4話 魔法の知識
この世界のことが分かる。
そんな期待感いっぱいな俺と教える気十分のレイスは街の図書館に来ている。
図書館の中は、広い空間に沢山の本棚が並んでいて所々にテーブル、机が設置され読書スペース、ドアで区切られたスペースで勉強ができる場所があるようだ、後は受付があるくらいでこれと言った物はなさそうだ。
勉強スペースに入り、ドアを閉めて椅子に座る。
「じゃあ、まず何から教えるか」
レイスが顎を指で触る仕草をしながら考えているようだ。
明らかに今までいた世界とは世界が違う。
今までの自分の常識がほとんど通用しない状態で、何から来るか楽しみだ。
「そういえば、魔法は知ってるか?」
もちろんゲームの知識ぐらいしかないし、それが通じるのかは全く分からない。
「知ってるか、知らないかと聞かれると知ってるかもしれない」
曖昧過ぎる表現にレイスは首を傾げる。
「自信ないなら基本から話すか?」
ちゃんとした知識は必ず必要になるはずだからそうしてくれるならこちらとしては非常に助かる。
「そうしてくれるとありがたいな」
魔法か
ゲームに近いと理解しやすくていいが、どんな感じだろうか。
「魔法の勉強のために先ずは、本探しからだ」
レイスが口で説明してくれればいいのだが、資料があることに越したことはないだろう。
「分かった」
席を立ち、蔵書のあるところに移動した。
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魔法についての本が見つからない。
というか文字が読めない。
バイトのことはレイスに任せきりで、申込用紙もチラッと視界を通るぐらいで文字を読む時間がなかったから全く気が付かなかった。
数字は普通に存在していて全然気にしてなかった。
どうするか
レイスは違う場所に本を取りに行ってるから近くにいないし、他に頼れるような人もいないしな
「おっわぁ」
「きゃっ」
考え事をしながら振り帰ると人とぶつかってしまった。
ぶつかった相手が抱えていたであろう本が音を立て床に落ちる。
「すいません」
ぶつかった相手にとっさに謝り、落ちた本を拾い始める。
「こっちらこそ、すいません」
ぶつかった相手は、誰か分からないけど可愛い女の子だった。
茶色い髪が腰より少し上ぐらいまでの長さで、俺よりも小さくて背比べをしたら口位までの身長だと思う。
落ちていた最後の本を拾い終え、彼女の抱える本の山に本を乗せる。
彼女は、本を抱え直し
「ありがとうございました」
と言って彼女は去っていった。
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魔法に関する本を探して大分経つが、見つけられない。
「はぁ」
ため息をつくと、ふと横にあった本棚に見馴れた文字(平仮名)が背に書いてある本が目に入った。
なんだこの本?
明らかに他の本と違う、なんの本かは分からないが一旦その本を手に取り、レイスと別れた場所にもどった。
「遅かったな」
レイスは、案の定こっちを待っていたようだ。
勉強スペースの戻り、レイスの前の椅子に座った。
「文字が読めなくて本を探せなかった」
文字が読めないから探せ無かったなんて恥ずかしいがしょうがない。
実際にこればかりは今はしょうがないはずだ。
これから少しずつ覚えればいい。
「そうだったのか。だからこんなに時間かかったのか、でもなんでその本持って来たんだ?文字読めないんだろ?」
これにはどう答えるべきか迷う。
「まあいいか、それより説明始めるぞ」
レイスは自分の持ってきた本を横に起き説明を始める。
「先ずは、魔力や属性は人それぞれで1人1人違う。魔力は持ってる人と全く持ってない人がいて、属性は魔力が無くても必ず誰にでもある。その種類は 火 水 風 雷 地 の5属性だ。普通は1人1属性なんだけど稀に1人で2属性使えるやつも時々いる」
ゲームでもキャラクターによって使えるスキルや能力が違うのと同じだろう。
「てことだ、先ずはこれを持てみろよ」
「なんだこれ?」
レイスが赤っぽい色の石を手渡してきた。
石を手に取ると赤っぽい色の石は、色が若干変化仕掛りそのままパキンと、音を発て砕けてしまった。
「一体なんだったんだ、あの石砕けちゃったけどいいのか?」
どういう用途に使われるものなのか分からないが、渡されたものを壊してしまったのはとてももうしわけない。
「裕也の魔力は、計測可能領域を超えていて、どれだけあるかのかが分からなかった」
ゲームで言う所のMPが測定不能で、凄く量が多いということしかわからなかった。
でもその割にレイスの反応は薄い気がする。
図書館で騒ぐわけにもいかないからだろう。
「次はこっちな」
また、石だけど今度は黄色と緑の捻れた様に模様がなってる。
なんだこの模様、どうなってんだ?
レイスから石を受け取るとまた石の色が変化しだし、今度はどんどん色が薄くなりややくすんだ透明になった所で変化がなくなった。
「今度はなに調べるための石だったんだ?」
「属性を調べるためのものだったんだが、こんな色はいままで聞いたことも見たこともない」
ということは俺の魔法属性は分からないままで、魔力だけは沢山あることが分かったわけだ。
立ち直ったのかレイスがまた喋りだす
「魔法を試しに幾つか使えば、属性は確かめられるから一旦次の説明といくか」
方法が他にはないのだろうからしょうがない。
「ああ、頼む」
「じゃあ、次は武器と魔法の話だ」
武器と魔法か
「武器には魔法属性の付加は一度に1つまでが原則だ、例外もあるがな」
例外?
「魔法は見せてやりたいけど、流石に街の中で使いたくないからまた明日な」
やっぱり危ないのか
危険なら今は我慢するしかないだろう。
「まあ、せっかく図書館に来たんだから本も使って勉強だな」
俺は文字読めないんだけどな
「そういえば、その本どんな本なんだ?」
文字読めないやつが選んだ本だから興味があって当たり前だ。
「これだけ周りの本と文字が違ったから取って来ただけで、他の本と大した違いは分からない」
まあ本当のことだからしょうがないよな?
レイスは、本を渡すとペラペラとページをめくる。
「この本読めるのか?」
何か危険なものだと困るし一旦はこれが何か聞くべきだろう。
「これって何の本なんだ?」
「これは、ロストマジックについて記述されているものみたいだ」
消えていった魔法について書かれた本か。
これは危険なものに違いない。
「その本読める人がいるのか?」
正直いなかったらある意味凄いけどやばいということだ。
そんなものが読めるとなると何かやばい気がする。
「多少なら解読出来る研究者はいるだろうが、完全に理解して魔法の発動ができる人はいないだろうな」
文字だけなら平仮名だから全部読めるし、理解も出来る。
だけど一緒に書かれている魔法陣のような文様ははっきり言って全く理解できない。
レイスになら言っても大丈夫な気もするが、言わない方が良い気がする。
「そうか、魔法はそれを理解して初めて使えるものだ。これはロストマジックだから、今は使い方が分からないし、研究者以外からは忘れられかけている危険なものだから、これがもし分かる人が居たとしても、使わない方がいいものばかりだろうからわかっても使わないんだろう」
さっきまでより、レイスは真剣をしていた。
「そうだろな」
その方が良いと俺も思う。
けれど、いつか役に立つかもしれないから少し本を読んでおこうとも思った。
なにか俺の置かれた状況を打開できるものがあるかもしれないから
2012/09/09誤字・脱字を修正しました。