのマントを、羽織る。「アルフ、兄さんまで」

アルパーナ宰相ネイト・グラン・アルフ、

没落騎士の三男だが、二十代半ばにして、外交の先見が、凄まじく、王に見い出され、僅か一年で、事務次官から、宰相にまで登り詰めた鬼才だ、二人が、いることに。嫌な予感がした………。

「準備の方は、滞りなく」

「うむ、しかと頼む」

二人は首肯した、兄ハロルドが、意味ありげな目で、チラリ視線を送る。

「シュレットよ」

「はい」

「そなたに命ずる。ア・フェリアの礎となれ!」

「なっ……」

「自分の言葉、違えるな」

「うぐ……」

最早、言い訳は聞かぬ。全ては、ここに来た瞬間から決まってたのだろう………。

「あれ……」

気付いた、もしかして…父の顔を見て、確信した、優しく微笑む顔など。数えるほどしか、見たことないのだから。


━━━☆☆。


アルパーナからア・フェリアまで、馬で、3日はかかる旅路を、街、村で馬の手配までしてあり、僅か1日で。走り抜けさせられたのは、参ったね……。


夜中に、城下に入り、街で。ゆっくり出来ると、ほっとしたのも、束の間で……。

「皆様、お待ちです」

空は、しらばみ。夜明けまで、間もないのに……、グッタリだよ。


大広間に通され、目を見張る。

まさか……。

モータル王が、待てるなんて、ずらり、アルパーナの重鎮、官僚、有力者の姿もちらほら、いささか呆れを通り越し、感心すら覚えた。

「これより。婚約の義を行う」

「なっ」

『はは!』

呆然とする。本人を除き、一同深々、了承の位を示した、即ち、決定事項と言うことだ、

「シュレット様、こちらに」

女官数人に抱えられ、控え室に、連れ込まれ、あっという間に正装させられて、案内されたのは、大聖堂、中庭を通るころには、日が山間に浮かび、なんて1日だろう、しみじみ思う。

大聖堂の正面に行くと、ア・フェリア騎士団が、儀装して、儀典用の白いマントが、風にはためく。

少しずつ、実感してきた、壮麗な入り口から、アリシアを見付けた瞬間、僅にあった、不安が消えていた、

ただ……あまりの美しさに、夢ではないかと、頬をつねる。「痛い………」ステンドグラスから、神の祝福のように、太陽光が、大聖堂を照らす。そして……純白のドレスを着たアリシアが、淡く、美しく輝いていた、ゆっくり。ゆっくり。シュレットに、気付き、恥ずかしそうにはにかむ、


魂が揺さぶられた、シュレットの足は自然と動いた、二人は最初からそうであるように寄り添い、見詰め合い。歩きだしていた。


「抜刀!」

婚約の儀式が行われ、入り口で、儀典用のレイピアが、構えられる。騎士団による。細剣のアーチが、作られた、絵画の一場面のようだ。


―そして……。

―ガランゴーン、ガランゴーン。

国中に、響き渡れ、大鐘楼が、何度も、何度も、鳴らされた。

何事かと、民は、広場に集まる。ざわり、雄壮に輝く鎧を纏う騎士が、馬装のまま立ち並ぶ、民は、不安を覚えた、

「我が民に、国王より、知らせがある!」

ざわり、ざわり、

「やはり、戦争になるのかな……」

硬い表情、不安に押し包まれる。

「先程、我が国のアリシア様と、隣国アルパーナのシュレット皇子が、婚約なされた……」


━━………。


『うおおおおおー!』

大歓迎に、笑顔が浮かぶ、

地鳴りかと錯覚した、騎手達は、してやったり、ほくそ笑み、

「聞いてないだろうが、国誕祭に、結婚式を行う」

聞く耳はあろうが、今は無理だろうな、苦笑してると、同僚が、肩をすくめた、

同時刻━━、


シュレット皇子が、ア・フェリアに着く前、各国に、使者が着いており、本人より先に、各国の王は知る。

口々に、「見事!」と賞賛が、寄せられた、

━━これで………。各国の王も思うた、欲深き王バルタスも、しばらくは、大人しくなろう、溜飲を下げた、


━━━☆。


婚約の儀より一月、(霜月)ソウゲツから、(光神)パルキに、暦は過ぎて、暦の上で春になる。


ア・フェリアの春は、国誕祭の大祭から始まる。温泉目当てに、諸外国から、たくさんの旅人が、訪れる季節。昔の鉱山から温泉を、掘り当てたとかで、旅人に好評である。


その頃になると、気楽な第三皇子の立場が、一変して、ア・フェリアの王となる身だ、諸外国からの使者は無論、国内の有力者。ア・フェリアと交易で、財をなす商人、アンティーク持参で、謁見を求めた、

本当なら、アリシアと色々話したいのに。


多忙を極め、顔合わせても。仕事の合間だけ……、疲れ果て。

ベッドに、倒れ伏したのは明け方。

アリシア付き、女官のシリルが、手紙を持って来た、宛だし人は………。

「わかったと伝えて」

「承知しました」

数時間の短い、睡眠を取り、ベッドから抜け出したくないな~。つくづく思うが、待たせる訳にいかない。

人に見られないよう、屋外庭園に向かう。


屋外庭園は、温泉を利用した温室になってる施設で、ア・フェリアで、採れない作物の品種改良、この地方で育たない、暖かな地方の果物など、育てている。本当は、薬になる。特別な、花のための施設だった、ア・フェリアの国旗に、彩られる花、高山にしか咲かない、国花シーサリアが、黄色い花を、早くも咲かせていた。国誕祭では、国民はシーサリアの花を、撒いて彩る。町中に黄色花びらが、飛んで、それはそれはそれは美しい。祭りだが、今年はさらに、大々的なパレードまで行われる。二国の絆を、諸外国に見せるために、

両国の誰もが、待ちわびた、イベントである。


―ガサゴソ、ガサゴソ、

思いに老けてたが、移動する雑木林が、なぜか、部屋から付いくる。突っ込み処、満載だが、こうもあからさまだと、注意するのも、面倒臭い、どうせ…。

「おはようございます。シュレット」早起き、苦手だったような……。考えれば考えるほど怪しいが、

「おはようアリシア」

警戒心がむくむく、そんなシュレットに、お構い無しで。

「少し、歩きましょ」

嬉しそうに笑う。

「ああ」

久しぶりだ……。

歩きながら、他愛ない話が、心の澱を晴らして、警戒心が薄らぐ、

「この先に、シーサリアの新種がありますの。是非みてほしいですわ」

「うん、アリシアは昔から、シーサリア育てるの好きだよね」

「ええ……。私の持病のためでもありますから」

伏し目がちに、呟いた、子供の頃、慢性気管支炎と言う、子供には悲しい病気に、走り回ることすら、出来なかった、アリシア…。「でも、シュレットのおかげで、シーサリアに、気管支炎を抑える。効能があると分かりました、感謝してるのよ」

悪戯ぽく言いながら、クスクス笑う、

「うっ……」

昔のことなのに、赤面した、全て、アリシアのために、勉強を始めた、理由がそれだ、子供心に、こんな、綺麗な女の子が、悲しい目をしてるなんて、赦せなかった。今は、良く気付いたと、自分でも、褒めてやりたい。この辺りの花壇は、薬に、加工するため、摘んだようで、なにもないな………、

二人で歩いてると、徐々に、実感した。―これからも……

「あっ……」

アリシアの手に、指を絡め、握ると。頬を染め、嬉しいそうに、はにかむ。


―ガサゴソ!。ガサゴソ!。


息を飲む声がした、

「シュ、シュレット」

上擦るアリシアを、気付いて、いないように首を傾げ。恥ずかしそうに俯く。美しい姿を見てると、色んなことが、思いだされた。


「訊いて、ましたの?」

しまった、考え事して、聞き逃したらしい。プックリ頬を膨らませ、子供のように拗ねた。慌てて、「えっと、その…。」

「もう、知りません」

パッと、手が放された、自分の手を、所在なげに見詰め。

「ゴメン…」

気まずいな……。

不安と、僅かな後悔。アリシアの不機嫌な、横顔をみてたら不意に。

「シア…あっ、」

思わず。呟やいていた、しまったと……思たが、目を丸くして、懐かしそうに、目を細め、仕方なさそうに嘆息して、笑てくれた。

「ズルイですわ♪」ホッとして

「そうかもね」

笑い合い。アリシアを愛称で、呼ぶのは、子供の頃以来だな。

「シュレット覚えてたのね」

「忘れる訳ないだろ~。シア」

二人で見合い、クスクス笑い合う。昔のように、

「一つ訊きたいことがあるんだが」

「なんですの?」

「シアて、確か、朝ダメだたよね」

「あっ、むっ昔の話です」

覚えてたのね?と、恥ずかしそうに、上目遣いで、睨む。

「この庭園のお手入れしてるの。私なんですよ?。もう…大丈夫ですわ」

拗ねたように、唇をすがめた。

「知らなかった……」

考えたら……、

あれは子供の頃の話だったな……。

「あれ……。もしかして、新種かな?、シアが?」

「はい、従来のシーサリアの効能を、より強く。出来ますわ♪」

シュレットの。驚いた顔を見て、嬉しそうに、目を輝かせながら、

「そうでもしないと、置いてかれ、あっ」

慌てて。口をふさぎ、強気な目で、睨まれた、とまても気になったけど……。

聞き返すことは、赦されないと。理解した、

「それはそうと……」

わざとらしい、咳払いなどして、色々含む目を、向けてきた。

━━きた!、と、身構える。


微笑みさえ、浮かべて。美しく魅力的な笑み、なんだけどね…。とても困った、癖さえなければ……。吐息を着いた。

「まだ、訊いてませんわ、貴方の口から、私のこと……」上目遣い、不安と期待を、内包する表情は、絶対に、誤魔化され無いわよ?、強気な光を、瞳に宿していた。

「なっ………。」

絶句した。

このタイミングで、それを、訊くのかと……。


━━ガサゴソ!。ガサゴソ!。

茂みが、移動してきた。

―おいおい……あっ。そう言う、ことか…、茂みから、見えた顔は、アリシア付き、侍女のシリル、ミレア。


二人は、アリシアの幼なじみで、友人……。アリシアの狙いが、判った。変だと思た…。

僕以上に━━忙しいはずなのだから……。

―グッタリした、疲れを思いだした。

アリシアが、ここまでお膳立てしたんだ。答えなきゃ。赦してくれない顔だ、茂みから、見える四つの瞳は、期待に目を輝かせてた。

「知ってるくせに……」

ぼやく、なんとなく恨めし気に睨むが、素知らぬ顔で、何か言いまして、すまし顔である。

―もう逃げないと、決めたのに、やはり気恥ずかしい……、

今すぐ逃げ出したい気分だ、憮然と表情が硬くなる。

「………好きだよ」パッと華やいだ、表情してるのに、

「えっ、聞こえませんわ、なんて言われましたの」

「グッ(嘘だ━━!)」

心の中で叫んでた、だって凄く、嬉しそうに、言ってるじゃんか、蠱惑的に微笑して、上気した顔が綺麗で、でも、だから・女の子て、

━━なんかズルイ!。期待マックスな、六つな瞳を前に、追い詰められていく。

「はっ……ははは」乾いた笑いに、力はない、はあ~……。

ここまで来た以上は、覚悟はある。だから決めた。

―あの日、あの時、

父王に、言われなければ。

ここに立つことすら、出来なかった、ああ…そうか…、

ストンと腑に落ちた、ゆっくり、朝日を全身に浴びながら、静かに見つめた、

ただ……。自分の気持ちを、口にしていた。

「好きだよアリシア」

途端に、目を見開き、瞳を潤ませた。

「シュレット……」心の底から、嬉しそうに、幸せそうに、微笑して、ゆっくりアリシアを見つめる。


━━あの日、


「シアが、求婚されたと……。聞いた瞬間、心の。全てを。喪った気がした……、俺は、こんなにも……。愛していたと。シア……。愛してる」

二人の目は、お互いだけを写していた。

「あっ、シュレット……」


……もう……。


人の目なんか、気にならなかった、力強く、抱き寄せ、二度と放さない……。

「見てますわ」

力なく囁くが、嬉しそうに、頬を染めた、温もりが、誇らしくて、アリシアは、シュレットの背に、腕を回す。

「不安だった……」驚いたように、目を見開き、ただアリシアだけに見せる。一滴。

「君を失うと……、本当に…。怖かった……」

心からの吐露。アリシアまで、泣きそうで、幸せな顔で、

「……嬉しい」ゆっくり、ゆっくり、太陽に包まれる。優しいキスを、していた

『きゃぁ━━━!』

二人の黄色い声に、ハッと見合う、恥ずかしそうに、俯くアリシアが、とても、愛しくて、大切で、幸せな気持ちに溢れていた、

「私も不安でしたの、ゴメンなさい……。こうまでして、貴方の本音が知りたかった……」

「シア……」

……今だから解る。

魂が、震えた……、そう…。失っていた心を、包むように、安心感が二人を……。二度目のキスは、二人同時に……。

『キャァ━━━』

━━ああ、そうか…。

僕は、俺は、何も言わなかった……、

言わずとも、思いは、伝わると、勝手に信じて、信じて……。自己満足してたんだ、好きで、大好きで、だからこそ。口にするのが、不安だったのだと、ようやく気付いた、だから大切で、同じ日はないのだと、歩こう……。だから二人で、歩きたい……、いつまでも、いつまでも……。

「ずっと好きだった」

「私もです!」

照れくさい。


あれ?、冷静になり、今更ながら、気付いた、すると可笑しくなり肩をゆらす。「どうなさったの?」

「妹の、イタズラに、気付いたからだよ」

そうだ……あの二人は確か、アロワナの所にいた……、

でも、こう言う嘘なら。騙されるのも、悪くないね。

「あっ……」

「シリル!」

慌ててた声に、二人が見たのは、

温室の壁に、使われてる。薄革に穴が空いた所で、「あっ……」

気付いた時には、冷たい冷気が、室内を暴れ回り、

『キャー!』

「見ちゃダメ!」

突風が、こんな時に……、

―女性は大変で……。目のやり場に困り、慌てて、空を。見上げた。

「あっ…」

息を飲んだ、


『風花』


―幾つも、花々が、―空に、舞い踊る。―あまりの美しさに、息が、止まる。


―あの日、あの時。

━━忘れない……。

―ぼく……は、


…………ないよ。


━━━━☆☆。




「二の魔女の物語」


『賢者の書』の、一説に、こうある。

『神は、何ゆえ、森を呪たか……』と、

人が知りえるのは、深い闇に、沈みし森は、死者の吐息で、染まる。神は、大罪を犯した少女を、森に封じたという、呪いにより森は、永遠の死せる世界となった。

誰も……。気にしないのだろうか?、

例えば、森に、住まう少女のことを、魔女と呼ぶだけで……。


知らずに、いられるのだろうか?、いかにして、森が、呪われねばならなかったのか、呪いの元は……、神のせいである。事実を、無視出来るのだろうか?、説くと。問う━━。


森の奥、魔女が住まう、城の下に、秘密がある。


―神は、巨大な穴を、神の槌を、振り落とし、開けたと言う、

━死者の国(アビス)。

槌が開けた穴は、アビスに通じ、世界に、魔素を、吐き出した、


―魔素は、魔力の毒、死者が、膿だした、人の闇の部分であり、死者にとって空気、……人にとって、猛毒である。

━━世界を、覆う勢いと、力があった。

……しかし、


魔素は広がらない、穴は、巨大な岩山に、封じられたが、特殊な地場を産み、磁気が発生した、そのため鉄分を、多く含む、一抱えある岩が、宙に浮かぶ、不思議な、場所となる。

━━魔女は、アビスの穴を塞いだ、巨大な岩山に、城を築いた、知る者は皆無である。暗色に、鈍く輝く岩山を、中心に、くり貫かれたような窪地が、丸く削り採られていて、底まで、どれ程深いか……、

魔女ですら分からない。

磁気により、浮かぶ岩がまるで、水に浮かぶスイカのように、ぐるぐる回転しながら、流れてく、巨大な、岩どうしが当たり、雷鳴に似た音が響く、

城のある。岩山には橋が、掛けられていて、森から、抜けた先にある。小高い丘に伸びていた、丘の麓に、幾つも小屋があった、


城は、一見。かなり古くみえるが、生きた城の気まぐれで、見た目、大きさ、全てが、日により代わるので、城に住まう者は、気にしない。

━━城に、名はない。

遥かな昔。城は、魔女に、造られた、魔法生物だから、城は生きた柵で、区切られた、範囲を管理する。管理者である。

そして城も、生き物なので、食事をする。1日~10日に一度、魔素を、エネルギーに換えて、生きる魔法生物である……。


丘から伸びる。街道の先に、巨大な門が、閉じていた。

ここが、森との境界線である。全ては、少女1人のために……。


しかし……。そこは気まぐれな城のこと。

悪戯好きな、主に、似たらしい、城内すら、住人の気付かぬ内に、部屋が、増設したり、見覚えない。通路を通ると、地下施設に迷い込んだりと、迷路のような場内は、油断出来ないのだ、


生きる城の、通路には、数多くの名画、アンティークが、無造作に、飾られてる。


一方で。


場違いにしか、見えない物、どう見ても……。ガラクタにしか、見えない品物が、ドヤ顔で、目立つ所に、飾られてるのは。外観を著しく損なうが、主は気にしないのだろうな、


城が、造られたのは、七百年前のことだ、

闇しかない世界で、目覚めた、静寂、死者の声しか、聞こえない場所で、主に抱かれていたのを僅に覚えていた。聞こえない、

何も、ありとあらゆる生き物の声すら。消えた……静寂の中に、最初に聞いた声は、少女の、いつも1人だった……。少女の鳴き声。

いくら泣き、叫ぼうと、誰も助けてくれない、

そして苦しみの言葉。

いつしか、城になり、少女の居場所になった、


━━時は、過ぎる。

人も時に、無謀な。冒険を望み、為し遂げる。者がいた、

本当に…少しずつ………。


゛あっ゛気付いた、いつの間にか、魔素が、城内の所々に、わだかまっている。城の地下から、少し漏れたのだろか?、

城は魔素を魔力に変換して、魔法を行使できるが、森に蓄積された魔素は膨大で、必要とする魔素も限られているのだ、それでも城の支配領域は、少しずつ増えていた。少しずつ。

『ムッ……』

やたら不機嫌そうな、思念に、満ちた。

姿なき者は、城と同じく、数百年の長き時を、少女を、主として、仕えた者、

『ん、人が、寝ておれば………』

忌々しそうに、思念で呟き、

『今の魔力……は、なんだ?、やたら騒々しいが』

住人にとって、魔力の放つ。波動は、人にとっての騒音に、等しい。しかも……魔力が、強ければ強いほど、不快に、感じるのだ…、不機嫌にもなろう。

壁を通り抜け、ヌッと半透明の霊体(レイス)が、人間臭くも、眉根にシワを寄せながら、古風な、燕尾服を整え、髪を撫でつけた。生前は、教師か執事であったか、

霊体(レイス)は、アンデットの一種で、人の強い心残り、怨念に囚われた魂が、レイスとなる。もっとも……一般的に知られてる。レイスは、悲鳴のような呪詛を叫び。生ある者を襲そう、言葉を有し、理知的なレイスは、珍しいどころか、奇異である。

『うむ、やたらとでかく、駄々漏れの魔力、キャリンか……やれやれ、気品ひとつないの』

しみじみ呟き、嫌そうな、顔で、溜め息を吐いた、やたら人間臭い仕草で、頭をかく様は、日々を憂いてる中年だ、

目に宿るのは、怨念の暗き光でなく、穏やかな日だまりのような、理知的な、光を宿していた。

『あやつでは、考えるだけ、せんなきことよ。力のこともある。騒々しいの~まったく…、失敗でもしたかの』

悩ましいことだと、ぼやき渋面になる。こればかりは、悩んでいるより、本人に訊く方が早い、キャリンの魔力は、こっちに向かっておるようだ、

『どれ……』

物に憑く接着を外し、フワリフワリ浮かび、音もなく、しばし飛んだ、

『ムウ…来たか』

魔力を、駄々漏れにして、見事なスピードで、なにやら決死の表情のキャリンが、走ってくる。

レイスに、気付かないまま走り去る。

「………やれやれ」


しばし追走して、ようやくキャリンの魔力地場に、接着した、こうすれば、意識しなくても憑いてられ、楽なのだ、

『キャリン』

まるで気付いた様子がない、いささかおかしなことだと。目を細め。再度思念を強めた。

『キャリン!』

恐怖の力を使い、気付かせる。


いきなりの恐怖に、走りながら。真後ろに飛び上がるという、なかなか器用な、驚き方を見せた。

「ニャっ、ニャニャなんニャ!」

警戒心むき出しで、周囲を見てたが、はたり目が合う、


………ぱちくり。


「なんニャ~、スレッドか」


ホッとして、脱力した、やや珍しい物を。見たと、目を丸くしていた、恐怖の影響か、目の端に、涙すら滲ませて、

━━いったいどうしたと。言うのだろうか?、疑問に思い

『どうしたキャリン?』

「あっ!、そうだったニャ、今、たっ大変だったニャ」恐怖の力で、忘れてたようだ、すぐさま大慌てで、走り出した。

『これキャリン、何を、慌てておるのだ?』

かなりのスピードで走るキャリンに、息の乱れはなく、獣人だからか、髪からヒョッコリ耳と、腰下を左右に揺れる白黒のシマシマ尻尾が揺れる。

「にっ逃げてるニャ」

引き締める口元から、犬歯が僅かに覗く、

『ハテ?、意味がわからん』

思わず。首を傾げた、

━━獣人のキャリンがあり得ぬ。


『ん?』

おかしな事に、気付いた、いつの間に……。

自分が、普通に漂うだけなのに、

『信じられんことをするわい』

呆れる。と、言うのも、レイスの能力接着は、キャリンの魔力圏内にあったのに、それを振り切ったのだ、非常識にもほどがある。キーン!。

『なっなんだ、この非常識きまわりない魔力は』

城が、身悶えした、あまりに強大な魔力が、突然、現れたのだ、

『この力……』

目前で、魔力が、気流の流れのように流れている。魔力の高まりに、引きずられる。

『この現象は……魔法気圧流……、(マジックストーム)このような……』

馬鹿げた。力があるのは、主たる少女に、他ならぬ。

『グッ、このままでは喰われる……』


━━気圧の変化。


まさに、そうとしか思えない、魔力を音に、感知するレイスには、霊体の悲しさよ……。巻き込まれる。

『グッ……』

幽玄の身になって、久しく忘れていた、恐怖と憔悴に、身を焦がしながら、なんとか壁に接着した。瞬間。

ドン!。

爆発的な、魔力の高まりが、一気に放出され、余波が、城を揺らす。

何か魔法を、使ったようだ……。

凄まじいスピードで、主が、来る。

『久しぶりに……消滅(死を)予感したわい』

身震いしたが、キャリンが、誰から逃げたか理解した、


しかし……、なぜこれ程のことをする?、

主を諌めれるのは、レイスだけである。訳くらい訊かねば危うく、消滅するところだったのだ、憤りながら、進路に、浮かび上がる

『ムッ、早い』

目を見張る。みるみる点が、大きくなり、

恐怖の能力を最大にして、立ちはだかる。

『アイレット様!、な……に、えっ、うそ━━』

制止する声は、届かず。ホーキに股がる。アイレットに、弾かれ、霊体故。止まることなく、何処かに、撥ね飛ばされ消えた。

「あっ……、」

やや驚いたが、次の瞬間、すぐに思い直して、

「スレッドだから、まっいっか♪」

━━多分ね。大丈夫、大丈夫♪。

朗らかに、笑い声を上げながら、追走に戻る。

彼女こそ。千年以上を生きる。魔女と人々に呼ばれる存在だが、可愛らしい、何処にでもいる普通の女の子にしか見えない。彼女の顔にあるのは、大好きな、お菓子を前にした、子供のように、精気ある輝く笑み。楽しいこと大好きな、女の子の顔である。

「♪~。も~そろそろかな~♪」鼻歌まじりに歌を口ずさみ、目を凝らして、しばらくすると……。

「あっ、いたいた、いたー。キャリンみっけ」

もう最初の目的を、すっかり忘れてたりするが……。

この城で、彼女を止められた者は、不幸にも真っ先に、どこかに飛ばされている。……チーン。



ゾクリ。

背に、悪寒が走る。「まっ、まさかニャ」

恐々、肩ごしに振り返り見た、見て、笑ってる。

「ひっ!」

悲鳴を飲んだ、そんなことしてる間に、逃げなければ、まだまだ、距離はあるが、獣人の目は、しっかり、バッチリ、主である少女を、認めた。

「も、もう、来たにゃ━━━!」

同じく、目の良いアイレットは、捉えた。驚き、慌てる様子が、手にとるように見える。

これこれ、これよ♪、

「ん~最高♪」

ゾクゾクする。快感が、心を満たして、狩猟の喜びに、震えた。

「いっ、いや!」

顔から。血の気を失い、

━━ピシリ、心が軋む。

さっきのことが、思い出され。パリン……たがが壊れた。プルプル。身体が震え、自慢の尻尾は、恐怖のあまり、ブラシのように膨らむ。

「あら………」

火事場のなんとやら、

「あらあら、あははは♪、まあ」

みるみる走るスピードを上げた、あっけに取られたが、テンションの上がってるアイレットは、嬉しそうに笑い、頬すら上気させて、うっとりと目を細めた。危険な光を宿した、

「うふふ、決して逃がさないわよ」

邪気すら纏い、笑う姿は、魔王も顔を青ざめる。あまりぬ強大な魔力が、少女から立ち昇るや。城も恐怖に、震えた。


半眼に、細められた目は、キャリンの足を、狙い違わず。ロックオンして、

「《我が名、アイレット・コール・レインが命じる。

汝、歩む『足』の、一瞬の歩みすら、『禁じる』≠『ストップ』」

時間すら止める。強大な魔力は。一瞬で、収束して、力ある言葉に応え。指先から、矢のごとく、放たれた



━━━━━★★★。


「えっ……、あっあれれ、おかしいな、へっ……」

いきなり、足が、動かなくなったのだ、プチパニックに陥り、

「なっ、なんでニャ!」力をいくら込めても、ピクリと、足は動かない、まるで石像にてもなったようだ、ここで一つ……。

魔法あるあるを。あまり知られてないが、時間すら止める。強大な魔法ですら。万能ではない……。

時間に、効果を及ぼす魔法は強力だが、さらにキャリンを足止めするために、限定した。確かに、魔法の拘束力は、強く、ジャイアント族であろうと、動きを止めたろう、

動いてなければ………。

すなわち。走っていた力のベクトルは。そのまま残る。

「え゛━━」

恐怖に涙めになるキャリンは、凄まじい勢いで、

ドんドガらがっしゃん、


見事、顔から何も出来ずに。転がって行く。

「あっ、ああ……やっちゃた」すっかり、忘れていた、顔面蒼白になり、呆然と、見てるしかなかった、


その間も、キャリンは転がり。扉のとこに立つリビングアーマー、高価な壺、目に付いた、高価なアンティーク、全てが、一瞬で破壊される様に、顔をひきつらせていた。

「あっあれ~、そんなつもりじゃなかったのに……。テヘとか、言ってみたり」

冷や汗が、頬を伝う、自分に、言い訳してるようだが、返事できる者はいない。


―ヤバイ、ヤリ過ぎたかも……―。

珍しく、後悔して頭を抱えた、

「ねっ、ねえ!。だっだ大丈夫よね?。……よね?。よね?……。………よね!」自分勝手なこと言ってたが、段々。不安になった。キャリンはまったく、動く気配がないのだ。

「えっえーと、キャ、キャリン?」

気が、動転して、返事が出来るか、見れば分かるだろうに……。我慢できなくなり、ホーキから飛び降りて、走り寄る。

「ブーニャ~!」

「わっ!」

手で、触れようとした途端に、いきなり上体だけ、むくり起き上がる。危うく、キャリンの頭に、顔から突っ込む所で、慌てて、飛び下がりった。

「鼻が、痛いニャ!」

涙混じりの声で、オッかなびっくり、キャリンの前に回り。顔を見て、絶句。

目に、見える所が、真っ赤にすれて、痛々しい……、特に、鼻の頭、オデコが………、


━━☆☆☆



同時刻……、

城から、弾き跳ばされた、レイスのスレッドが、なんとか城に戻った、

『ん?、あそこにいるのは、アイレット様ではないか』

不思議に思い、キャリンが、疼くまる姿もある。

珍しい……、あの我が儘で。唯我独尊の極みの主がおろおろしているとは、

何かやらかしたのだと、小さく嘆息した、


……二人の前に、回り込み。

『なっ……』

予想外のことに。思わず思念が漏れた。

びっく!!


―ギリギリ、ギリギリギリギリ………。『またでございますか』

呆れた呟きに、びくびくしながら、音がしそうに、首を動かし、スレッドを認め、たじろいだ、

「うっ、だっだって」俯き、口をすがめ、頬を膨らます姿は、子供である。

『やれやれ……』

幽玄の身には、珍しく。天を仰ぎ見ながら、どうせ……、言い訳を考えてるのだろうが、それにしても…。


まさか森まで。飛ばされるとは……、戻るのもひと苦労である。いささか疲れたが、主に話を訊かねばならないな。

『アイレット様?、これはなんとした結果なのですか?。キャリンめに、何を、しようとなさいました』

「ウッううあう…」みるみる蒼白になり。急にモジモジしながら、上目遣いに、スレッドを見て、

「………だもん……」

『はて?。さっぱり聴こえませんが』

意地悪く、言い伝えると、カッ━━と、真っ赤になり、

「だから!、キャリンのこと、お風呂に……入れようと……。しただけだもん!」

言ってて、気付いたのだろう、最初の目的を忘れていた、そんなところか、話してて、我に戻り、恥ずかしくなったが、とりあえず不機嫌そうな顔をした、

……多分、誤魔化さなきゃと、今も思ってるのだろうな……、

『なんとまあ~』

呆れたように呟き、「うっ……だって…」

俯いてそっぽ向くのはいつものことだが………。

苦笑を隠さず。呆れた目で、見てると……、居心地悪そうにモジモジしている。


自分でも、分かってるのだろう、千年以上を生きてる魔女…、そう呼ばれる少女とて、見ため通りの子供である……。痛々しいく。涙目のキャリンを見れば、自分が悪いと理解してる。仕方ない所もある。深々、溜め息をついて、思い出す。キャリンを、見つけたのは、まだ半年前のこと、

『まだ、それくらいか……、』

内心。驚きながら。


━━あの日のこと、思い出す。


━呪いの森は、アビスの魔素により、命ある。生き物には、猛毒の森である。常に、強大な魔力に守られるアイレット以外……。人は、何らかの手段を、講じねばならない、この森のいたる所に、アビス界から、やってきた邪神、魔神、アンデットの王達、下級神、天使が、何十と、封じ込められている。全て。主たる少女が(アイレット)封じたが、月一度。満月の日に。封印の強化に、回るのだが、帰る道でのこと、


突如。入り込む筈のない。森の中で、月光が、差し込んだのだ。あり得ないことだけに、アイレットは気になった。

『神の代行者』(いつわりのかみ)達の封印により、外界との隔だたりがあるため。森の中では、月を見るのは不可能である。城の領域に、入らなければ、ならぬのだが……、

面白そう!、にんまら笑い。スレッドが止める間もなく、月光の差し込む、樹の根本に走ってた、


「ニャ~ン」

アイレットに、気付いた子猫が、嬉しそうに、足に、ジャれついて来た、

「猫……………?」眼が、丸くなるほど、驚いた、それが、キャリンである。

キャリンは、獣人ですらない。なぜなら、獣人は、産まれた時は、普通の子供だからだ、変身するにしたって、半月では無理だ、キャリンはアイレットを見上げ、その場で変身して見せたのだ、


数日後……。スレッドは気になり。主たる少女に、訊いた。「伝説の月猫(ムーンキャット)ね。私も知識しかないわよ」

ニコニコ笑いながら感心してるスレッドに、話して聞かせた、


月猫(ムーンキャット)は、聖霊の一種で、神と崇められる程の魔力を秘めてるが、見られた例がなく、どんな存在なのか、分からないと言う話だ、

「しかも月猫は、大人の姿であり、子猫の姿で、現れた事例ないのよね~」

娯楽のない森で、他に、触れ合うことのない温もりは……、少女にとって、どれ程の慰めになったか、直ぐさま、城に連れ戻り。可愛がる様子は、実に微笑ましい。キャリンにとって、アイレットは、主と言うよりも、母親と、思ってるフシがある。だからと言って、猫は猫、例え敬愛する母親の趣味でも、猫は水浴びが、苦手てある。例に漏れず。キャリンも水は苦手で、濡れることを嫌う、何かトラウマがあるのだろう……。


キャリンは大慌てで逃げた、普段のアイレットなら諦めるはずが、追いかけっこ、している内に……。楽しくなりつい……。そんな所か。

『大変だったな…』しみじみ自分の苦労も重ね。呟く。小さくコクン、頷いた、キャリンは。


━━ジィーッと、

無言でアイレットを見詰めた、スレッドの透ける。背に隠れながら、

「うっ……」

言葉に詰まり、スレッドを見ると、同じように無言で、見られ。たじろいだ、


━━ジィ━━━━━━━ッ、

顔が、ひきつる。


━━ジィ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ッと、見続ける二人の圧力に、だんだん落ち着きを失い、


━━ジィ━━━━。

「うっ、そっその……ダメ?」

『なっ』

「!」

呆れるスレッド、透ける。身体の向こうで。力一杯、首を降るキャリンの姿に、「ションボリ」諦め、残念そうに、うつむく、ホッとしたのも束の間、

「分かった。そんな目で見なくても、少しやり過ぎたと、思ったから」

明後日の方に、顔向け、言い訳がましく言い募るが、

『ほほ~う。あれだけのことして、少しですと?』

「うっ……、スレッドの意地悪……」

眉をひそめ、怒気混じりに、恐怖の能力を使う、

『なんですと?』

「なっ、なんでもない!、キャリンのことは、諦める。これで、いいでしょ!」

不貞腐れた、伏し目がちに、下を向いてたが、キャリンの顔が、輝く。

「ほっ本当かニャ、アイレット様!、うっ、で、でも……」すぐに、疑わしそうな眼を向けた、これには、さすがに苦笑して、

「仕方ないしね」

秘かに、呟きながら、

「残念だけど」

いつもの優しい、笑みを見て、ようやくホッと、肩の荷を降ろした、

「あれは…少し、反省したわよ」

とか言いながら、じっとりした、アイレットの視線に、キャリンは慌てて、スレッドの背に隠れた、だが、霊体の悲しさよ。透けて見える。

「もー冗談よ。キャリン、逃げ腰にならないでよ!」

本当に、冗談かは、分からないが、キャリンの姿が、ショックなのは、確かのようで、余程堪えたようだ、いつもアイレットを、見つければ、甘えるキャリンだけに、罪悪感は隠せない、自業自得だが、

「かなりショックかも……」


━━これで終われば、アイレットではないし苦労もない。

過去の実例もある。これくらいのことで、自分の趣味を、諦めるか、疑問である。

「決めたわ!」いきなりの宣言に、悪い病気が、と、慌てるが、主(アイレット)はニンマリ、人の悪い、笑みに、総毛立つ、

『なにを!、するつもりです』

諌めるべく。静止の思念を上げたが、自分を取り戻したアイレットに、通じない、

「シルベルト洗いをするの」

『なっなんと』

「ニャニャニャ!」驚く二人に、クスクス嬉しそうに笑いながら、ホーキを呼ぶ、

我に戻る。スレッドは、ホーキに乗り、飛び立つアイレットをやや呆然となり、見送るしかなかった………。

ガックリと肩を落とした。

『またか……』

「助かったけどニャ~、凄く、複雑ニャ……」

『かもしれぬな』

溜め息混じりに、微苦笑した、この場にいない、住人を思い、冥福を祈った、チーン



━━━━☆☆。



城から思念が届いた?

『ムウッ、それは……』

城は、アイレットではなく、スレッドに告げた、

゛━━数十年ぶりに、お客様だよ。゛

子供のような。笑い含む思念に、小さく頷いた、キョトンと、キャリンは、首を傾げた、

『そうだな、珍しいのう』

「どうしたニャ、何を言ってるニャ?」

気になって、仕方ないのか。尻尾が物語る。ソワソワ落ち着きなく、左右に世話しない。思わず苦笑を浮かべたが、


はたと気付く、キャリンが来て、始めての客だと、気付いたのだ、

『うむ。お前は、しらないことだったな、森を抜けて、外の世界から、お客様が、来訪なさったと、城が、教えてくれたのだ』

「ウニャ~~?、お客様???」

キャリンに、住人以外の人間と言われても、実感はあるまいが……、知識として外に、主以外の人間の住む、国があることは教えていた。


それに時々アイレットの命で、シルベルトが、森の外に出ているのだから、

『人間とは、欲深い生き物でな、力を求めたがるのよ』

「フ~ン、それが、お客様ニャ?」

『そうだ』

色々、人間にもいるが……な、呟くが、キャリンに届かない。その内。分かる日もあるだろう……。

スレッドは遥か昔、教師だった、自分で学ぶ大切さを知っていた、

『ん?』

言い知れぬ。違和感を感じた、キャリンを見下ろしハッとした、主たる少女に、ソックリな、眼差しと表情をしている。『キャリン!』

「決めたニャ♪、キャリンが、お出迎えするニャ!」

『なっ、おい、キャリン!』

制止の声が、虚しく、廊下に響くが、足音なく、走り去って行くのを、やや茫然と苦々しく見送った、

『~やはりな……』ガックリ肩を落としたのは言うまでもない、

゛………大丈夫?。゛

城の慰めに、虚ろな目で、肩をすくめ。『仕方あるまい…』゛━━そうだね。゛笑い含む思念に、違いないと胸中で頷く。『やれやれ、これからであるな……』

嘆くことになるのか、はたまた騒ぎが酷くなるのか、心優く麗しの我が主を、心配した……。




「3の契約者の物語」




……気付けば、いつの間に、森を抜けていた?……、


なだらかな道。幾重にも広がる街道。整備されている。

「これは一体?」

あり得ないことと、自分の目が、信じられない、夢か?、不安にもなるが、身の魔法効果を、確認して目を細めた、

「魔素が薄いのか?」

呪いの森は、魔素に汚染されている。、力ある魔導師なら、周知の事実だが、ここだけ魔素が、薄いようだ………、

「あれは……」

距離がありそうだが、あまりに馬鹿げた大きさの巨大な門が、ここからでも見えた、

「大きいな……」

妙な感心しつつ…、

「あれがそうか…」

唯一、魔女と会って、外の世界に戻った賢者の書いた、『賢者の書』に

『途方に暮れた、月に、届かん巨門を前に…』とあった、


………なるほど。


近づくにつれ…、賢者の気持ちが、嫌ってほど理解できた。「どうやって開けるのだ?、」

誰が、何の目的に使うのだろうか、不思議に思う、

「ん?、この門からか……、呪いの力とは、違う、この力はなんだろう」

魔力に似て、非なる力。さながら、神殿で感じる。清廉なる力のような………。

やがて……、辺りを一望出来る場所で馬を停め。気付いた。まるで森を隔離するように、門を中心に、広大な領域を鉄のフェンスが、グルリ囲む。鉄に見えるが一つ一つは、


人間の腕の太さほどあり、隙間から入ることは出来ないほど、間隔は狭い、試しにフェンスに、触れた。

「なんだこれは……」

慌てて放した。生き物のように、触れたところが、脈動したのだ、肌が泡立つ、

「行こう」

気持ち悪さがあり、愛馬を急いた。


『賢者の書』の一文に、

門は、10日ごとに、一度開く。不安があるとすれば、既に、開いた後か、いなか…。

不安は、杞憂に終わる。


音もなく、近づくシュレットに合わせるかのように……、門が━━ゆっくり開き始めたから。

「良かった!?」食料も、水も魔力すら、心元なかったから。安堵の吐息を吐いて、手綱を絞る。馬は歩みを進ませた、


門の半ば、過ぎたところで……。


突如雷撃で。貫かれたような、強烈な悪意に、身体が強ばる。防衛的に、身構えたが、

―ゾワり。

回りの気温が、一気に、下がるような理不尽な寒気に、身体が震え、愛馬が不安そうに嘶く、

「なんだ…あれは」

後方の森から、黒いもや、人の怨念、悪意の塊、死魂のような物が、流れ星のごとく、シュレットに迫る。

あれはヤバイ……。

生理的に理解した、触れただけで、死に至る。シュレットのでは、防げない程の魔素が、シュレットなど、関係なく、通りすぎたのだ……。「今のは……」黒いもやは。真っ直ぐ。城に向かった、

ドクン。

「なっ、なんの気配だ」

もやは宙に集まり、不吉な光を讃え。憎悪と憤怒の輝きに、辺りは赤く照らされ、膨大な魔力を感じた、

そして……闇の槍となり、城に堕ちた。


ドクン、ドクン。

城が、巨大な槍に貫かれる。恐怖に手綱を持つ手が力がはいる。息を詰めて目を開く。冷たい汗が背を濡らす。当たる。瞬間……。

「城が……ブレタ?」

訝しげな顔をして、「今のはなんだ…、あれだけ。濃密な魔素が、一瞬で消え失せた?」

まさか!?、あり得るのか?、賢者を目指してたシュレットにも、信じられないが、城が生物のようだと感じた、その間も愛馬は、自分に危害がないと分かり、何事もなく進む。


━━門の正面から、途中まで、舗装され丘に向かいなだらかな階段となっていて、丘の上に、橋が掛けれている。


城を訪れるには、橋を渡らねばならな作りだ、幸い丘の麓に、馬小屋、休憩のための小屋があり、旅人のための施設が用意されており。心の底からホッとした、小屋の横には、綺麗な水が、コンコンと湧く泉があり、汲みやすいように。木枠で、組み上げ式の水場が、造られており、桶を使い、バケツに水を入れて、馬小屋に戻る。新鮮な水の臭いに、嬉しそうに前足を掻いた、水を飲む愛馬の。馬鎧、馬装を外してやると身を震わせる。ホッとしたようだ、その間、用意されてた、真新しい飼い葉を桶に入れて用意してから、荷物からブラシを出して、水場に連れて行き、綺麗に洗う、魔法アイテムで、守られようと、病気や怪我で、死ぬこともある。ケアは大切だ。ブルルル……。


気持ち良さそうに嘶き、甘えて鼻面を衣服にこすり付ける。腹が、空いたのだろう、催促している。「わかったよ」

苦笑しながら、優しく、首筋を叩き、

「お前は、図太いな~」

馬小屋に戻り、用意された牧草と、ハープを混ぜた物、桶に顔を突っ込み。食べ始める。自分も水場で汗を流し、旅装を洗濯して、下着を洗い、小屋に干して、真新しい下着、衣服に着替え、城に向かった。


━━━☆☆☆。


想像以上に。息が上がる。節々も痛く。1日休んでから、向かえば良かったかと少し後悔しながら、吊り橋を渡る。



━━下の光景に目が行き。魅入る……。

雷鳴のような音が時折響く。一抱えある岩が、宙に浮きながら、川の中にあるように流れ行くさまは、ある意味━━幻想的ですらある。雷鳴の音は、遥か下から。もっと大きな岩同士が、お互いがぶつかり合うために起こってるようだ……、時折火花が散り。僅かな光源となり、遥か下方の地の底が、会間みえた……、


巨大な亀裂。塞ぐように、巨大な岩山はある。

まさか……。

言い知れぬ。何かに、心が、揺さぶられた、

「あれがアビスパレスか……」感嘆の声が、口をついた、


橋を渡り終えると、城門前にたどり着いた、かなり古い、小城だが。見た目ほど、古くは感じない。大きさは、貴族の洋館程だ、城門と言うより、大きな両開きの扉で、高価な黒檀製(こくたんせい)であろうか、貴族。王族等。裕福な家でなくば、見掛けない品である。

「すまぬ。誰かおられぬか?」

躊躇ったが、扉を叩く。シュレットは知らぬが、この時、スレッドが、主に飛ばされ、応対することが、出来るはずがない。そうとは知らないシュレットは、人気の無さに、不安になりながら。意を決め、扉に手を伸ばした瞬間。

「………」躊躇し迷うが、目に入る光に誘われ、ホッとした気持ちで、踏み込んだ。


ぽつ、ぽつ、ぽつ。歩みに合わせ、左右の壁に置かれた燭台に、火が、自動的に灯る。

「マジックアイテムか!」

感嘆の吐息を洩らした。さらに明るくなった入り口に、改めて城内を見回して。感嘆の言葉を息を飲んでいた、


一見。質素とすら見える品々は、さりげなく飾ることで、相手に気付かせない気遣いが為されており、隅々まで洗練されてると。玄関ホールを一望して、感嘆の笑みを浮かべた。


さらに装飾品に触れ、指先に、汚れが付かないのに、感心した、これだけの小城でも、管理する人物により、印象が代わる。魔女は細やかな人物なのか?、側にいる者が、しっかりしてるのだろう。

「いや…もしや。この城自体が、魔法生物の可能性もあるか」

それなら、城自体が、管理する者とか?、さすがに考え過ぎか、自分の仮説に、没頭していて、異変に気付いてない、フッ、フッ、燭台の明かりが、一つずつ消えて行くのにだ、

「ん……」

風が、入るはずもないのに。急に、寒さ気を感じて、肌が泡立つ。

『お客様、ようこそ、いらっしゃいました』

「うぐ!」

耳元で。囁くように言われて、危うく悲鳴を飲み込み。取り繕るいながら、慌てて振り返った。

「失礼した……」

凍り付く。

「レイスだと!?」

咄嗟の判断で、跳びすさり。護身用ショットソードを引き抜き、構えた、


客人の反応は、いつものことだ、苦笑する。まだ若い客人の男は、狼狽してるが、恐怖はない様子、手にしてる武器。魔法の付与(マジックエンチャンタ)されてない。脅威にすらならないなと判断。自嘲めいた、暗い笑いを浮かべた、

『またですか…』

幽玄たるレイスを見れば、自ずと反応は決まる。

『お客様……。』

言葉を、吟味しながら、納得するか、疑問だが、注意は、しようと諦め半分で口にする。

『大変素晴らしい品ですが、何の力も付与されてない様子。私めに、何の脅威となりましょうや?』ハッと慌て、剣とレイスを見比べ。真っ赤になり、気まずそうに苦笑した。考え悩む。複雑そうな眼を向け、

「一つ訊く、お前レイスだよな?、なのに自我があるのか」

━━珍しいことがある。あの短い問いに。自分を取り戻した……か、冷静な判断をすべく、顔を造って、瞳に不安の光があるが、驚嘆に値する。

『ほう…………』

好奇心が疼く。注意深い、人物のようだ、興味深い感心しながら、

『なぜ、そう思われる』

「ん、伝説の魔女が住まう城だ、それもありか、て、思ってさ」

気恥ずかしいそうに、笑いながら答えた、成る程、驚きは残るが、恐怖の感情は徐々に消えている。興味深そうな眼を細め優しく笑いう、

「それに、伝説とまで言われた魔女の城が、普通じゃ、面白くないだろ?」

逆に、なるほど虚を突かれ、感心してしまう、

『確かに、ありですな』

笑ってしまい、ハッと驚いた、いつの間にペースに乗せられてたのだが、悪くない気分である。レイスである自分が、そう思えるとは……、

『貴方は不思議な人だ…。どうして笑えたのかね』

「だってさ、あんた、殺すつもりなら、俺はとっくに、死んでたはずだ、それに気付いたら笑ってた」

『なるほど……』

若いが、存外大物やもしれ……。このように考え。答える者を知らない。

「俺は、シュレット、あんたの名前は」

……一瞬。雷に貫かれた、衝撃が、心を貫ぬいた……、


ごくごく当たり前の行為である。それだけに………。レイスと言う、幽玄の身にとって久しく忘れた気持ち、嬉しいと言う感情を思い出した。


其故(それゆえ)万感の思いで、深く。一礼していた。

『失礼いたした、名を、訊かれたのは。遥か望郷のごとく、彼方故に、失念いたしておりました。我が主アイレット様に、仕え執事などしておる。スレッドと申します』

「やはり魔女殿の。従者でしたか!」

生前は教師を、していたのだろうか?、『我が、主に、ですな?』

「はい、魔女殿に謁見を賜りたいと…」

しばし瞬時したが、今は、趣味の真っ最中である。

『ふむ……。主は私用中にて、直ぐには無理でしょうが』

「そうですか……」

そんな当たり前のこと、今まで気付けないほど、余裕が無かったとは……、父がいたら、怒られそうだ、深く恥じ入る。

長年、執事をしてるスレッドは、客の焦る。気持ちも理解してる。

『長旅で、お疲れでしょう、主の私用が、終わるまで、休まれませ、お茶の用意をさせますので』

「ありがたい、是非、貴方の話を訊かせ、願えれば」

『ええ、それくらいならば、いくらでも』

レイスの言葉に、

「ありがとう」

何とも魅力的な笑みを浮かべるのだ、スレッドは魅入った。

「どうかした?」

不思議そうに、首を傾げる。ハッと我に戻り、

『いっいえ、こちら……ハテ?。なにやら忘れておるような、なんであったか……』

「……?」


ブギャー!。


「何事だ!」

猫が、踏まれたような、悲鳴が、城を震わせた、

―どが、どが、どが、ばき、パリパリどがしゃん、

なにやら、凄まじく、物が、破砕される音に、レイスの顔がみるみる。ひきつる様を見て、何があるのか?、眉をひそめた。

「なあ…。この音の正体て、なに?」

『ああ゛━━。すっかり忘れていた』

絶望的な顔して、苦悶にうち震えるレイスを、怪訝な眼を向ける。


止めてニャ―。


なんて声が、段々。近づいてくる。言い知れぬ不安に、何かがあると、唾を飲み込んだ。


―だっダメニャ―。

―ドゴ!、どがしゃん。バチン。グエ。

━バキバキ。ドガン。


凄まじい、破砕音。二階のロビーにある扉の一つが、頭上より落ちてきた、

「とーめーてー!!」

茫然自失のまま、見上げた先に、叫ぶ少女は、欄干の太い柱すらへし折り、翔んだ……。

『シュレット殿!』

注意が飛ぶ。ハッと青ざめながら、前に飛んだ。

グシャグシャ、

木々のはぜる音が、直ぐ、側で聞え、背に破片が当たる。

「グキュル」

およそ、人が発したとは思えない。声が聞こえた、無理もない……。あの勢いで顔から、落ちたのだ、停まれずに、ホールにある。大小様々なアンティークを。破壊しながら、ようやく止まる。

「グルグルニャ~~……パタリ」

「何故に効果音付き!、…じゃなくて、」思わず突っ込みなりながら、慌てて走り寄る。

「だっ大丈夫か!」

普通なら、即死してる。だが効果音付きで、喋ったので、死んでは、いないだろう。ピクリとも、反応がないのは、心配だ、あれだけ激しく、落ちたのだ。怪我をしているな。手を伸ばした。

―ピクリ……。

「ん…」

肩が動いた?、驚いた瞬時。バネ仕掛けの人形のように、ムクッっといきなり動いた、

「良かった…」

ホッとしたのも束の間、ぱちくり、アーモンド形の大きな目がと見合い、パッと大きな目が、さらに丸くなって、叫ぶ。「いた━━━━━━!。いた、いたいたいたいた、いたニャ~~。見つけたニャ!、発見ニャ!」眼を爛々と、口元に発達した八重歯を光らせ、喜色満面に笑う、

「っ………」

あまりに近くで、放たれた、爆発のような大声に、耳が、キーンとした、頭もクラクラする。実に、はた迷惑である。

「ニャはは♪」

何が、嬉しいのか、楽しいのか、瞳をキラキラさせながら、頭から足の先まで、瞳孔をこれでもかって広げ、見られる。メチャクチャ居心地が悪い。

「ん……、しっぽ!、まっまさか」

驚き、目をみはる。今や、存在しない種の、獣人がいたのだ、シュレットは、知識で。知ってはいる。希少種だ、強靭な肉体、驚異的な回復力、


遥か昔━━脅威に、感じた、人間の手で、滅んだと言われてる。

「キャリンニャ♪」「………。?」

意味不明だ……、獣人の言葉だろうか?、魔導師として、様々な言語に当てはめる。

「お兄さんの名前、なんて言うニャ?」

「そっちか…」

肩透かし喰らった気分を、なんとか建て直して、なるほど、彼女は普通に話せる。獣人も同じ言語なのか、妙な納得をした、

「シュレットと言います。初めましてキャリン」

「ニヒヒヒ♪、なんか嬉しいニャ。よろしくニャ♪」

ニパッと、八重歯ならぬ牙が、閃いた、悪い子じゃないのだろう、純粋過ぎて、元気よすぎて、失敗するタイプかな。つい笑いたくなる。

『これキャリン、お客様もお疲れだ、話は、客間でな』

「は~いニャ♪」『こちらに』

レイスに、案内されながら進むと、

「ん?」

服に抵抗があり、後ろ見れば、ニコニコ子猫のような顔で、服の端を掴んでるのを、何とも言えず。戸惑っていると、半透明な執事は、一瞥して、頷き。

『なつかれましたな』

「そっ、そう……」曖昧に、笑いながら、苦笑を漏らした。

『こちらです』

スッと、扉を、通り抜けた、つられて……。ハッと立ち止まる。

「どうしたニャ?」

扉に触れた

「危ない所だ」

自分は、レイスではないのだ、



━━客間として、通された部屋は、無意味に、大き過ぎて、落ち着かない。ちょっとした、舞踏会が出来る。床には最高級のミンクを、贅沢にあしらった絨毯、職人が精根込め、数年がかりで作り上げた、一枚の継ぎ目なしの黒檀テーブル。50人が、並んで座れるラウンジには、暖炉があり、暖かな、火が灯されていた。

ラウンジのソファーに座る。端の方が……。落ち着くな、隣には、獣人の少女キャリンが、座る。何が気に入ったのか、俺を見ながら、ニコニコしてる。居心地が悪い。溜め息を漏らすと、

「うニャ?」

キョトンとして、小首を傾げた、気が付かないらしい。

『しばらくお休み下さい。お茶の用意を、させますゆえ…』「あ゛あ゛━━。」唐突な叫びに、口を挟まれたレイスも、目を丸くして、

『どっ、どうしたキャリン』

何やら、楽しいことを、思い付いたような笑顔に、何故か嫌な予感がする。

「お茶は、キャリンが、煎れるニャ!」堂々と、胸を張り。自信満々に宣言する。

な~んだ、そんなことか、安心した、

レイスのスレッドを見ると動揺してる様子が、何か変だ。なんと言うか…、呆然と、立ち尽くすように…。たかがお茶を煎れるのに。だから軽い口調で、声を掛けた。

「どうした、大丈夫?」

ハッと、我に戻り、慌てて、辺りを見回し、

『キャリンめは、どこに!』

「もう出たよ」

『クッしまった…』痛恨のミスそう言わんばかりで、スレッドの顔から伺いしれる。

「もしかして、何かあるのか?」

そんな大袈裟な……。そう思ったが、虚ろな目で見られると、自信を失う、

………まさかね。

不安を覚えたが、スレッドのみ、知ることだ、



千年以上前……。

世界中に、神の鉄槌たる。隕石群が、堕ちた。

━━神々の怒り、罰と、神学者は言う、

━━神世の終焉(ラグナロク)。

人間の物語の始まりであると……。


美しい森だった、獣人、神人、人間、亜人達が、お互いに助け合い、幸せに暮らす国があた。

生命に溢れる。美しい森、春に野苺、秋に山葡萄を取りに行った…。

大切で、大切で、私の大切な場所だった……。

「そんな……」

立ち尽くすアイレットの胸中は、後悔に、苛まれた。

「父さん、母さん、……フィル……」

森の奥にある。大切な国を、目にした、

━━━全ては、一瞬の出来事。


『神の代行者』(かみ)達の反乱により、国の真下に━━。冥界(アビス)大穴が、開けられた、全ての命を代償に……。たくさんの亜人、獣人の村が、メテオで焼かれて行く。

「これは…魔素(毒)!」

冥界と、繋がったことにより、魔素が、流れ込んで来ていた、このままでは、この森だけじゃなく。世界中に広がってしまう、そんなの神の子として、次代の主神として。赦せるはずかない。

「負けない……。絶対負けない!」

絶望………。しかし…。

だからこそ立ち上がった。1人で、

冥界が開かれた上に、亜人、獣人、神人、人間が寄り添う、小国ルビアノがあった、理想郷(ヘブン)と、伝えられた伝説の園、言い伝えが残る。


『現在』、冥界の大穴は、アイレットの力により塞がれる。森に……魔素は残り、アイレットは、広大な森に住む生き残った命を、地下、アンダーグラウンドを創造して、全ての種族を移住させた、


━━ただし…。『神の代行者』が送り込んだ魔神、魔物もアンダーグラウンドに入り込み。混沌とした世界となってしまったが……、


一時力を失った、アイレットを…『神の代行者』達が、魔素を用いた呪いにより。森に封じ込めたのだ、苦悩……。神の子であろうと、少女は、たった1人、だからこそ……。

『神の代行者』はアイレットを恐れた、だから偽装した、全ては、生き残った、人間を手駒にする手段である。神と騙る。ために……必要なこと。少女は失う、世界から、心すら、少女らしい笑みも失う……。悲しみ。深い悲しみが、城を作り上げ、城に心を与えた。


ただ1人……。暗闇に怯え、悪夢に寝ることも。寂しいと憤ることも、温もりを求めた、誰か、誰か、助けて……。

何日、何年、数百年、いつしか…。

少女に笑みを。城は、願う。


━━━━☆☆。


城の地下には、秘密の施設が、無数にある。城が見るのは、特別に造られた、アイレットの趣味の部屋。とてつもなく広い空間は、白い湯気が、床一面に、大理石が敷き詰められ、所々色違いの輝石が嵌め込められ、アイレットのリレーフとなってる。大浴場らしい…。浴槽は、百人が、一度に入って、余裕がありそうな広さがある。湯は、浴槽の中程にある。石塔から、コンコンと地下迷宮アンダーグラウンドにある。竜の巣から、汲み上げてあれている。

石塔には、黄金の乙女が飾られ勿論アイレットの像になっていて、抱える瓶から湯が流れ落ちる。


左側一面に、森にない、南国のフルーツが、温水を利用して、栽培されている。右側は、ガラス張りになっていて、中はオープンカフェ、優雅なロックチェアーが、パラソルの下に並ぶ。室内には、マッサージ台、各種ゲームコーナーまで、完備されていた、呪いの森に、あるとは思えない、充実ぶりである。

ザッ、ザバー。


―ゴシゴシ、ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ。


リズミカルな、音が響く。音の主は、されるがまま、鏡に映る。己が肉体を、絶望的に、見ていた。銀毛と呼ばれる。太陽に照らされた、雪のような毛皮を、自慢にしてたのに……。見るも無惨である。アワアワペッチャンコの毛を見ると、悲しくなった、

「グルル……」

シルベルトは屋根で、気持ち良く。月光浴してただけなのに。主人たる少女に捕まり、いまにいたる。


シルベルトは、この世にたった1人。アイレットの〈契約者〉であるが、

「グルル……」

自慢の毛並みを、鏡越しに。悲し気な目で見て、見る影すらないので、落ち込む………。気分はブルー。一番の原因は………。


「キレイ♪、キレイ♪、キレイにしましょう。ウフフ♪、ウフフ♪、ウフフのフ」ヒクヒク……。頬がひきつる。

もう……グッタリである。

思わず手にした。鉄桶は、メキメキ、力が入り。ひしゃげた、飴細工のようだ。

「………ん?」

五感の発達してる。人狼だから、気付いた、温かな、熱気に包まれる。風呂場で、毛が逆立つような、冷気を感じた。

ボン!。眼前で、いきなり、小さな爆発が、

「!」

ドアップのレイスの顔が、口をパクパク。水揚げされた、魚のように、胸を押さえた。

「あれれ~、スレッド?、珍しいね」

レイスが、明るい所を嫌うのは、有名な話だ、主たる少女(アイレット)は、興味なさそうに、一瞥しただけだ、今は、楽しみの最中で、邪魔されたくない、不機嫌そうな目をしていた、

「なんか用?」

『はい……。ん?、お前シルベルトなのか』

「グッ!」

今の一言で、プライドが、ポキッと折れた。━━シクシク、声もなく涙した、

『プッ……』

笑いやがる。失意の底に、堕ちる。

「どうしたのシルベルト?」

゛ほっといてくれ…。゛


心の声が、伝わった訳ではないだろうが、取り繕たスレッドは。霊体の衣服をただし、

『アイレット様、お客様が、参られました』

シルベルトのことを無視した、

゛おいおい?、珍しいぜ、゛

耳をそばだてた、上手く行けば、生き地獄から、抜け出せるチャンスになる。淡い期待に、胸踊る。はたして……、

アイレットの決断はいかに!、固唾を飲んだ、

「………フ~ン、そ」素っ気ない反応に、シルベルトの心が軋む。

゛フム、シルベルトに悪いが、あまり無理を言って、臍を曲げられても困る。゛

『仕方あるまい…』

気の毒だが、不安と期待に揺れる瞳を、憐れに思った、

『なるべく、お早くお会いなさるが、よろしいかと……』

「………」

不機嫌な目で、スレッドを睨む、個人的に、気に入った若者のためだが、

『客人には後程と、伝えます』

―その方が、早く済む、そう判断した、

一礼して、スレッドは音もなく消えた、犠牲者を残して、

゛なぜだー!!。゛失意の遠吠えが、虚しく響いたと言う。



「四の終わりなき始まりの物語」


━━少し寝てたようだ…。そう言えば、誰も戻らないな……。獣人の女の子(キャリン)も、お茶入れに行たままだし、いつの間にか用意されてる。果物で、喉の渇きを癒した、こうなると、無性にお茶が飲みたい。広い、客間を見回しながら、アルパーナなら、貴賓室に当たるのだろうか?、シュレットは魔導師であり、賢者である。魔法道具(マジックアイテム)は、古い時代の物ほど、強力で、アンティークに対しての鑑定眼が、必要になる。知識も不可欠で、魔導師はそれでなくても、金がかかる。魔導師には、収集家も多く、古美術品の売買で、生計をたてる者もいた。

シュレットもその1人だ。愛馬の装備品一つで。郊外に屋敷が買える。父には内緒にしていた、

「美しい…」

絵画に、目が奪われた、近隣諸国なら、街に屋敷が二つは買えるだろう。つい……そんなこと考えてると、

『お待たせしまし……。どうなさいました?』

絵画から、いきなりレイスが、現れたのだ、心臓が、止まるかと思った……。

恨めしげに、睨む視線で、気付いた。

『これは、これは……。失礼しました、失念していました』苦笑い一礼してたが、辺りを見て、怪訝な顔をして、

『キャリンの姿が、見当たりませんな』

「ああ、まだ帰らないようだ」

『うむ……。これはもしや……』


2フィシア( 二時間)は、過ぎてるはずだ、レイスの顔が、みるみる強ばる。ズイっと、間近に近付いてくれば、

「ちょ、ちょと!」

腰がひける。

『失礼、赦されよ!、急を有することゆえ、訊かれよ!』

意味が分からないが、切迫してるのは判る。

『今直ぐ、お逃げ下さい』

「………はい?」

首を傾げるしかないな、

『ムウ、伝わりませぬか!!』

歯噛みしながら。身振り手振りで、慌ててるが、

「さっぱり……」

肩を竦めた。

『いや…しかし、時間が、ムウ!、あの馬鹿猫めは、実に危険で、危うく、失敗ですからな!』

余分な力が入り過ぎると、支離滅裂になる人物のようで、

「意味が、伝わらないから……」


ズン!!。

城が、揺れた、

『ああ~~、やっぱりか……』

頭を抱え。悶える様は、ちょっと怖い。

「え~と、この辺りて、地震あるのかな…」

『………』

同情した顔、達観した、聖人のような眼差しで、どこか遠くを見る。


ブギャ━━━!。

「何処かで、訊いたな……」

とても聞き覚えのある悲鳴に、スレッドも我に戻り、二人は見合う、声は近い、何かあったんだ、

「行こう!」

『しっ、しかしそれは……』

難色示すが、返事を待たず。飛び出していた、

『後悔しても、知りませぬぞ…』

半分諦め。仕方なく、従う。


━━客間から、通路に出ると、左右、同じような部屋が幾つも並んでいる。


―カチャン……。小さな陶器の当たる音がして、

『あちらが、キッチンに、なっております』

おずおず、口を開いた、

「キャリンはそこだな?」

『そのはずです』

首肯した、それにしても、静か過ぎるな………、

スレッドが、ゆらゆらしながら、先を進み、

僅かに、開いたままの、扉の前に。止まる。

ガチャガチャ、

―どぼどほどぼ、

「ウギャー!、あっ、熱いニャ!、やっ止めるニャ、キャリンはお茶を入れるだけニャ、キャリンがお茶じゃないニャ!、そんなに回すと~~・目が・回るニャ……。ま、まつニャ!、それ以上のお湯は…、ギャアアアアア゛━━━」

「………………。」なんてベタな叫びなんだろう、色んな意味で、突っ込みたいが、嫌な予感が、ビシバシ強まる。

『分かったと、思われますが、早くお逃げ下さい』

なんてことを、痛ましいそうな顔で、言いやがる。

「訊くが…、あの子て、トラブルメーカーとか?」

ここまで来て…、レイスな執事の言わんとに、気が付いた……、かなり手遅れながら…。

『そう……』

どこか遠く見るような目で、明後日の方を向いた、

『なぜかキャリンは、失敗の天才でしてな…』

達観して、疲れ果てた顔に、諦めた口調。

「もしかしかして……。さっきの時も?」

『恐らく、魔法を使おうとしての、暴走かと……』

「なるほど……」

笑えない、獣人が魔法をね。獣人の中に、魔法を得意とする。竜人なら解るが…。

「お茶━━!」

「…」『…』

珍妙な、叫び声らしきものが、キッチンから聞こえた、

―カチャン、カチャン、食器らしく、陶器の当たる音まで、―カチャン、カチャン、

段々、音が、近付いて来たりするぞ、

……そして……。


奴らが、現われた、

「なんだよ。あれは………」

『……ポットですな』

至極真面目に、答えられても困るぞ!、心の中で突っ込む。

扉から顔?、出したポットは、オーガ並みに、横幅があるな、妙に…可愛らしい。パッチリお目めが、シュールである。

目が会った……。

「お茶━━!」

コミカルな、叫び声を上げ。目付きが、剣呑になる。まるで…。獲物を見つけた、獣のような…。

「お茶!、お茶!、お茶━━!」何か、呼ぶように騒ぐ、


すると……。


―カチャンカチャン。ポットの影から、転がりながら皿、ティーカップ、ティースプーンが数個、現れた……。

『カップの中に、いるのは……。キャリンか……』

呻くようなスレッド、確かに……。

グッタりして、真っ赤に茹で揚がてる姿は。茹でタコのようだ。

「なあ……。あんな魔法、ありか?」

不安から顔が強ばり、抗議の目を向ける。

『………』

無言でチラリ、

「あるのか…」

無言で肯定の首肯に、さすがは、伝説の魔女の城だ。納得した、


━━━━━!、

まるで、抗議の声を上げるように、城が震えた、

『だからこそ、早く。お逃げ下さいと…』

「たっ、確かに」責める眼差しに、冷や汗が止まらない。もうただ頷くしかないが、そんな訳の解らない理由なんて、気付けるか!、思わず文句が、出そうになる。


クワッ、クワッと、ポットが、パッチリ目を見開き、

「お茶━━!」

合図の叫びを、上げて、

―シュ、シュシュポ━━━!!。

真っ赤になり、ケルトを鳴らし蒸気が、立ち昇る。



━━ティーカップが、ポイっと、キャリンを捨てた、シュレットに、まるで……見せ付けるように。

「まっまさか……」愕然と、立ち尽くした。

━━気付いたね?、


ポットがニヤリ、不敵に笑う、

「しっしし、死ぬから!」

冷たい汗が、衣服に張り付く、

「お茶━━!」

「グッ…」カチャカチャ、奏でながら、迫り……来た!。


シュレットは一目散に逃げ出して、来た道を、駆け戻る。

色々と、部屋を駆け抜け、言い知れぬ。焦り、不安に、怯えながら、


━━━☆☆☆。  


「ん?、ここは……」

いつの間に……、また玄関ホールに来てしまっていた、

「しかし……」

壊れた品々が、元に。戻っていた、

━そう言えば、キャリンは………。


二階に、上がる階段が、右側にある。壊れた欄干まで、元に戻っているのに驚いた、

―ガチャガチャ、ガチャガチャ。

音が、近付いてきた…。

「あいつらに!、足がない」―ガチャガチャ、ガチャガチャ。


音は近い!、

「悩む間も惜しいか!」

二階に駆け上がる。―ガチャン!

扉を、破壊して、ポットが現れわた。

「お茶━━!」

続いて、ティーカップ、皿は転がりながら、スプーンは、跳びはねながら、現れわれた。


キョロキョロ、

探してるな……、ここなら、安心して見てられるか、ホッと一息してたら、

……あっ…気付いた、ギロリ、憎々し気に。睨み上げて来て、

―シュ、シュ、シュ、シュ、シュポー!。

メチャクチャ怒り狂ってるのか、ケルトから、ボン!、小さな爆発音があがる。真っ赤になり、蒸気を吐き出す。それを合図に、6本ある。ティースプーンは、垂直に立った、

「…おいおい、まさか……」城に、着いて色々あったけど、嫌な予感だけは、外れてないな………。どこか現実逃避な目で、遠くを見詰めてると。ティースプーンの上に、皿が乗り。ティースプーンは、虫の足のように柄を器用に動かして、ポットの前で止まった、ニヤリ不敵に笑うと、ポンと飛んで、皿の上に合体、カップは回転しながらスピードを上げて、取ってを利用してジャンプ。ポットの蓋の部分に合体して、一個の生き物のように、滑らかな動きを、見せる。

「なんて、理不尽な……」

呻いた。

『申し訳、ありませんな』

ビクッ………。

驚きのあまり、倒れそうになるが、直ぐに立ち直る。慣れ始めた自分が、なんかヤダ、

「あれ!、なんとかしてくれ、頼む…」恥も外聞すら関係なく、レイスに泣き付いた、

『無理ですな』

あっさり言いやがった、呆然と立ち尽くす。シュレットに、首を振りながら、

『後10~ 20シス(20分)逃げ切れば、恐らく魔法の効力が、失われるでしょう、それまで……』

「逃げろって言うのか!?」

ワナワナ怒りに、震えるシュレットに、申し訳なさそうに、首肯して、一礼して、消えやがった、

「……お茶」

追い詰めたぜみたいな、言い方に、慌てて、振り返れば、

「グッ」

階段を器用に、登って来る。

「クソ!、こんな馬鹿げたことで、死ねるか!」

決死の形相で、再び走り出した。


………それから、1フィシア後、(一時間後)



「はっはっはっ……」息も絶え絶え、足元はフラつき、気力だけで、足を、動かしていた、

「うっ……」

足がもつれ、倒れた、

「うっ…もう…」

無理……。呟いた、朦朧とする意識、なにしてるんだろ俺は?、言い知れぬ不満を抱えた、

―ガチャン……。


ほんの些細な音、疲れ果てた耳に、僅かに聴こえた、幸運のチャペルのような、心地よい陶器の壊れる音に、呻き声を上げながら、動くのを拒否する。身体にムチ打ち、ぼんやりした視界の先。砕けたティーセットを確認して、倒れ伏した、

「助かった……、はあはあ~……」

安堵した、頬に当たる。廊下の冷たさが、心地よいな。フッと我に戻り、なんとも言えぬ。虚しさを覚えた、

「何してるんだ、俺は?」

憤りすら覚えた、これも全ては、獣人の少女のせいなのだから、


でも……あれって、魔導兵(ゴーレム)の一種ではないか?、あの子は、あの短い時間で、あれだけの魔導兵を、作ったと言うのか…、あり得ないな……。だがここは伝説の魔女の城だ、可能性は高いか……、シュレットも、森に入るために、不可能なことを、沢山したのだ、

「あのゴーレム…、感情があって…、工夫したぞ……」

メチャクチャハイスペックだな、呆れながら、魔導師としては、興味深い、複雑な気持ちである。

『おおー!、ご無事てしたか、安心しましたぞ』

「あんたな~…」

唐突に現れた、レイスを、生温かい目で睨む。ハッと、顔を強ばらせ

『これは、失礼』慌て取り繕うレイスに、

「もう、いいよ」

投げやりに答えた、悪気がないだけ、悪質だ。

『あ~、こほん』

誤魔化すにしても、咳でって、実体ないだろ、内心で突っ込みながら、

「今度は……なに?」

半分やけくそ気味に、訊いたら、さすがに苦笑浮かべて、

『アイレット様に代わり、申し訳ない、これこの通り』

レイスに深々、頭を下げられ、大人として、矛を収めなくばなるまい。

「分かりました……。色々言いたいですが、あれほどの力のあるのが、ただの獣人のはずない、そうですね?」

虚を突かれ、驚いたように目を丸くしてたが、諦めたように。

『気付かれましたか……。森を抜けるほどの力があるのです。それも、仕方ないでしょうな』

思い悩んだようだ、

『キャリンは、とても珍しく、特別な存在なのですよ……』

スレッドは語る。主たる少女より訊いた、月猫の伝説を…。

シュレットも童話として、訊いたことがあった、巨大な魔力を秘めた、聖霊の月猫は、気にいった人間に、恩恵を与えた、または、災厄を与えたとか……。

『ですが、まだ子供でして、まともに魔法が使えず。誰に教わった訳でもないため…。主の見よう見まねで、魔法を使うのですが…』

言いたいことに気が付いた、魔法を使う上で、一番大切なのは、制御で、上位魔法になれば、なるほど、繊細な制御が必要になる。それを知らずに、魔法を使えば……。「なんて無謀な……」呆れる。確かに制御を、身に付けるのは大変だ、基礎の修行を、何年も必要とするから。話を聞く限り、まだ魔法覚えたのが、数ヶ月だと、言うのか感心するばかりだ。

『まあ~普通ならそうですが、この城に住む者で、気にする者は、いませんでしたので』

「あはっははは…、なる程。俺は、ですか」

納得したくないが、理解はした。

「キャリンの理由は、分かりました、では。わざわざ貴方は、誤解を解くためだけに、来たのですか?」

『おお!、失念していた、主が、直ぐにお会いしたいとのこと』

ようやくか……。

「分かりました。どちらに行けばよろしいですか?」疲れていたが、気力で立ち上がる。少しフラつくが、なんとかなりそうだ、

『フム……』

シュレットの様子を、伺ってたレイスは、一つ頷き、

『そうですな』

1人、納得している。思わず首を傾げた、

『一つ、お詫びと言う、訳ではありませぬが、私めが、主の部屋に、お運びいたしましょう』

「え~と、有難いですが、レイスには無理かと」

朗らかに笑い、

『ここは、伝説の魔女の城ですよ』

悪戯ぽく、意味あり気にウインクされた、

「そうだが……」

レイスな執事は、深々と一礼した、

なにが、あっ……


━━━━━★


レイスの周りから、魔法陣が現れ、赤い光気に包まれ、意識を失う、二人の姿は、消え失せていた……。

いきなり、ブラックアウト。吐き気に襲われ、膝を着いた。

「今のは、いったい………」

呻き、血の気の失った顔で、戸惑っていると。

「クスクス♪、大丈夫?」

愉しげに、笑う、女の子の声がして、誰だ?、力無く顔を上げると。ふわふわな黒で、統一されたドレスが、目に入る。プックリした血色のよい頬に、エクボを作り、金の髪が、光沢を放つ、型のよい唇には、薄くピンクのルージュがひかれていた、風呂上がりなのか、ほのかに、花の香りが、香る。「えーと、君は、誰?」

場違いな、少女に、ついそんなこと言っていた、

「ウフフ、変な人ね~♪」笑われたが、嫌な気はしない、妹にカラカわれてる気分なのだ、小首を傾げる仕草が、とても可愛らしい、何やら考え込んでたと思ったら、「そうか~♪、テレポート酔いね」

悪戯を見つけた、お姉さん口調だ。誰だろう……?。

1人納得して、頷き。クルリと、スカートを翻して、

「ようこそ♪わたしの城に、外で『森の魔女』なんて呼ばれてま~す」

「えっ……。魔女て、こんなに可愛らしいの?」

「えへへ、可愛らしいて、言われちゃったよ♪」

凄く嬉しそうに、魔女と呼ばれる少女は、傍らに控えてる。レイスに笑い掛けた。

「あっ……本物…」『左様でございます』

主をチラリ見てから、

『こんなに胸がないから、信じられぬでしょうが』

「ブッ、何ですって!スレッド!」

魔力の柱が、少女を中心に立ち昇る。

『おや、何をなさったか、お忘れでしたか?、壊れた物を、放置して、遊びに行かれましたな』

「あっ……」

しまった。悔しそうに、唇を尖らせた。

━普通の少女だよな?。あれほどの魔力を、垣間見なければ……、妹のミルキーのこと、思い出した、思わず笑ってると、

『無理もありませんな~』

「なっ、どう言う意味かしら?」

訳知り顔で、大きく頷き、一言。

『こんなのが、『森の魔女』なんて、大層な名で呼ばれるなんて、お笑いです』鼻で、笑う執事に、真っ赤になりながら、何も言えなくて、地団駄を踏む、悔しそうに、目に、涙が浮かぶ、長い付き合いだから、出来る掛け合いに、微笑ましく見ていると

『それよりも、お客様がお待ちですよ。よろしいのですか?』

「わかってるわよ!、後で、覚えてなさいよ」

こちらに顔を戻せば、今のこと、なかったことのように、微笑を唇に張り付ける。

『シュレット殿、こちらが、我が主にして、〈神の代行者殺し〉(ゴッドスレイヤー)アイレット様です』

「神殺し?」

「スレッド……」

底冷えする。殺気に、肌が泡立つ、

『おっと彼には、まだ秘密でしたか、失礼を』

素知らぬ顔して、明後日の方に、顔向けしながら、悪びれた様子がない、

「たく…」

小さく吐息をついて、シュレットに目を戻す。

「初めて、お目にかかる。シュレット・アルパーナ、シュレットとお呼び下さい」

「は~い♪、分かったわ」

嬉しそうに、会話を楽しんでるな。艶やかに微笑する姿は、深窓の令嬢、貴族の子女のような、気品がある。年頃の女の子は、よく笑うからな、

『見た目。若いですが、1029歳の婆ですぞ、騙されないように』

「スレッド!」

怒る魔女に、素知らぬ顔の執事、二人の関係が見えた…。

「でも、可愛らしい、少女に見えますよ」

優しく、心からの笑みに、虚を突かれた、主従は、驚いた顔で見合い。

「クスクス♪、今時珍しいくらい、優しく素直な人ね。誰かさんが、口を挟む訳だ」

『………』

酢を、飲み込んだような、顔をするスレッドを見ながら、仕返しが、上手く行ったと、笑い転げた。

『あ~こほん、アイレット様』

だから、レイスが咳して。誤魔化すのは、無理がある。内心で、突っ込みたいが、話が進まなくなりそうな、予感がした、この城に着てから、予感がよく当たるから、

『アイレット様…』

呻き声を、飲み込んだ、主の目は、新しい玩具を見る目である。胸中に、不安が拡がる。

そんなスレッドの不安を知らない、シュレットを見る。見る。見る。

その都度、納得したり、感心したり、頷いたり、奇行に、口を挟むべきか、悩んでいた。

゛あら、この子。゛

魂に、深い、悲しみがある。深く傷付いてるのが見えた、その魂は、少女と同じく……。

興味深く、深く、記憶を、読み取りながら、あることに気付いた、

゛そんなことが、あるの?、゛

静かな動揺がアイレットの心が震えた、


「優しいのね」

「えっ…」

唐突に慈愛に満ちたる。笑みを向けられ、思わず赤面していた。母親が、頑張った子供を、褒めるようだと、意識する。

スッと、手が出され、意味に気付き、淑女にするよう、甲にキスした、レイスはホッとした顔するので、魔女は珍しいわね。目で合図すれば、渋面の執事に、笑い掛けた。

『アイレット様、よろしいのですね』

「そうね」主は、彼の願いを、叶えることにしたと、レイスな執事には分かる。


準備のため、テーブルの上にある。木箱を、触れずに開ける。中には、魔法でコウティングした、ナイフが入ってる。儀式に使うための品である。


゛あのスレッドが、人間を気に入るなんてね。゛

笑いを噛み殺し、準備が整うのを待った、なにせ命を削る。奥の手まで使い、気遣うなんて、初めてのことだから、

「嬉しいですわ」

はにかむ美少女、見事な代わりように、微笑しながら、

「では……」

続ける言葉は、止まていた。

ドン!?。

扉が、破壊されたと、錯覚する轟音。扉を開ける者…。視線が集まる。

「みんな!、いたニャ━━!」元気一杯に、現れたのは、獣人の少女キャリン、さしもの魔女すら、呆気にとられ、儀式の準備するスレッドは、唖然と、目を丸くしていた。

「悪夢が…」

『またか…』

頭を抱えた、執事と客に、何かあったな、苦笑していた。アイレットは、壁を見て。意識を、城にリンクさせた、アイレットは、城の記憶を、見ることが出来た。

゛なるほど。゛

苦笑していた、

―私がいない間に、そんな楽しいこと、あったなんて、少し、残念に思う、

「あー!、アイレット様ニャ~」

猫まっしぐら、尻尾立てて。嬉しそうに駆け寄る。親を見付けた子猫のようだ、ゴロゴロ喉を鳴らしながら、甘える。

「しょうのない子ね」

「ウニャ~ン♪」ひとしきり、可愛がってから、ゆっくりキャリンの頬を、両手で挟み込んで。

「キャリン、貴女、大失敗したでしょ?」

「あっ…、えヘヘへ」

小さく舌を出して、照れ笑い。

「しょうのない子ね……」

苦笑して、シュレットを見つめ、

「ごめんなさいね。キャリンが、迷惑を掛けたようね」

「………」

複数そうな。彼の胸中が、手に取るように分かる。

「キャリン、どうするのかしら?」

まるで母親だな、感心しながら、見ていると、シュンと耳を垂らして、上目遣いにシュレットを見てたが、

「さっきは、ごめんなさいニャ!」

頭を垂れる。反省してるようだ、複雑な気持ちだが、

「まあ~、仕方ないね」優しく苦笑しながら、キャリンの頭を撫でて、

「気をつけてね」

みるみる目を輝かせ、

「うん!、次は、頑張るニャ」

「いやいやいや、そうじゃないから」

慌てる彼の気持ちは、痛いほど分かる。でもね。そんな楽しいこと、止めさせるなんて、勿体ない。

「良かったね♪」

「はいニャ」

「そうじゃなくて」

『……』

混沌としてきたな…。ため息をついて、執事は思う、悪いことしたかもと……。主は、分かった上で、わざとカラカってるのだ、だけど……。儀式の準備は整っている。主に目配せすると、小さく頷きながら、

「彼は、キャリンとまた、遊んでくれるそうよ」

「なっ」血の気を失うシュレットは、呻きながらたじろぐ。アイレットがクスクス笑うと、キャリンも嬉しそうに笑いながら、

「本当かにゃ♪」

「いっ、いやそれは」

純真無垢な、目で見詰められて、顔を強ばらせ、助けを求める。

「ああ!そうニャ♪、アイレット様にも、お茶入れてくるニャ♪」

「えっ……」

笑みが、凍り付いた。予想外だったらしく、止める間もなく、走り去っていた、

『自業自得ですな』

「う~ん、こうなるなんて」

激しく後悔したが、後の祭りだ、

「プッ……」

吹き出した、

『アハハ』

「クスクス、あはははは」

笑い出していた、

一息ついて、悪戯ぽい笑みを浮かべ、

「貴方、何しに来たんだっけ?」

「なっ」目を、白黒させ戸惑う、シュレットに、

「クスクス、冗談よ♪」

洒落にならん。軽く睨みながら、油断出来ない魔女(ひと)のようだね。心に、留める。楽しそうに、微笑しながら、鋭い目は、針のように細め、

「貴方、知ってるわね」

急に、変わる表情に戸惑いながら、頷く。

「呪いの森、そう呼ばれてる。この森に、入る者はいないわ、冥界(アビス)の魔素が、浸食してるから、だけど、力ある者ならば……、私は、決めてるのよ。この城まで、来た者の願いを叶える」


振り返った、先にあるのは、困った顔で、あれ?、何か間違ったかしら、レイスを見たが、首をふる。

「なんです。それは」「ちょっとまって……、有り得ないけど。貴方、知らないで来たのかしら」

「ええ、知りませんでした」

即答した彼に、唖然として。額を押さえて唸る。

『知らなかったのですかな?。賢者殿が、残すと言ってましたが』

「ああ、あの本ですね。キーワードしかないですよ」

苦笑混じりに。呟いた、

「魔素の中和魔法を、独自に作るの苦労しました……」

主従は見合う。

「一つ良いかしら。その魔法見せてくれない?」

「ええ、そんなことならいくらでも」

軽く目をつぶり、深く、歌うよに、魔力が集まり、一瞬でシュレットの身体を、魔法の光輝が包まれた、

『ほほう……』

主に遠く、及ばないが、人間にしては。強い魔力を秘めている。「これは……ラクティマ・リバースね」

感嘆の声、シュレットは頷き、

「賢者ラクティマが、開発した、中和魔法=魔素を、魔石に還元するを、人に使えるようにベールで、包むようにしました」

感心した、この若い人間は、唯一友と認めた大賢者ラクティマを上回る。魔法センスがあるのだろう……。知らず知らず笑う。

「で、貴方は、私に会うためだけに、ここまで来たのかしら?」

変な人ね。興味深いわ。妖艶に、クスクス笑う、



ゾクリ。

肌が、泡立つ、今まで見せていた。少女とは違う、魔女と呼ばれし者が、そこにいた……。

゛ようやく、ここまで来た……。

━━女王に拝謁した、騎士のごとく、片膝を着いて、気高く、強烈な意識を目に宿した、魔女と呼ばれし少女を見る。

『シュレット』

ハッとした、二度と耳にすることのない、愛する者の声、


似ている……。


魔女と、シュレットは、同時に、思い人と重ねていた、

二人は、

思い人と、重ねながら決意を口にする。

「探したい、いつまでも……」

それは……、命ある者にとって、狂った願いである。


「そう……」


神の子の力で、人の心を、見る少女は……。強い、近親感を覚えた、

「僕は…、伝えたい、幸せだったと……」

愛した者を、例え、生まれ変わった姿でも、一目逢いたい……。


━━伝えたい…。――伝えたかった…。

━━彼の心は、まるで………。


………フィル。


だからこそ。言わなければならない。

「それが例え無駄なことでも、堪えられるのかしら?」

「………」

彼は、蒼白になるが、気高い、意志の力で、思いは消えない。

━━分かっている。

魔導を深く、広く、見識を積めば、魔法がいかに、弱い力であるか、

………気付く、

どんなに願おうと、神であろうと……。死者を生き返らす。ことは出来ない…。

仮初めに、生き返らすことが出来ようが、魂は、戻らない…。記憶を受け継ぐ、別人になるのだ、ただ1つ方法がある……。

輪廻が、回り、再び、同じ魂をもつ者が、生まれ変わりを、待つしかない……。ただし……同じ魂を、持つ者が、生まれ変わるには、百年~五百年の月日が、掛かると言われてる。

「忘れることなんて、出来ないから……」

血を吐く吐露に、ゆっくり瞼を閉じた。


━━見付けた…。


歓喜に、魂が震えた、少女の眼差しが、淡く、とても優しい光に包まれた、

「最後に問うわ、喩え、夢が叶った後、死ぬことが、出来なくなったとしても?」

青年は、揺るぎない目で、真っ直ぐ、少女の問に、力強く頷き、

「後悔はない!」

……忘れない。

━━そう……。

少女は、心から歓喜する。城も祝福に震えた、彼こそが、

━━私の求めた者、なのだから……、

逢えたね…フィル。迷いのない。2つの魂は……再び、出逢う。だから拗ねたように、少女は、気付かない彼に……、

「……迷わない?」

「ああ」

「生き返らすことは、望まないのかしら?」

意地悪く、問いかけた、

「あいつは…、望まないから」

━━ああ…、変わらない。

━━姿は変われど、同じこと言うなんて、

「そう………」

二人の思いは、交差する。思いこそ違う、様々な思いを、内包した、すれ違う物語。

「では、誓いなさい」

粛々と、つむぐ言葉に、魔力を込めた……、すると、二人の周囲に、巨大な魔法陣が、浮かぶ。

言葉は=力。

…意志こそ=楔。

……望みこそ=魔力。

そして……。


神の子は、優しく寄り添う、

「生きると…」喩え、千年を、1人で生きる。牢獄になろうと、

「我が名、シュレット・アルパーナの名において、誓う、生きると……」

それこそが、純然たる。呪いとなろう……。生の苦痛に……、死すことが出来ぬ苦悩。

永遠に、苦しみ続ける。

「そう………」

死を、永久に望めない、決意に満ちた瞳に、少女は、静かに、扉を開けた、

「死せぬ苦しみに、耐えて見せるのね?」

「はい」


━━血の(契約)により、汝の命に、楔を与えん、永久の苦しみを解き放たん。


朗々と、魂に刻み込まれ行く言葉は、魔法陣を流れ、少女の手にした、『運命のナイフ』に集まる。

━━我が力、呪として、血に込めん……。

血の雫(しるし)を受けよ。人差し指に、ナイフを這わした、むず痒い痛みが、快楽のごとく。背を走る。

━━この血こそ、人には、魔素以上の猛毒。生き残れる。可能性は低い。


━━狭間に、生きる。神の子の前に、

━━愛する少女のために、全てを棄てようとする。彼が現れた。

━━魔女にとって、失った大切な生まれ変わりである彼が、

二人の間は、深い高揚感に包まれ、女王から許された、騎士のごとく、恭しく。契約を。舌で、受け入れた。


……人は、強く、脆い。

だから求めあう。


━━少女は、神の子として、

━━青年は、失った大切な笑みを思い、

……血の呪いが、通る。


「ガハッ!」

吐血して、断末魔の叫びをあげ、倒れ伏した、

「苦しみは…、7日7晩続くわ………。耐えられねば、死者になろう。しかし耐えた者は、永遠に生きることが出来よう…」

少女の声は、老婆のごとく嗄れ、精気を失っている。

シュレットは神の子の〈契約者〉になるための試練を受けた、すなわち神の付属になる。付属とはいえ、神の力を、限定的に使うことが。出来るようになる。代償はあるが…、それだけの力を、使うに、人は弱過ぎる。血の呪いにより、肉体は造り変えられるため、苦痛に苛まれ続ける。

シュレットは、知っていた……。全て、愛する少女に、訊かされていた、〈契約者〉になるのは、彼女の願いだ、

━━それは……魔女すら見れなかった、二人だけの、約束である。


物語は、再び、つむがれた……。

『神の代行者』(かみ)は知るだろう、

偽りの歴史を知る。人は……。知ることになる。


━━真実を(神話を)

「シルベルト」

主の呼び掛けに、人狼が、音もなく立っていた、シルベルトこそ最初の〈契約者〉である。シュレットを抱えると、現れたと同じように……。

消えた、あたかも。何も無かったように…。静寂だけを、残して。





早ければ、続きは今月以内に。ではまた小説内でお会いしましょう。

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