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キオウへの疑問◇起きなくなる

「キオウ、お粥さんだよー」

 レイヴである。

 キオウ好物の玉子とほうれん草のお粥を運んできたのだ。ノックに返事がないのはいつものこと、無断でさっさと室内に入る。

 キオウはベッドで眠っていた。

 年齢からか、その寝顔はまだ甘い。レイヴはいつも「キオウって貴族の顔だよなぁ」と思っている。

 起こすのも忍びないなぁとも思ったが――…、あれっ? と首を傾げる。何かが変だ。

「キオウー? おーい」

 キオウはいつもうつ伏せか横向きで寝ている。こんなにキチンと仰向けで眠っているなど、むしろ不自然だ。

 それに、いつも呼び掛けには何らかの反応をするのに…。

「キオウ?」

 肩を揺するが無反応。お次は大胆にも、頬をぺちぺちと叩いてみた。

 だが、それも反応なし。

「…死んじまった、とか?

 ま、まさかねーっ。あは、あははっ」

 …コレでも自分なりに不安をごまかす作戦だったのだが、返って冷や汗を流す羽目になった。ついでに泣きたい。嗚呼泣きたい。

 深呼吸して覚悟を決める。口元に手をかざし、呼吸を確かめようとする。

 …だが、よくわからない。

「うぅ…キオウー、勘弁してよー」

 わざと声を出すことで焦る気持ちをなだめ、改めてキオウを観察してみる。そこでようやく、レイヴはソレに気がついた。

 キオウの胸の上に、いつの間にかまーくんが鎮座していた。

 ご主人が遊んでくれないので「遊んでくれぃ。ねぇ、遊んでおくれよぅ」とばかりに自分の存在を全身で一生懸命に主張している。無邪気なものである。

 だが、今のレイヴはそれどころかではない。よいしょとまーくんを脇に退かせる。

 まーくんを退けた胸は微かに上下している…気がする。息はしている…と思う。

 次に手首を持ち上げてみた。コイツほっそい手首してるなぁ…、と呟きつつ脈を探る。

 ………よし。脈はある…かな?

 とてつもなく微弱で遅い脈ではあるが…。

「これぞまさしく、生きる屍…」

 不謹慎な冗談が思いついた。

 が。

「………」

 自分のお粗末なボキャブラリーに、レイヴは壁にガンガンと頭突きしたくなった。

「生きてる…、よな?」

 いつも以上に顔が白いし生気もないが、キオウは生きている。…多分。

 レイヴはとにかく不安だった。

 心臓は…動いている、よな…?

 あんなにわかりにくい脈なんて、もしかしたら気のせい…――いやいや!? 気のせいじゃ困るよ俺ーッ。

 と…とにかく、念のため…。

 レイヴはそー…っと胸に耳を当ててみた。

 どーだろう…、よくわからないな…。でも、コレは呼吸音だよね。吸ってー…吐いてー…、吸ってー…吐いてー…。よし、呼吸はしているぞ。

 うーん、鼓動は………?

「うわあああああッ!? なななッ、なんだよおぉぉッ!?」

「ひやあああッ!? いぃッ、生きてたッ!」

 突然キオウが飛び起きたので、レイヴは自分の心臓こそが止まったかと、一瞬かなり本気で思った。


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